コンチネンタルの改造2015/10/12

EXCELSIORの高級機、コンチネンタルのベースレジスターの
組み換えを承りました。


EXCELSIORのコンチネンタルの比較的新しい中古を
ネットで購入したという物です。
最近のモデルはグリルカバーの下にある開閉する内箱の開閉が
音色切り替えスイッチと同じ並びにあるようです。
以前の物はグリルカバーの中央にスライドするツマミがありました。



これがコンチネンタルのグリルカバーの内側にある
箱というか内カバーです。
イタリアではソルディナなどと呼ばれています。

これは従来の物で、取り外しができて、前述のツマミ操作で開閉するタイプです。
この写真は開いた状態ですが、ご覧の通り、
全開でも半分以上はカバーに覆われています。
その分、音が弱くなる事を気にしてコンチネンタル所有者の中には、
このカバーを外して使っている人もいます。
ネジ2本で簡単に外せて、復帰も簡単です。


当店のガラクタ置き場にも過去に外した内カバーが幾つか転がっています。



これは今回の新しいタイプですが、音色切り替えスイッチの台に
取り付けられていて、従来のように簡単に外せません。
この楽器のオーナー(知り合いです)は楽器の音が弱い事を気にしていて、
従来のように内カバーが簡単に外せない事を説明したところ、
自分で切り取ってしまい、この写真の様に周囲を残してカバーが無くなっています。
これを切断する為に、TVの通販で回転する電動ノコギリを買ったそうですが、
なかなか大胆です。



周囲に残った内カバーの穴から音色切り替えスイッチへ伸びる金属棒が
カバーの穴の周囲と干渉しているのが気になります。
この棒状の部品はスイッチ操作で動いてシャッターを開閉しますが、
カバーとの干渉で作動が怪しい感じです。



点検すると、やはりシャッターが全開になっていません。
音が弱いというオーナー様の持つ感覚は、これも一因と思います。



さらによく調べてみると、内カバーとの干渉以外に、
スイッチが取り付けられているアルミニウムの台との干渉もありました。
上の写真のネジ状の部分が下の黒い台に触れています。



部品をずらしてみると、製造時に対処したと思われる
台部分を削った痕があります。
ですが、まだ干渉しているので不十分です。



触れない程度に削って対処しました。
これでシャッターは全開になります。
こういった小さな不具合は製造時から幾つもあるのが普通です。
このようなイタリア製の高級機でも例外ではありません。
当店では販売前の調整で可能な限り、細かい不具合を取り除いています。
また、後に不具合が出てもすぐに対処させていただいています。



さて、本題はここからです。
コンチネンタルは6列ものリードがベース側に入っていますが、
不思議な組み合わせで使われるようにセッティングされています。
以前にもブログで紹介した事がありますが、これは新しいモデルでも同じでした。
詳細は下記の記事をご覧ください。

写真はオーナー様の改造プランです。
今回は3箇所変更します。



改造を行なう為に本体を分解し、ベース側のリードを外しました。
ここで異常を発見。
ベースリードの下にあるアルミニウムの台座を留めているネジが緩んでいます。
ここは多数のネジが入っているので1本くらい緩んでも問題はありません。
実際、ネジ留めと共に接着もされているので問題は無しです。
ですが、気になるので増し締めしました。



同じ台座を固定するネジの別の場所でも緩みによるネジの浮きを見つけました。
こちらはベースリードの木枠の下に位置するので問題があります。
緩んで高くなっているネジの頭とリードの木枠の底が干渉しています。
これでは木枠がきちんと接地しませんので、空気が漏れますし、
リードからの音(振動)も本体にきちんと伝わりません。
ここも増し締めしてネジを低くして事なきを得ました。
状況から見て、これは使用中に緩んだものでは無い気がします。
製造時からの締め忘れの可能性があります。



不具合は無いですが、ネジが変形している箇所がありました。
リードの木枠の端を押えている重要な部品を留めている大きなネジです。
マイナス溝のネジですが何故か、マイナス溝の所で折れ曲がって
ネジの周囲の穴に落ち込んでいます。
ネジの閉め過ぎでもなりそうですが、手締めでネジが変形する筈が無いので
木枠を外す時に端が部品の下に嵌ったままで強引に木枠を持ち上げた
のではないかと思います。
すると部品が木枠と共に持ち上がり、押えていたネジの頭に大きな力が掛かって
ネジが変形して埋没したという事です。
予想ですが他に原因は見当たりません。
今の時点で不具合は起きていませんが、固定にやや不安を感じます。

という事で、調律などで楽器を分解すると色々な発見があります。
新品でも一度、点検を兼ねて調律を行うと細かい不具合を
見つける事ができるのでお勧めです。
ネットや他店で購入した物でも問題なく持ち込みいただけます。