日本製アコーディオンの修理 ― 2021/07/24
楽器店経由で日本製アコーディオンの修理を承りました。
ヤマハ製の80ベースアコーディオンです。
とても大切に使われてきた物を身内で引き継いで使って行くと決めた
ということですが、音がきちんと出ないので修理が必要という経緯です。
とても大切に使われてきたというだけあって、
外観はとても綺麗で目立った傷はありません。
ベースのバンドには新品の時からと思われる保護カバーが付いたままです。
昔は車のシートの保護カバーを外さずに大切に使っていた方もありますが
それと同じような事と思います。
まあ、現代に於いては取り外して使う事を推奨しますが。
音の雑音の原因はリードに貼ってある薄い革の部品、リードバルブの
経年劣化による硬化と反りです。
このヤマハの機種で古い物は殆どこのようになりますので、
中を見なくても大体想像がつきます。
上の画像はベースのリードですが、リードバルブが大きく反っているのが
分かります。
実際には見えていない内側にも同じだけのバルブがあり、
全て交換が必要です。
ベース側は他にも、音の切り替えスイッチが動かないという
不具合も見つかりました。
こちらは右手側ですが、やはりリードバルブが反っています。
幸いリードを留めているロウはまだ大丈夫そうです。
これもこの機種ではいつもの事という感じです。
リードの木枠を外したところです。
外して水平に置いても反りは戻らない程、革が硬化しています。
このような場合は全数交換が必要です。
この機種に特徴的な革の表に貼ってある透明な樹脂の部品も
経年で反りが出ています。
革のバルブは殆ど全てが外向きに反りますが、樹脂製のこの部品は
内向きと外向きに反りが出る方向が分かれます。
これは樹脂を製造する時に裏表の差ができる為と思われます。
いずれにしても全て交換が必要です。
残念ながらリードバルブを外すと錆が出てきました。
ただ、この楽器の場合は全体の1/3程度の数の錆で、
程度も軽い方なのでリードは木枠から外さずに錆を除去します。
本式にはリードを木枠から外して行いますが費用がとても掛かります。
この楽器は楽器として使って行くためには、
リードバルブを全数交換し、全体の調律を行う必要があります。
他にもリードの錆除去やベースのスイッチの修理、空気漏れの修理、
ベルトの交換などが必要なのでそれなりに高額な修理となります。
見積りを送って判断をしていただく事になりましたが、
当然の疑問として10万円台で購入できる新品の楽器を買う方が良いか?
という質問が来ました。
ヤマハの古い楽器は日本製で修理するとしっかりした音が出ます。
一方、10万円台で購入できる楽器は中国製なので
発音や操作感、耐久性はそれなりです。
この場合、明らかにヤマハを修理する方が良い結果が出ます。
ベースも60や72では足らない場面が出ますので
80ベースある事はとても意味があります。
この事を連絡して修理を行う事になりました。
ご期待を裏切らないようにしっかりと作業をさせていただきます。
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