内蔵マイクの取り付け2025/05/04

プロ奏者の方から内蔵マイクの取り付けのご依頼をいただきました。
楽器は以前、調律に問題があり修理を行った物です。


内蔵マイクの取り付けを行う前に位置の確認をしています。
狭い空間へ取り付けを行うので事前の準備が重要です。
この楽器はグリルカバーがステンレス製なので穴あけが大変そうです。


無事に取り付けが完了しました。(2日間かかりました)
マイクの取り付けは、その後の耐久性が重要です。
取り付け方法が悪いとすぐに断線や接触不良などが起きます。
マイクを使うのは本番なので急な故障は問題が大きくなります。
製品がどうなのか?と言うより、どうやって取り付けるか?
という事がとても大事になってきます。

個人輸入楽器の修理2025/05/04

個人輸入で購入したというアコーディオンの修理を承りました。
実はこの楽器、少し前に修理、調律をさせていただいた物です。
その後、別な問題が出た為、再度預かる事になりました。

楽器はイタリア製ですが、最近できたメーカーのようです。
ベースシステムが特殊で、あらゆるコードが鳴らせるというものですが、
単に、通常3和音鳴っているものを2和音にしたという物です。
1音減れば邪魔する音が減るので組み合わせの自由度が上がるという事ですが、
単純なmajやminの3和音のコードを出す時は大変そうです。
まあ、スタンダードベースとフリーベースの中間という感じでしょうか?


ベースシステムの事は特に問題ないのですが、
メーカーが新しいからか、楽器を作り慣れていない感じがあります。
初回の修理も、右手スイッチ機構の構造的な問題による不具合、
リードの調整が全くできていない、内蔵マイクの部品と右手スイッチの干渉..
構造としても不合理な設計で、スイッチ類を取り外さないとグリルカバーが外せない、
スイッチ1回の操作で任意の音に変えられないなど、
普通はやらないような事になっています。

で、今回はベースの異音と、蛇腹の動きに問題があるという事で再度、預かりました。
まずは楽器を分割しましたが、内蔵マイクの線の取り回しがとても気になります。


小さな楽器なのでベースリードと蛇腹の空間が狭く、
内蔵マイクの配線がベースリードに干渉する問題がありそうです。
蛇腹の動きに問題があるという事の一因かも知れません。


ベースリードですが、一部の高級機に見られる、
L字型の木枠を採用しているので、一番低音のリードは
上の画像のように右手側のリードのある方に向かって並んでいます。
L字木枠は通常よりも高さが出るので、蛇腹を閉じた時に
蛇腹の高さ(厚さ)と殆ど同じ位の位置にリードが来ています。
ベースの音が鳴っていればリードが振れるので
更に右手側の空間を占領するでしょう。


右手リードの方を見ると、低音の長いリードは
本体のケースの端より飛び出ている事が分かりました。
この状態だと、蛇腹を閉じた時に右手リードの木枠とベースリードがぶつかります。
実際、ぶつかっている事を確認しました。
ベースの異音の原因はこの事が原因でした。
ですが、右のリードの高さを低くすることはできませんし、
ベースリードも高さを低くすることができません。
可能なのは蛇腹を新調して厚さを増やすしかありませんが
費用が大きくなるので、今回は閉じる寸前でベースの音を出さないようにする、
つまり、奏法で不具合を回避するという結論になりました。
蛇腹を少しでも開いていれば問題は出ません。


もう一つの問題は、蛇腹を開いて行くと、途中で引っ掛かりがあるというもの。
蛇腹を内側から見てみると、ベースリードとの距離がかなり近いです。


蛇腹を湾曲させるように開いて行くとリードの木枠と接触している感じです。


よく観察すると蛇腹の内側に傷がありました。
これでリードと干渉している事が確実になりました。。


リード側には蛇腹の内側の赤い紙が削れた痕がありました。
蛇腹は演奏で開いて行くとある程度の所で手の長さの限界が来て
自分側に湾曲するように開いて行きます。
この時、蛇腹の内側とリードが当たって開閉に引っ掛かりが出るという事が分かりました。


これを回避する策を考えましたが、リードと木枠は削れる余裕が殆どありません。
木枠を移動させる余地があるか確認しましたが、
上の画像のように木枠の穴と本体の穴の淵がギリギリになっていて
少しでも移動させると穴が小さくなってしまう事が分かりました。
仕方がないので、可能な限り干渉部分を削る事で対処しました。

楽器を作り慣れていないメーカーの楽器を個人輸入するという事は
とてもリスクがあると思いました。
当店で仕入れた楽器がこの状態だったらかなりのショックです。