同い年2010/01/29

古いアコーディオンの修理見積もりが来ました。古い楽器ですが外見は結構綺麗です。付いてきた書面によると..
押していないのに鳴る音がある、気密性が悪い、とあります。
早速、症状を確認してみると..
凄い沢山の音が勝手に鳴っています。まるで全部の鍵盤を押したような感じです。そういう状態なので、気密は全く無く、蛇腹は軽々と開閉できてしまいます。という訳で、早速点検を行いました。

グリルカバーを空けてみると..
なんと、バルブのフェルトが酷い虫食いで、貼ってある皮が浮いている様な状態です。これでは気密を保つのは不可能です。今までにも虫食いは沢山見ましたが、こんなに酷いのは初めてです。

かなり傷みが激しそうなので、覚悟して中を開けてみました。すると、古い楽器には必ずあるサブタ皮の反りは勿論ですが、悪い事にリードが酷く錆びていました。

更に、ベースリードの木枠を外してみると..
バルブの当たり面に貼ってある皮が既に剥がれてずれてしまっています。恐らく、右手と同様、フェルトが酷く虫食いになっていると思われます。

この楽器を楽器として再生するには、全てのバルブ交換とリードの錆落とし、サブタ皮の交換、調律を行う必要があります。右手のバルブ交換を行うと、鍵盤の高さが狂うので併せて鍵盤高さの調整が必要になります。ベースのバルブ交換はベースメカニックの一番底にバルブがある為、メカニックを全て分解する必要があり、バルブ交換後はボタンひとつづつの調整を行いながら組み上げるという大変な作業があります。更に、リードの錆を落とすにはリードのロウを取り、木枠からリードを全て外し、ひとつづつ手作業で研磨を行い、もう一度、新品を組む時の様に木枠へロウで取り付けをします。その際にサブタは全て張り替えします。最後は調律ですが、研磨したリードは大きく音程がずれる為、通常の調律よりも大変な作業になります。これだけの作業を行うには1ヶ月以上の作業時間が必要ですから、修理費用も安い楽器が買えてしまう程になります。せめて錆が無ければ、20年以上の楽器の一般的な再生項目なので何も特別な出費は無いのですが..

点検を終え分解した楽器を元に戻し、ふと側面を見ると何か貼ってあります。
これは日付..?

この楽器を新品で購入した時の日付だとしたら私と同じ年齢、今年43歳の楽器です。古い楽器は良い物が多いので、きちんと再生したら良い楽器に生まれ変わると思いますが、出した見積もり金額では普通の人なら修理しないでしょう。

誕生後43年。私自身もオーバーホールが必要な時期でしょうか。点検くらいはきちんとしないといけませんね。錆が出ていないといいのですが..