小型バンドネオンの修理42023/02/01

小型バンドネオンの修理、調律を進めています。


右手側のリードです。
古いリードバルブを取り除き、リードバルブの接着剤、リードの錆を取り除き、
リードの調整を行い、新しいリードバルブを取り付けました。


同じ事を左手側のリードでも行いました。
後は本体に取り付けて調律を行えば楽器として使える物となります。

リードの下にある袋に入った物は、楽器から取り外したリードバルブと、
蛇腹の両面に貼ってあるパッキンシールです。
小型バンドネオンと言っても楽器全体だとかなりの量です。


楽器の音の部分以外にも外観部分の問題が多くあるので修理をおこないます。


剥がれているセルロイドや角のモールを接着しているところです。
外観の修理が終われば全ての作業が完了です。


テレビ出演2023/02/03

NHK名古屋放送局による平日夕方のニュース番組「まるっと!」で、
monte accordionのアコーディオン教室で講師をしている
アンジェロ アクィリーニさんを取り上げた内容の放送を
していただける事になりました。

番組中の「ハローネイバーズ」という、東海北陸地方に住んでいる
外国人を紹介するコーナーでの放送です。
イタリア人のアンジェロさんに焦点を当てた内容ですが、
monte accordionとの関わりにも触れ、店内からの放送となります。

放送は、NHK総合 2月8日(水) 18:10からです。
(放送は予定が変更になる場合があります)

放送エリアは名古屋限定ですが、放送後に「まるっと!」のサイトや
NHKプラスで見る事もできます。(1週間限定)

「まるっと!」 のサイト


※この放送の為、2月8日は15時までの営業となります。
※※この放送は既に終了しました。

MMMアコーディオンの調律2023/02/03

イタリア製のミュゼット(MMML)の調律を承りました。


BURANDONIというメーカーの34鍵盤ですが、MMMLのリードが付いています。
日本国内で新品として販売された物ですが、MMMの調律のズレが多過ぎて
気持ち悪い音になっているので、ズレ幅を減らした上で、全体を正しく調整する事になりました。


この楽器はそんなに古い物ではありませんが、奇妙な事に気づきました。
蛇腹留めの上の方ですが本体カラーに合わせた茶色の革の物が付いています。


下側の蛇腹留めは黒で、上下で色違いです。
劣化して交換するには時期が早いと思います。
聞いてみると、下側の蛇腹留めがすぐに外れるという事で、
購入した後にクレーム対応してもらったそうです。
その時に、下側だけ色の違う物に交換されて戻ってきたとの事でした。


上のこげ茶の物が純正品で、下の黒い物が交換された物です。
スナップ部分を見て分かりましたが、これはチェコ製の合成皮革でできた物です。
手元にあった物で長さが合う物があったので交換したというところでしょうか?


今回はイタリア製の黒い革製の物に上下とも交換する事になりました。
一番上が元々の物、真ん中の物が交換されたチェコ製の物、
一番下が今回交換するイタリア製の黒い物です。


右手のスイッチですが、ミュゼット仕様なので、MMMのスイッチがあります。
使用に伴う埃がスイッチ周りに付いていますが、これは調律前に取り除きます。


鍵盤の根本にも埃が溜まっています。
これも調律前に除去します。


右手のリードですが、リードバルブを押さえている金属バネの形が悪い物がありました。
よく見ると、そのリードの修理のロウ留めの処置が他と違って雑になっています。
これは何か訳があって、一度取り外して付け直したのでしょう。


該当リードを横から見るとバネが浮いているのがよく分かります。
何故かリードバルブが少し汚れています。


ベースリードの方ですが、リードバルブの反りが少し出ています。
古い楽器ではないので経年のナチュラルな変化というところです。

よく言われている、アコーディオンは新品から使って行くと段々と音が鳴るようになる、
という理由は、リードに貼られているリードバルブの押さえが緩くなる為です。
同時にこの事で調律もズレが出てきます。
使う事でリードが変化して鳴るようになる、という事はありません。
リードが育つといか書いている人を見た事がありますが、全く根拠のない思い込みです。
本当にリード自身が変化した場合、金属の特性が変化する訳ですので
大きな調律のズレが出る筈です。


右手側のロウ留めが雑になっている部分のリードを外しました。
この時、このリードが最初の状態と表裏が逆に取り付けられている事に気づきました。
上の画像は内側になっていた方です。
なので、リードバルブのバネが浮いていません。
内側のリードなのにリードの上の部分にロウが付いています。
これは元々表側だったので、接着の為に乗せたロウが付いてる、という事です。
リードには表裏の印が付いている物があり、このリードにも表を意味する
斜めの線がリード先端の脇に入っていますので、
間違いなく取り外した際に表裏が入れ替わっています。
これが意図して行った事なのかどうかは分かりません。
ダイアトニックアコーディオンではないので、表裏が変わっても音程は変わりません。


本来内側だった方のリードバルブとバネを外しました。
バネは強く曲げられている事が分かります。


各部を正しく調整してリードバルブを貼り直しました。


今度は表裏を最初と同じ状態にしてロウで留めました。
これで一件落着。
これは極端な例ですが、調律をする前には、
右側、ベース側含め、全てのリード、リードバルブの調整を行い、
同時に細かい不具合の修正、除去も行います。


ベースのリードが付いている木枠を取り外した本体側です。
木枠の穴の跡が本体側のバックスキンに残っていますが、
上から2列のリード列は、かなりのズレがあります。
下から3つのリード列では、スイッチで開閉するシャッターが
僅かですが、全開になっていません。


分かりやすいように木枠の穴の跡の輪郭を描いてみました。
一番低音のリード列の大きな穴の一部が欠けている事が分かります。
ニ番目の低音のリード列の穴も僅かに欠けています。
大きなリード(低音域)は空気の消費が大きいので、できるだけ大きな開口が必要ですが
これでは本来の能力が出ていない可能性があります。


リードの穴を本体と合わせる為、木枠の加工をしました。
併せて、スイッチで開閉するシャッターの調整も行います。

ここまで書いた、リードの調整や穴の位置のズレ修正、シャッターの調整など、
どれも、そのままで音は鳴りますし、楽器としても使えるでしょう。
ですが、本来の性能が発揮できなかったり、調律のズレや、発音の遅れなどの症状が出る事もあります。
どんなに有名な楽器でも、高価な高級品でも、調整に問題があれば性能は発揮されません。
当店で販売する物は、新品、中古問わず、このような調整は全て行っています。
勿論、調律の見直しもしますので、今回のようなMMMのズレ幅が大き過ぎるという事があっても
そのまま、お渡しする事はありません。
MMの波の速さも任意に調整してお渡しする事もできます。


楽器の調整とは別の部分で気になった事が一つ。
ベース側本体の下側部分が網目状に何かが付着しています。
これは滑り止めシートとして販売されている
柔らかい塩化ビニルのシートが貼ってあったのだと思います。
貼ってあった理由は分かりませんが、軟質塩化ビニルには可塑剤が入っており
可塑剤がアコーディオンの表面にあるセルロイドと反応する事があります。
すると、塩ビが剥がれなくなったり、セルロイド表面に凹凸ができたりします。
アコーディオン本体にはできるだけ樹脂やゴムの類を長期接触させないようにした方が安全です。
どうしてもという場合は、目立たない部分で長期試験を行ってからにすると良いでしょう。


問題の部分は綺麗に取り去る事ができました。
結構大変でしたけど..
調律も整い、見た目もリフレッシュして新たな気分で楽器を使うのも悪くないと思います。


コンサーティーナの調律2023/02/04

HOHNERブランドのクロマチックコンサーティーナの調律を承りました。


HOHNERの文字が入っています。
15年位前はHOHNERブランドでしたが、その後HOHNERブランドは消えて
日本でHOHNERの代理店をしているモリダイラ楽器がStagiというブランドで
同じ物を輸入販売していましたが、最近はBastariという名前になりました。
作っているのは同じメーカーと思います。(イタリア製)

この楽器はHOHNERブランドの頃に購入した物で、ずっと使ってきたそうですが、
古くなってきた事もあり、同じ物(Bastari)を予備として最近購入したとの事です。
ですが、買った物は最初のHOHNERより酷く劣るという事で、
元のHOHNERを整備する決断をしたという事です。
因みに、新しく買った物は新品(日本国内で販売)です。


ブランド名はHOHNERでも中は特徴のある2階建て構造なので、
ひと目でStagi(Bastari)と分かります。
この楽器は比較的低価格なので細かい調整ができていなかったり、
大雑把な作りになっています。
なので、きちんと調整すると大きく変化します。


リードの隙間の調整がバラバラです。
典型的な調整不足の状態ですが、有名メーカーの高額なアコーディオンでも
このような事は普通にあります。


上段のリードを開くと下のリードが出てきます。
とても特徴的な作りですが、メンテナンスはやりにくいです。


下段のリードも調整不足です。


リードはアコーディオン用ですが、両端に切り欠きがあり、
ネジ留めで使えるようになっています。
この楽器ではロウ留めしてありますが、この切り欠き部分に
ロウが入っていなくて無駄な空気の出入りがあります。


そういう所は数か所程度ではありません。


単にロウ留めがきちんとできていなくて、空気が無駄になっている所もあります。


木枠の下の部分も接着が怪しいので空気が漏れているかも知れません。
リード周りの欠陥は全て修正していきます。


リードの調整不足は当然、裏面にもあります。
表から確認して明らかに問題があるリードは木枠から取り外して
リードの調整を行って、ロウ留めして戻します。


リードの調整の為にリードを外したところですが、
木枠の隔壁に問題がある事を見つけました。
隣のリードの部屋を仕切っている壁の下の部分に隙間ができています。
これも空気が無駄に使われる原因になります。


ペンライトを当ててみると隙間から光が漏れているので分かりやすいです。
比較的大きな隙間なので、発音の効率は低下していると思います。
さすがに隣のリードが鳴る程の漏れは無いようですが、
リードの調整が悪くて少ない空気で鳴らないからというのもありそうです。
リードをきちんと調整すると空気漏れで鳴ってしまうかも知れません。
全体に調整不足でバランスを取っている部分もあるという事でしょうか。


リードの開閉機構の空気が通る部分ですが、何か変です。


2階建てリードの上の部分へ空気を通す穴ですが、
開閉するので合わせ目があります。
合わせ目にはバックスキンが貼ってあり、空気漏れを止めています。
何故か片面の革は途中で切れています。
下に貼ってあるのは黄色い革ですが、半分で切れているのは茶色い革です。
これでは段差があるので空気が漏れるでしょう。


合わせ目部分を閉じた所を横から見たところです。
閉じた時に平行が出ていないので空気漏れがあったのでしょう。
それを緩和する為に隙間の多い方へ半分の革を足したという事でしょうか?
それでも不完全なのは見れば判ります。


左手側の同じ部分を確認すると茶色の革が両面に貼ってあるだけでした。
こちらは問題なさそうです。


半分サイズの茶色の革は、なんと、接着されていませんでした。
ただ、挟んであっただけという事です。


合わせ目が平行になっていないので、平行にする為には
革パッキンを厚くするか、蝶番の位置を修正するかのどちらかです。
今回は蝶番の留める位置を変更して平行を出しました。


右手側の調整が完了したので、左手側へ移ります。


左手側もリードの切り欠き部分のロウ留めが不十分な個所があります。


切り欠き部分以外にもロウ留め不良があります。
これも右手側同様なので、全体としてこんな感じという事です。


リードの調整の為にリードを外した所ですが、
加工屑?があります。
最初から今まであったという事と思いますが、
発音に問題が出る時が多々あったでしょう。


別な個所ですが、リードを外すとロウがまわっていなくて
空気漏れしている箇所がありました。
リードが付いている時は分からないのですが、
何となく、そうじゃないか?という感じはしていました。


そして、隣へ通じる部分も..


少数ですがリードに錆が出ている所がありました。
錆は調律に影響するので全て除去します。


発音に係る部分の修正を完了しました。
これでやっと調律に入る事ができます。
リードの修正やリードバルブ、ロウ留め、錆除去など行うと
調律が変わるので、調律前に全て完了する必要があります。
また、これらの修正を行った後には調律が必須となります。
SNSなどでリードの調整をして問題なくなりました..
という内容を見る事がありますが、
で、調律は?と、思ってしまいます。
気づけない部分は問題も感じないのでOKという事なのでしょう。


発音関係以外にも問題があります。
ボタン部分と、ボタンと連動するバルブのある面です。
空気漏れが多いのでチェックする為に開けました。


バルブの位置がズレていて、下にある穴の一部が見えています。
見える程なので空気も漏れているでしょう。


バルブ面を見ると、穴の位置が端にズレている事が分かります。
このようなバルブを修正する事で空気漏れが減ります。
コンサーティーナは蛇腹の容積がアコーディオンより少ないので
空気漏れの影響が大きく出る楽器です。


これでやっと調律に入れます。
かなりの修正を必要としましたが、低価格な楽器なので仕方ない部分でしょう。
きちんと作ったら価格は倍になってしまいます。
この楽器は古いHOHNERブランドなのでまだ良いですが、
新しく買った楽器の性能はこれより悪かったという事ですので、
気になる方は一度、調律を行うと良いでしょう。

ニュース番組出演2023/02/08

本日、NHK名古屋放送局の夕方のニュース番組「まるっと!」へ
少し出演させていただきました。
monte accordionというより、当店でアコーディオン教室の
講師をしていただいているアンジェロさんの事を取り上げた内容です。


番組途中の「ハローネイバーズ」という、東海北陸地方に住んでいる
外国人を紹介するコーナーでの放送ですが、生放送でした。
また、局の方に気に入っていただけたらしく、番組冒頭でも生中継で
演奏してスタートするという大変貴重な機会を頂きました。
私も一緒に演奏させていただきましたがとても緊張しました。

放送は既に終わっていますが、番組のサイト、NHKプラスで
1週間の間、視聴する事ができます。
宜しければご覧ください。






ハローネイバーズのサイトはこちら