修理断念2020/06/22

古い日本製のアコーディオンの修理を承りました。
34鍵盤のMMの楽器で製造から40~50年程度経過した物です。
修理の前に点検と見積りをさせていただきました。


楽器の外観は酷くはありませんでしたが内部はこの通りです。
リードに貼ってある薄い革製のリードバルブという部品は硬化と反りが出ています。
このままでは綺麗な音が出ませんので全ての部品を貼り替える必要があります。
この部品は画像では見えていないリードの裏側にもありますので
見えている部分の倍の数があり、交換の作業は時間を要します。


リードバルブの交換と調律で済めばまだ再生できる可能性ありますが、
致命傷となる問題が見つかりました。
リードを木枠に留めているロウが劣化して脆くなっています。
ヒビが入っているのが分かると思いますが、リードの固定ができていないので
音にノイズが混ざったり調律が安定しません。

楽器として使えるようにするにはリードを全て木枠から取り外し、
古いロウを綺麗に取り去った後に新しいロウで木枠に固定する作業が必要です。
これには多大な時間が必要となりますので費用が高額になります。
楽器の価値に対して修理費用が掛かり過ぎるため、修理はしない事になりました。
楽器の価値は単純に物としての価値だけではありませんので、
このような状況でも場合によっては費用をかけて修理する事は可能です。

今回は新品で購入した物が年月を経て古くなったという事ですので
仕方がありませんが、古い中古楽器をオークションなどで手に入れた場合、
同様の事態が起きる事はよくあります。
1万円で買った物でも修理せずに捨てる事になれば損失です。
きちんとした音が出ていない事に気づかずに使い続けるのは
出費よりも大きな損失となります。