マイク付け→調律 ― 2021/08/13
先日、内蔵マイクの取り付けをさせていただいた楽器ですが、
併せて調律も行うという事で承りました。
この楽器、鍵盤式ですがベースボタンはフレンチタイプのボタン式と同じような形状です。
楽器もフランスで購入したものという事です。
なのでリードは鍵盤式のCavagnoloと同じような釘留めかと思いましたがロウ留めでした。
音に違いは出ますがどちらが良いというものではなくて好みです。
ただ、内容を分かった上で購入に至っているか?という部分は重要です。
調律前に発音関係の点検と調整、不具合の修理を行います。
これはベースリードですが1箇所、リードバルブの上にある薄い金属の
バネが無いことに気付きました。
中央のリードですが見ての通りです。
良く見るとリードのロウに凹凸があるので一度、何かの理由で外したようです。
リードが他と違うようにも見えますのでリードが折れて交換したのかも知れません。
この部分だけバネが無いと他の音とのバランスが悪くなりますし、
大きなリードのリードバルブなので押えバネがないと反りが出てきて
雑音が出る原因になります。
両サイドのリードと同じようなバネを取り付けることにします。
該当箇所を木枠の下側から見たところです。
2段になっているリードの穴の隔壁部分に損傷があります。(矢印部分)
これはリードを外す時に何か金属など硬い棒状の物を入れて
壁のところをテコにしてリードを内側から持ち上げて外した場合にできる傷です。
リードを交換する際に外した時の損傷でしょう。
私はイタリアで修理を学んだ時にこのようになるので気をつける事と、
このようにならない方法を教わりました。
結果として誰がやっても修理できて音は復帰しますが、
知識を持って修理した場合とそうでない場合に差が出る事もあります。
楽器の機能として問題は無さそうですが気持ちの良いものではありません。
ロウ留めの感じから判断して製造時ではなく後の修理での事と思います。
先の例ではリードバルブ上の金属バネが無い状態でしたが、
今度はバネが2枚重なっている所を発見しました。
とても薄い部品なので見ただけで気付くことは不可能な不具合です。
この部分だけ2枚あると音が弱くなり、他の音程とバランスが悪くなりますので
1枚取り除きます。
これは恐らく製造時に起きていたことでしょう。
このような不具合を発見するには相当きちんと点検、整備を
実行していかないと気付くことはできません。
この楽器に限らず、当店では全ての販売楽器、ご依頼で調律を実施する楽器について
全てのリード、発音に関する機構を詳細に調べて修理、調整を行っています。
その作業にはとても沢山の時間が必要となります。
アコーディオンの修理や販売をする人が、「点検、整備を行っています」と、
公言する事は簡単です。
ですが、実際にどの程度の事が行われているのか?という部分は不明です。
真実は実際の楽器の音で判断するか、詳細に内部を点検するしかありません。
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