コンサーティーナの調律2022/01/17

昨年12月にお預かりしたコンサーティーナの調律を行いました。



調律の前に別の問題があるので修理を行いました。
ボタンの戻りが悪く、音が出たままになったり、音の切れが悪い症状です。
原因はボタン周りの汚れ、酸化などによるものと判断し、
分解清掃を行う事にしました。



ボタン上のパネルを外したところです。
ボタンの上の部分は酸化して艶がありませんが原因はこれだけではなさそうです。
ボタンが動く際に摩擦する部分は艶が出ていますが全てのボタンの周囲を
清掃します。



パネル側のボタンが通る穴です。
周囲に巻いてあるフェルトが黒く汚れているのでこちら側も清掃します。



ボタン周りの分解清掃を完了しました。
ボタンの動きが良くなり音の切れも改善しました。
右手側が終わったら左側も同じ事を行います。



ボタンの修理が完了し、調律前の発音に関わる部分の不具合を直して行きます。
当店では調律の費用の中にそういった修正、修理作業が含まれています。
何故なら発音に関わる修理やリード周りの問題を修理すると必ず調律が変わるので
そのような修理を行う時は調律が必須になるためです。
単に音程を合わせる調律を行うだけでは楽器として良い状態にはならないので
無意味です。

このコンサーティーナは専用リードなのでリードを簡単に外せます。
蛇腹の開く方と閉じる方で鳴るリードも独立しています。
アコーディオンリードでは蛇腹の開閉で鳴るリードは1本ずつ
合計2本で1対になっています。



発音の悪いリードでリードの調整をしてもあまり改善しない場合があります。
このリードもその一つですが原因はリードの先端部分の隙間が多いためです。
アコーディオンでも中国製や精度の低いリードメーカーの物では時々あります。
アコーディオンなどではリベットで留めてあるので先端の隙間を狭くする事は
簡単ではありません。
コンサーティーナ専用リードはリード自体をネジ留めしているので
ネジを緩める事でリードの位置を調整する事ができます。



ネジを緩めて先端の隙間を減らしました。
これで発音は改善します。
文章で書くと簡単ですが実際にはネジを緩めるとリードは
フリーになるので前後左右動きます。
その状態でリードの前と左右をフレームと接触しないように
尚且つ隙間を少なくするように位置を決め、ネジ留めしなければなりません。
ネジを締めるとリードがズレたするので難しい作業です。
下手に行うと元より発音が悪くなりかねません。
また、この作業を行うと絶対に調律が変わるので後の調律が必須です。



こちらはうっすらと錆が出ているリードです。



錆の茶色になっている部分を除去しました。
黒くまだらに残っている部分までは除去しません。
これが消えるまで研磨したらリードが薄くなります。
それは調律で削る量よりとても大きいのでリードの寿命に影響します。

調律で削る程度であれば何度調律しても問題ありません。
業者によってはできないと言うところもあるようです。
実際には調律で削る程度でリードの寿命を縮める事はありません。
440Hzを442Hzにするような場合でも何も問題ありません。
それが本当なら数回調律を繰り返した中古楽器は
リードの残り寿命を気にする為に調律を放棄して使い続ける、
という事になってしまいますが、実際にはそんな事はありません。
余程調律が下手で何度も削り直すような事があれば
そんな事があるのかも知れませんが..



リードを外したところですが、矢印部分に段差があるのが気になりました。



リードを取り付けた状態で真横から見ると段差がある部分に隙間ができています。
隙間から空気が漏れて効率が落ちますので修正を行う事にしました。



段差を無くす加工を行いました。



リードフレームと本体の木の部分の隙間が減りました。



右手側のリードの調整、リードバルブの不良部分の交換を完了したので
今度は左手側の修正です。
左手側のリードバルブを交換しました。
薄い黄土色のリードバルブは交換した部分です。
右手側より反りが大きい箇所が多かったので交換箇所が多くなりました。



革製のパッキンがずれている箇所が幾つかありますので
ずれないように修理します。



左手側もリードバルブの交換、リードの調整、
発音に関わる不良箇所の修理を完了しました。
ここまでやってようやく調律へ進むことができます。
後は全体の調律を行うのみです。



調律を完了し、出荷を待つ状態です。
手前にあるのは交換したリードバルブです。
後は梱包して発送するだけです。