コンサーティーナの調律 ― 2023/02/04
HOHNERブランドのクロマチックコンサーティーナの調律を承りました。
HOHNERの文字が入っています。
15年位前はHOHNERブランドでしたが、その後HOHNERブランドは消えて
日本でHOHNERの代理店をしているモリダイラ楽器がStagiというブランドで
同じ物を輸入販売していましたが、最近はBastariという名前になりました。
作っているのは同じメーカーと思います。(イタリア製)
この楽器はHOHNERブランドの頃に購入した物で、ずっと使ってきたそうですが、
古くなってきた事もあり、同じ物(Bastari)を予備として最近購入したとの事です。
ですが、買った物は最初のHOHNERより酷く劣るという事で、
元のHOHNERを整備する決断をしたという事です。
因みに、新しく買った物は新品(日本国内で販売)です。
ブランド名はHOHNERでも中は特徴のある2階建て構造なので、
ひと目でStagi(Bastari)と分かります。
この楽器は比較的低価格なので細かい調整ができていなかったり、
大雑把な作りになっています。
なので、きちんと調整すると大きく変化します。
リードの隙間の調整がバラバラです。
典型的な調整不足の状態ですが、有名メーカーの高額なアコーディオンでも
このような事は普通にあります。
上段のリードを開くと下のリードが出てきます。
とても特徴的な作りですが、メンテナンスはやりにくいです。
下段のリードも調整不足です。
リードはアコーディオン用ですが、両端に切り欠きがあり、
ネジ留めで使えるようになっています。
この楽器ではロウ留めしてありますが、この切り欠き部分に
ロウが入っていなくて無駄な空気の出入りがあります。
そういう所は数か所程度ではありません。
単にロウ留めがきちんとできていなくて、空気が無駄になっている所もあります。
木枠の下の部分も接着が怪しいので空気が漏れているかも知れません。
リード周りの欠陥は全て修正していきます。
リードの調整不足は当然、裏面にもあります。
表から確認して明らかに問題があるリードは木枠から取り外して
リードの調整を行って、ロウ留めして戻します。
リードの調整の為にリードを外したところですが、
木枠の隔壁に問題がある事を見つけました。
隣のリードの部屋を仕切っている壁の下の部分に隙間ができています。
これも空気が無駄に使われる原因になります。
ペンライトを当ててみると隙間から光が漏れているので分かりやすいです。
比較的大きな隙間なので、発音の効率は低下していると思います。
さすがに隣のリードが鳴る程の漏れは無いようですが、
リードの調整が悪くて少ない空気で鳴らないからというのもありそうです。
リードをきちんと調整すると空気漏れで鳴ってしまうかも知れません。
全体に調整不足でバランスを取っている部分もあるという事でしょうか。
リードの開閉機構の空気が通る部分ですが、何か変です。
2階建てリードの上の部分へ空気を通す穴ですが、
開閉するので合わせ目があります。
合わせ目にはバックスキンが貼ってあり、空気漏れを止めています。
何故か片面の革は途中で切れています。
下に貼ってあるのは黄色い革ですが、半分で切れているのは茶色い革です。
これでは段差があるので空気が漏れるでしょう。
合わせ目部分を閉じた所を横から見たところです。
閉じた時に平行が出ていないので空気漏れがあったのでしょう。
それを緩和する為に隙間の多い方へ半分の革を足したという事でしょうか?
それでも不完全なのは見れば判ります。
左手側の同じ部分を確認すると茶色の革が両面に貼ってあるだけでした。
こちらは問題なさそうです。
半分サイズの茶色の革は、なんと、接着されていませんでした。
ただ、挟んであっただけという事です。
合わせ目が平行になっていないので、平行にする為には
革パッキンを厚くするか、蝶番の位置を修正するかのどちらかです。
今回は蝶番の留める位置を変更して平行を出しました。
右手側の調整が完了したので、左手側へ移ります。
左手側もリードの切り欠き部分のロウ留めが不十分な個所があります。
切り欠き部分以外にもロウ留め不良があります。
これも右手側同様なので、全体としてこんな感じという事です。
リードの調整の為にリードを外した所ですが、
加工屑?があります。
最初から今まであったという事と思いますが、
発音に問題が出る時が多々あったでしょう。
別な個所ですが、リードを外すとロウがまわっていなくて
空気漏れしている箇所がありました。
リードが付いている時は分からないのですが、
何となく、そうじゃないか?という感じはしていました。
そして、隣へ通じる部分も..
少数ですがリードに錆が出ている所がありました。
錆は調律に影響するので全て除去します。
発音に係る部分の修正を完了しました。
これでやっと調律に入る事ができます。
リードの修正やリードバルブ、ロウ留め、錆除去など行うと
調律が変わるので、調律前に全て完了する必要があります。
また、これらの修正を行った後には調律が必須となります。
SNSなどでリードの調整をして問題なくなりました..
という内容を見る事がありますが、
で、調律は?と、思ってしまいます。
気づけない部分は問題も感じないのでOKという事なのでしょう。
発音関係以外にも問題があります。
ボタン部分と、ボタンと連動するバルブのある面です。
空気漏れが多いのでチェックする為に開けました。
バルブの位置がズレていて、下にある穴の一部が見えています。
見える程なので空気も漏れているでしょう。
バルブ面を見ると、穴の位置が端にズレている事が分かります。
このようなバルブを修正する事で空気漏れが減ります。
コンサーティーナは蛇腹の容積がアコーディオンより少ないので
空気漏れの影響が大きく出る楽器です。
これでやっと調律に入れます。
かなりの修正を必要としましたが、低価格な楽器なので仕方ない部分でしょう。
きちんと作ったら価格は倍になってしまいます。
この楽器は古いHOHNERブランドなのでまだ良いですが、
新しく買った楽器の性能はこれより悪かったという事ですので、
気になる方は一度、調律を行うと良いでしょう。
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