ネットオークションの楽器の整備22022/02/12

製造から10年は経っていないと思われるネットオークションで
購入した楽器の調整を始めました。



右手側のリードですが、リードの調整がきちんとされておらず
発音が悪い個所が多くあります。
上の画像の矢印のところは左右の物と比較してリードの隙間が
多い事が見て取れると思います。
この隙間は多くても少なくてもダメで、最適な隙間量があります。
また、リードの大きさ(音程)によって適量が変化します。
同じ位の音域なら大体同じになっている筈ですが、このように
隣の音程と違っている箇所が幾つもあるので修正して行きます。
この修正を行うと調律が変わるので調律とセットで行う必要があります。



これは右手側のLリードの低音部ですが、やはり隙間の量が
揃っていません。
低音部は隙間が多くなりますが、矢印部分は狭すぎます。
この場合、大きな音を出そうとすると音がでなくなります。
これは大きな音で演奏できない初心者には気付きにくい不具合ですが
上達して大きな音が出せるようになると問題になってきます。
その頃には保障期間が過ぎているという事もありますが、
オークションは最初から保障がないのでどうしようもありません。



こちらは別の問題です。
実際に問題が起きている訳ではありませんが、後に問題になる可能性があります。
黄色矢印の所に白くて細い物が付いています。
これはリードに付いている薄い樹脂製のリードバルブの先を切り落とした時の残骸が付着したものです。
つまり、製造時からあるという事です。
この状態では何も問題ありませんが、演奏中に取れてリードに挟まると発音しなくなる問題が起きます。

先のリードの隙間も演奏で変化しないので製造時の調整不足です。
オークションで購入した楽器の問題ではなくて新品の時からある不具合という事なので、この記事のタイトルはちょっとズレているか..



同じように切り落としたリードバルブの先端がベースメカニックの中にも見つかりました。
これはリードより後ろの楽器の外側になるので、内部に残っていた物が演奏する事でベースリードを通過して外に出たという事です。
一歩間違えばリードに挟まって発音を止めるところでした。



この格子状の物はリードが並んで取り付けられている木枠を外した本体側の部分です。
この格子の向こう側に鍵盤操作で開閉するバルブがあり、この四角の穴を空気が通ってリードに出入りするようになっています。
この穴にはスライドして開閉するシャッターがあり、スイッチ操作で開閉してMやLといったリード列の鳴らす、鳴らさないを決めています。
画像で茶色に見える所はシャッターが開いている状態で、シルバーの所は閉じている状態です。2か所、3か所おきに閉じている所は常に閉じていて、これは白鍵の間に黒鍵が無い所で、リードが付いていません。

注目ポイントは四角い穴を縁取るように見える箇所で、これは本来シャッターが全開になっていなければならないのですが、調整が悪くて全開になっていないという事です。
殆ど開いているので音は出ますし、普通に使って行けます。
ですが、能力としては僅かに劣る事になります。
これは究極的な部分での差なので殆ど問題にはなりませんが、調整ができていない事に変わりありません。
同じ機種なのに他人の物と何か違うという時はこのような小さな問題の積み重ねで起きている事もあります。
この部分も通常は使用中に変化しないので製造時からのものです。
当店では販売前にこのような箇所も修正してからお渡ししています。
勿論、調律などで来た楽器もしっかりと確認、調整しています。



ベース側のリードです。
右手側と同様にリードの調整が不十分です。
赤い所は隙間が多く、黄色の所は狭いです。
隣り合うリードは半音違うだけなので大体同じになっているのが普通です。
ただし、隣り合うリードが同じ位の隙間であっても、その分量に問題があるれば調整が必要になります。
必要なのは適量である事です。



ベースリードの別のリード列ですが、この列でも隙間にバラつきがあります。
前にも書いた事がありますが、私がイタリアCooperfisaで修理を習っていた時にリード関係を担当しているシモーネが言っていた事を思い出します。
「この調整はやっていないメーカーもある」です。
この調整とは、リードの隙間の事です。
実際には、隙間だけではなくリードの形も調整が必要です。
とても大事な調整と思いますが、それで良いのでしょうか..



リード周りで別な問題を見つけました。
青い矢印は正常な部分ですが、赤い矢印の所には異常があります。
違いが判るでしょうか?



同じリードを別な角度で見たところです。
赤い方は右端が浮いています。
この部分は接着されているのでリードフレームにピッタリと付いていなければなりません。



問題の箇所を剥がしてみると浮いていた場所に接着剤が残っていません。この場合も音は出るので使用していても異常に気付く事はありませんが、他のリードバルブよりも開きが大きくなるのでここだけ音が大きくなったり、使用中に剥がれ落ちる心配もあります。

総じて、この楽器は製造時の調整が不足しているという感じがあります。今までに何度も書いていますが、この楽器が特別ではなくて新品の時から小さな問題を沢山持っているのがアコーディオンです。
なので当店では輸入後に時間をかけて修正、調整を行っています。
このような中古があるという事は調整不足のまま販売されている楽器があるという事です。
この楽器も有名ブランドで日本に正規ディーラーがある物です。
有名だから大丈夫な訳ではありません。