新旧HOHNER ― 2022/09/04
34鍵盤のHOHNER製アコーディオンの調律を承りました。
偶然ですが別々の方からの新旧2種類のHOHNERアコーディオンです。
1つは恐らく20年程度以前のHOHNER ConcertIIITという楽器で、
もう一台は最近のHOHNER BravoIII72です。
どちらも34鍵盤、MML、72ベースです。
ConcertIIITの背面ですが、MADE IN GERMANYの文字が入っています。
現在この機種は作られていません。
実はこの機種、私が最初にアコーディオンを手にした物と同じ機種です。
27年前の事ですが、インターネットもない時代なので一般の楽器店で
カタログを見て注文で購入しました。
価格は21万円でした。
とても高価な良い物を買ったと思っていましたが、数か月後には音域が足らなくなり、
半年後にはイタリア製の41鍵盤、HMML、ダブルチャンバーの楽器を買っていました。
それでも最初の楽器なので忘れられない思い出のある楽器です。
こちらはHOHNER BravoIIIです。
背面のMADE IN GERMANYはありません。
この機種は中国製になっています。
楽器に記入はありませんが保証書にはMade in Chinaと書いてあります。
2機種のベースリードを並べてみました。
作りが似ています。
上がConcertで下がBravoです。
どちらもリードフレームに「T」の刻印がありますが、
このリードが同じ製品なのか、コピーして生産している物なのかは分りません。
HOHNERの低価格なアコーディオンのリード木枠に特徴的な部分があります。
木枠の底面が樹脂の板になっているところですが、
最新のBravoにも受け継がれています。
Concertのベースのリードを外したところですが、ここにも特徴があります。
音の切り替えを行うスライドするシャッター機構の上の板が無い構造です。
オレンジ色の樹脂部品がスライドするシャッターですが、
一般的な楽器ではこのように見えておらず、この上にもう一枚板があります。
リードの木枠の直下にスライド機構が来るので、滑りを良くするために
木枠の下の板が樹脂になっているのでしょう。
こちらはBravoの方ですが、同じように樹脂製のスライドが見えています。
色は白ですが同じ構造で、ON、OFFしているリード列も同じですね。
よく見ると微妙な違いもあります。
Concertではシャッターの下の木の部分の穴は楕円というか
長方形の両端が半円になっています。
Bravoの方は下の穴も四角です。
この方が開口部の有効面積は広く取れますが加工は円の方が簡単です。
現代の楽器は加工機が進歩しているので面積が取れる四角なのでしょう。
鍵盤部分のカバーを外したところです。
上がBravoで下がConcertです。
鍵盤の取り付け方、バルブの付け方、レジスターの構造など殆ど同じです。
レジスター(スイッチ)の動きを内部に伝える部分はイタリア製と違い、
同軸に3本通る凝った作りですが、この部分もBravoに受け継がれています。
構造はBravoにコピーされていますが、リードの調整は完璧ではありません。
これはBravoのベースリードですが、リードの隙間の調整が揃っていません。
全体の調律を行うので、リードの調整を行い、発音に関わる細かい不具合も
全て除去して行きます。
照明交換 ― 2022/09/06
店の軒下に設置した太陽電池で充電して夜間に点灯するライトが点かなくなりました。
中国製の安物ですが、恐らく内蔵リチウム電池の寿命と思います。
電池を買って交換する事も考えましたが、電池代で新しい物が買えそうなので
新しい物を買いました。
Amazonで3つセットで4000円。
1つあれば足りますが壊れるので予備として..
取り敢えず、無意味に分解するのは子供の時からの癖です。
本体を閉じているネジは最初から幾つかはネジが利いていませんでした。
分解するとボスが折れているところも..
さすが中国製の安物だけのことはあります。
基盤のハンダ付けもヤバい感じのところが幾つかあります。
LEDパネルの表にある透明カバーにもヒビが..
普通なら返品対象レベルですが、気にしません。
想定済みなので。
太陽電池パネルとLED本体を繋ぐ線は5メートルありますが
30cmもあれば十分なので躊躇無く切断しました。
線はとても細く、芯線は1ミリ以下です。
切断した残りの電気抵抗を測ったら2Ωありました。
壊れた物を取り外し、新しい物に交換しました。
が...
夜間になっても点灯せず..
設置前のテストでは点いたので故障ではありません。
色々調べてみると、線を切断した事が問題という事がわかりました。
太陽電池から発生した電気は夜間になった事を検知して点灯動作に入るための
センサーとしての役割りもありますが、線を短くした事で電気のロスが減って
隣の接骨院の看板の照明から漏れる弱い光程度で
夜間と判断してくれてない事が判りました。
切断した線を戻してロス分を受け入れるのは悔しいので改造しました。
充電経路とは別系統の簡単なトランジスタの回路で
夜間の判断をしているだけだったので、バイアス抵抗を大きくして
元の線と同じ程度の電圧低下を再現させました。
充電経路の方は短くした線のままなのでロスは最小限で充電されます。
最近の基盤には小さなチップ部品なので改造も大変です。
1/8Wの抵抗器に入れ換えました。
1/8Wでも昔は小さくなったと思っていたのですが、チップ部品と比べたら巨大ですね。
という訳で無事に点灯しました。
まだ薄明るい空でも夜間の判断になったようです。
さて、いつまで問題なく作動してくれるでしょうか?
壊れても2つは予備があるので暫くは大丈夫そうです。
リードバルブの剥がれ ― 2022/09/06
1年前に当店で調律を行ったアコーディオンの一部の音に問題があるという事で
1年ぶりに楽器が戻ってきました。
楽器自体は当店で販売した物ではありません。
急に2箇所の音の調律が大きくズレたのと、ベースの音が1音出なくなったという事です。、
点検してみると、リードに貼ってある薄い樹脂製のリードバルブという部品が
剥がれて無くなっていました。
楽器内を探すと剥がれたリードバルブが出てきました。
アコーディオンの1つの音が突然に調律が大きくズレる時の原因は大抵2つです。
一つは今回のようにリードバルブが取れてしまう場合で、
もう一つはリードにヒビが入って折れかけている時です。
もう一箇所、音に異常がある所も原因は同じでした。
こちらも楽器内から剥がれたバルブが出てきました。
こちらの方はリードの木枠の内側なので外から剥がれた箇所を目視できません。
ベースの音が出なくなった所を点検してみると、ビックリ!
リードの隙間にリードバルブが刺さっていました。
剥がれたリードバルブがリードの隙間に入って引っ掛かったため、
音が出なくなったという状況です。
該当箇所は内側のリードバルブでした。
中で剥がれた物が演奏する事でリードの隙間から
外に出掛かって止まったという感じでしょう。
異常はこの3箇所だけでしたので、剥がれたものを貼り直し、
該当箇所の調律を行って作業を完了しました。
リードバルブは経年で反りが出たり、閉じる力が弱くなると調律が変わります。
アコーディオンの調律がずれる原因の一つです。
反りを修正したり、貼り直しを行った場合も調律が変化するので、
触った場合は併せて調律を行う事が必須となります。
今回、3箇所共にリードバルブの剥がれが原因でした。
これはリードバルブの接着が弱っているか、元から弱かった可能性があります。
この楽器は古くはないですが、新品でも数年で問題が出てくる時もあります。
今後、同様の問題が出た場合は全数のリードバルブを貼り直す作業が必要と思います。
剥がれれば大きく調律がズレたり、音が出なくなったりする原因になり、
その不安を抱えながら使って行く事は現実的ではありませんので。
宝石展 ― 2022/09/08
今日は木曜で定休日です。
前から行きたかったところへ行くために名古屋へ来ました。
やってきたのは名古屋市科学館。
フジテレビではありません。 一応..
科学館のロッカーは周期律表に似た感じの作りになっています。
今日はBe、ベリリウムへ入れました。
前回来た時はゲルマニウムでした。
今日の目的はこれです。
宝石展と思っていましたが、正式名称は、特別展「宝石」でした。
驚いたのは人の多さです。
夏休みも終わって1週間経ちますし、普通の平日木曜です。
ですが、とても賑わっていてゆっくり見るのが大変なほどです。
平日だしガラガラだろうという予想は見事に外れました。
面白いのは、年齢、性別が偏っていないことです。
若い人も老人も満遍なくいますし、男女も同じです。
宝石という事だから女性が多いのかな?と思いましたが
際立ってそんな感じはありませんでした。
綺麗なアクアマリンの原石です。
上の結晶は巨大ですね。
美術展ではないので撮影し放題です。
エメラルドの原石です。
とても好きな鉱物ですが、手前のアクアマリンと同じベリルという結晶です。
不純物元素の違いで色が変わっているだけで、元の純粋ベリルは無色透明です。
最初に荷物を入れたコインロッカーのBe、ベリリウムはベリルの重要な主成分です。
つまり、最初からベリルが見たかったという事です。
ベリル原石の和名は緑柱石という名前ですが、形を見ると納得します。
私はこのような原石状態が好きです。
自然にできた結晶の形と周囲の石の中の存在感がとても美しいです。
カットされて磨かれ、貴金属の上に乗ったアクセサリーもそれはそれで綺麗ですが
個人的には原石の方に魅力を感じます。
意外ですが、それはこの会場に居る人も同じなのかも知れません。
展示の後半はカット、研磨され貴金属と合わせた作品としての
宝石になって行きますが、前半の原石や性質などを解説したところより
明らかに人が少なく、あまり時間をかけずに見ている感じがあります。
場所が科学館だからでしょうか?
特別展を見終わって、まだ時間があったので常設の方を見学しました。
丁度、テスラコイルの放電実験を行うところに間に合いました。
きちんと見るためには放電ラボという部屋に入って見ますが、
最終回の時間に間に合わなくて部屋には入れませんでした。
でも、上の階の窓から放電を見ることができます。
これがテスラコイルですが大きなコイルが2基設置されています。
この規模のテスラコイルの放電を見られるところは沢山ないと思います。
放電が始まりました。
音もしますが放電ラボから見る時より小さいです。
大きな音が苦手な人は上から見る方が良いかも知れません。
発生する電磁波を防止する為に窓には金網が張ってあります。
電子レンジの扉と同じです。
以前、放電ラボからは何度も見た事がありますが、
上から見る放電もなかなかのものです。
名古屋市科学館の個人的なイチオシです。
新品楽器の整備 ― 2022/09/09
受注で入荷した楽器の整備を行いました。
HOHNERの低価格なアコーディオンで、買おうと思えば
Amazonや楽天、その他一般的な楽器店でも買える物ですが、
当店でのご購入を決めていただけました。
新品楽器と言っても専門店としての基準では不十分なので
整備、調律を行ってからお渡ししています。
まずは分解しないでも分る部分ですが、鍵盤の高さにバラつきがあります。
鍵盤の高さを修正しました。
この作業を行うと空気漏れが起きる場合が多いので
併せて空気漏れの調整も行います。
続いて内部の修正に入ります。
右手側のリードですが、リードの調整が不十分で、隙間にバラつきがあります。
この状態だと発音のしやすさに影響しますので全てのリードの点検と修正を行います。
こちらも右手リードですが、バラつきがあります。
この楽器はきちんとした輸入代理店から入っていますので
最低限の点検、調整はされていますが、細かく見るとまだ調整が必要な状態です。
同じ中国製でも点検と不良部分の修正だけ行っている楽器に比べれば
これでも初期の状態はずっと良いといえます。
同じく右手リードの高音部ですが、やはり調整が必要な状態です。
リードの調整を行うと調律が変わるので、後の調律が必須となります。
リードを取り外した本体側ですが、音の切り替えを行うための
スイッチで開閉するシャッターが全開になっていません。
これでも十分に音は出ますので不良という判断にはならないと思いますが
可能な限り性能を引き出すためには全開の状態にする必要があると考えています。
調整を行い、シャッターが全開になるようにしました。
ベース側のシャッター機構も全開になっていない所があるので
調整が必要な状態です。
シャッターが全開になっていない原因の一つはコレです。
矢印部分の部品が斜めに曲がっています。
部品を垂直に修正しました。
これが本来の状態ですが、この楽器は軽量化を追求した結果、
金属部品の強度が低いので、少しのことで部品が変形する事例があります。
ベースリードの方にも隙間のバラつきがあるので修正を行います。
こちらもベースリードですが、隙間のバラつきがあります。
単にバラつきを揃えるだけではなく、リードとして最高の働きを得られるように
調整をして行きます。
最高の状態はリードのグレードや奏者の能力や癖により変わりますので
色々な事を考慮して、その時に一番良いと思われる調整を行います。
ベースメカニックの点検をする為に裏蓋を開けました。
メカニックに異常はありませんでしたが、製品加工時のものと思われる
細かい破片のような異物があるので掃除しました。
新品楽器によくある事ですが、放置するとリードに挟まって
音が出なくなる原因になりますので、可能な限り内部の異物は取り除きます。
これで楽器本体の修理、修正、調整は完了しました。
後は全体の調律を行えば完了です。
調律はMMの波の速さを使う人のお好みや、主に演奏して行くジャンルに合わせて
再調整します。
この事はとても重要で、同じ楽器でも全く音の感じが変わります。
当店で販売する全ての楽器は、ご購入が決まってから打ち合わせを行い
MMの波の速さを決定し、調整してからお渡ししています。
調律が完了したら、最後に自分で演奏してみて全体のチェックを行います。
問題があれば再度、調律や修正を行います。
この楽器は付属のベルトが車のシートベルトのような感じの物で、
万人に使えるようにとても長くなっています。
なので、不要な部分を切り落として作業完了となりました。
代理店から購入して販売する低価格な楽器ですので、
利益は低いですが、当店の在庫と同じように時間をかけて調整、調律を行っています。
当店を選んでいただいた訳ですので
その辺で売っている物と同じ状態でお渡しするような事はいたしません。
その他、当店としての1年間保障が付き、その後の修理、調律は3割引きで実施します。
来年からは当店販売の新品楽器の調律は通常料金の半額、
中古楽器は3割引きで実施して行く予定です。(3月以降を予定)
これは過去に販売した楽器についても適用します。
(修理などは新品3割引き、中古1割引きで、現在と同じです。)
この楽器はドイツHOHNERのブランドですが生産は中国です。
先日ブログに書きましたがドイツ生産されていた楽器をきちんとコピーしてありますので
一般的な中国製よりも良い物と思っています。
製品やカタログ、ウェブサイトでは中国製である事がほぼ、分らない状態ですが
良い物なので自信を持って中国生産と書いたら良いと思います。
表示義務がないからと思いますが、意図して分りづらくしているようにも思います。
ネットで販売する店も分っていて表示していないのは店の良識を疑います。
一般の楽器店では判断できていないということもあると思いますが、
アコーディオンを扱う店は分っている筈です。
価格が30万円台程度までの物は中国製と思っていれば失敗はしないでしょう。
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