中古の整備2014/01/22

中古で販売する為の楽器の修復をしています。

古いEXCELSIORです。
鍵盤を全て取り去っていますので普通の人にはアコーディオンに見えないかもしれません。
製造から40年以上経っていると思います。
鍵盤の先に接続されているバルブのフェルトと皮を交換する為に鍵盤を外していますが、
この状態だと隅々まで綺麗にできますので、クリーニングのタイミングでもあります。


これが鍵盤から外したバルブです。
鍵盤の操作により開閉して空気を止めたり、通したりする重要な部品です。
バルブ本体の下にはフェルトと皮が貼ってあります。
フェルトは開閉時の雑音を吸収し、微妙な当りの修正をします。
皮はバックスキンが穴を塞ぐ面に来るように貼られ、空気をきちんと止めるパッキンの役目をしています。

古い楽器では皮やフェルトが劣化し、離鍵時のノイズ発生、空気漏れ、鍵盤の高さと深さの増加、
鍵盤高さのバラツキなど様々な症状が出ます。
この部分の交換は時間のかかる面倒な作業となりますし、大変難しい作業となるため、
40年以上経つ古い中古楽器でも殆どの場合、交換せずに販売されています。
鍵盤を離した際のパタパタ音が大きい楽器、鍵盤の深さが深かったり高さにバラツキがある楽器、
何も鍵盤やボタンを押さずに開いた蛇腹を閉じる事ができたり、その際に音漏れが出る症状は、
バルブのフェルトと皮が劣化しているからです。
よく、空気漏れは蛇腹が勝手に開いて行くという症状で気にする方がいますが、
それとは別に閉じる時の漏れ状態も確認する事はとても重要です。
同じ様に見える中古でも少し触れば違いがある事が分かります。

ベースレジスターの修理2014/01/22

先日ちょっと書きましたが、名器Settimio Soprani ArtistIV の修理を行っています。
http://accordion.asablo.jp/blog/2014/01/20/7315899


ベースの鳴り方が弱い、という事で点検した結果、ベースの切り替えスイッチ(レジスター)に
問題があり、リードからの開口部分にあるシャッターが全開になっていない事が分かりました。
大抵の場合、レジスターの不具合は調節で直りますが、今回は原因が別のところにある為、
ベースボタンを全て取り外す事になってしまいました。
写真はベースボタンを全て取り去り、ボタンの周囲にある板も外したところです。
ここまで分解しないとベースレジスターの状況を正確に確認できませんし、
修理のために手を入れる事もできません。


写真の一番右のスイッチに異常があります。
他のスイッチよりも引っ込んだ位置までしか戻りません。
この部分はベースメカニックを全て分解してもアクセスできない楽器もあり、
かなり困難な修理になります。
幸い、この楽器はここまでの分解で修理できるタイプでしたのでまだ良かったです。

ここに不具合が出る原因の一つは、スイッチを複数同時に強く押す事です。
レジスターは一つずつしか押してはいけない機構になっていますので、
同時に2つ以上を強く押すと壊れます。
意図してその様な事をする人はいませんが、楽器の側面に飛び出ている位置にある為、
運搬時や置いてある時に倒したり人がぶつかったりする事で複数同時に押す事があります。
ソフトケースなどで運搬する場合は勿論ですが、ハードケース内でもケース内側との干渉を
考える必要があります。
また、アコーディオンの経験が無い人や子供に触らせる時も要注意です。


ベースレジスターを修理してベースボタンを戻しました。
残りあと80個..
ベースボタン120個は全部、形が違いますので間違えると大変です。
最後まで組み上げて演奏したら変な和音が..という事になれば、
またバラバラにしなければなりません。
順番も書いていないのでどこが入れ替わったのか探すのも大変です。


ベースボタンを組戻す途中で部品の一部に修復の跡がありました。


セロハンテープで部品の固定をしていたようです。
時々、粘着テープや両面テープで修理してある物を見かけますが、
緊急時の応急処置以外は通常その様な修理はしません。
それはアコーディオンに限らずと思いますが、現実はそういう修理が横行しているという事です。


Settimio Soprani は古い楽器ですので経年劣化の出ている箇所もあります。
この部品はベースボタンの遊びを押えてボタンのブレを減らして雑音を低減させる部品です。
高級な楽器には大抵付いています。
部品にスポンジが使われていたらしく、今は「らくがん」の様に固くてボソボソになっています。
折角分解したのでここも修理しました。
ベースレジスターの修理が完了した後は全体の調律を行う予定です。


Settimio SopraniIVのベースリードです。
他の楽器に見られない独特な固定方法です。
大きなネジ2本でリードの木枠2列が固定されていますが、
面白いのは、ネジの締めつけで固定されているのではなく、ネジの中間に入っている
太いバネで押し付けられて固定されているところです。
この方法だと、ネジの締め付けトルクに関係なく、一定の圧力で木枠が固定できます。
実は、右手側のリードもネジ式ではありませんが、バネによって固定されています。


こちらは鍵盤の根元ですが、よく使われている楽器なので埃が堆積しています。
空気が出入りする楽器ですので、エアコンのフィルターと同様、埃が堆積してきます。
調律を定期的に行う事で細かい不具合の修理や内部の清掃を行う事ができます。