未整備新品楽器の整備2022/08/03

未整備状態の新品アコーディオンの整備、調律を承りました。
新品で購入したという物ですが発音しない音や調律の問題があります。
購入したのは個人輸入からで、保障もないため当店が承ることになりました。



リードの調整ができていないので先端の隙間が場所によって違っています。
因みに、楽器はイタリア製のダブルチャンバー、120ベースで、
少し前に突然閉業してしまったメーカーです。
当店では開業当初から販売していましたが良いメーカーだったので残念です。



こちらもリードの調整のばらつきですが、前の画像より分りやすいかも知れません。
有名メーカーの新品でも輸入直後の状態はこんな感じです。
リードの調整が悪いと弱い音が出にくかったり、とても強い音が出なかったりします。

販売する人がどんなに調整済みなどと言っていても、
実際に音を出して問題があれば調整ができていないという事です。
言うだけ、書くだけは簡単です。
そんな時は保障があるなら早いうちにクレームで戻すとよいでしょう。
その時、新品だから暫く使うと段々良くなる、などと言う店や人は
単なる言い逃れなので、その後の付き合いは止めましょう。
古い中古だから..というのも同じです。
古い中古も整備してあれば問題なく使えます。
保障も無いような楽器であれば諦めて調整に出しましょう。
折角購入した楽器が不調では意味がありませんので。



リードバルブの矢印部分に折り癖が付いています。
少しのことですが、この状態は音に影響が出るケースなので修正か
交換が必要です。



こちらのリードバルブにも問題があります。
パッと見では分りにくいかも知れません。



リードバルブの先を持ち上げてみると悪いところが分ります。
矢印部分ですが、本来、接着されている所が剥がれています。
このような不具合を見つけるにはかなり注意して細部を調べて行く必要があります。
時間が掛かりますが必要な作業なので実施しています。



リードが付けられている木枠の穴ですが、接着剤の泡が破裂したような状態で
固まっています。
このままでも普通に音が出るので不具合の判断にはならないのかも知れませんが
数%のロスと風切り音が出る可能性があるので除去します。



作業はベース側へ移ります。
ベースリードを外しました。
この楽器は高級な物なので一番低音の大きなリードはL字型の木枠に
取り付けられています。
このような作りの楽器では低音の響きが豊かになりますが
調律やリードバルブの修正、交換が少し大変になります。



ベースリードを外した後の本体側ですが、
マスタースイッチを押しても微妙に全開になっていません。
このままでも普通に使えると思いますが、僅かなロスがあるでしょう。
当店では気持ちが悪いのでお渡し前に修正しています。



この楽器のベースレジスターの図です。
勿論、当店で作製したものです。
使っていて右手と相性の良いスイッチが見つからないということでしたので
今回、あまり使い道のないスイッチを1箇所改造する事にしました。



ベースレジスターの機構を分解して行きます。
スイッチのクリック感を作るバネ部分ですが、グリスが多過ぎて
周囲の機構に入り込んでいます。
この状態だと機構の動きが悪く、操作フィーリングがとても悪くなるので
分解ついでに清掃します。



ベースレジスターの分解が完了しました。
この後、組み替えの改造をします。



バネ部分ですが、他の部品が無くなったので全貌が見えます。
グリス付け過ぎですね。



グリスを除去すると小さな不具合が見えてきます。
矢印部分は下の部品と干渉している感じがします。
また、バネの位置がバラバラなのでバネ圧も均等になっていません。
全て修正して組み戻します。



レジスターの改造を行い、部品を元に戻しました。
マスタースイッチで全ての窓を全開にしたところです。
スッキリと本当の全開になりました。



ベースボタンですが、A♭、C、Eに印があります。
Eから4つ上の..何の音だったか..
ここには印がない事が多いですが、ここにも印が欲しいということで
付けることになりました。



という訳で、G#にも印を付けました。
古い楽器ではA♭やBに印がない時がありますが
そんな中古でも当店では印を付けています。
お持ちの楽器に印がない時も付けられますのでご希望の場合はご相談ください。

調整と不具合の除去、改造も終わりましたので後は全体の調律です。
ここまで行ってやっと本来の性能を発揮する事ができます。
当店では全ての楽器をこの状態でお渡ししています。


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