チェコ製のピンク色楽器2022/11/25

ピンク色のセルロイド張りという珍しい楽器の調律を承りました。
チェコ製の楽器で当店でも扱っているブランドです。
新品で購入して1年程度という事ですが、発音の悪い箇所が気になるという事で
送っていただきました。

受け取った楽器の点検を行いましたが、発音の悪い箇所が無数にある事、
調律の狂いが大きい事が分かったので全体の調律をする事になりました。
その他、鍵盤操作で機械雑音が大きい箇所が多数あるので
併せて修理する事になりました。

まずは鍵盤の修理から行いましたが、鍵盤の操作を行うと
隣の鍵盤とぶつかってカチカチとノイズが出ている所が多数ありました。
あまりにも気になったので修理を提案させていただきました。
これが新品楽器で1年以内とは思いたくない感じです。
画像は鍵盤を外して調整して行くところです。


問題のある鍵盤を全て修正し、元に戻しました。
それでもまだ隙間のバラつきはあります。
まあ、チェコ製の楽器はこの程度ですが、ノイズが出ていなければOKです。
同じ機種を当店でも販売していますが、こんなに酷い事はありません。
仮にこの状態であれば修理してからお渡しするでしょう。


今回、修理のきっかけとなった発音不良ですが、原因はリードの調整不足です。
メーカーから輸入した楽器は不完全なので販売前の調整は必須です。
矢印のリードは隣のリードと比べて隙間が多くなっています。
これが発音不良の原因ですが、隙間は少な過ぎても問題が出ます。
全てのリードに対して適正な隙間の調整を行い、最後に調律を行います。
リードを調整すると調律も変わるので最後の調律は必須です。
当店ではこの作業は新品、中古に限らず、全ての楽器でお渡し前に実施しています。
チェコの楽器に限らず、イタリアの高額な楽器でも調整不良は必ずあります。


リードの調整中に錆を発見しました。
全体としては少数ですがリードに錆がありました。
この楽器は新品で購入して1年程度という事ですので、
元々錆があった可能性があります。
販売元は在庫が200台もあるらしいので、在庫期間が長い物もあるでしょう。
楽器をケースに入れたままの保管で、使う事もなく、
長期の保存をすればリードが錆ることは不思議ではありません。
リードが錆びると調律がすぐに変化するので楽器として使えません。
当店では在庫は40台前後、殆どの楽器はケースから出して展示しています。
アコーディオンはケースに入れて使わない状態が続くと劣化が進みます。
外に出しておく、できれば鳴らす、これが劣化を抑えます。


この楽器はチェコ製ですがイタリア製リードにアップグレードされていました。
イタリアリードと言ってもピンキリです。
このリードは標準グレードで、私があまり好まないメーカーの物です。
好まない理由は加工精度が低いからです。
上の画像のリードで左のリードに比べて右は先端の隙間が多い事が分かります。
これは先ほどの隙間調整での話しではなくて、
調整不能な元々のリードとリード枠の寸法精度の問題です。
隙間が多ければ調整しても反応はそれなりになります。
リードは生産国や、グレード(標準、ハンドメイドなど)の事は
よく論じられますが、メーカーはあまり話題になりません。
楽器を選ぶ時、リードメーカーはとても重要な要素です。


作業はベースリードに移ります。
矢印部分ですが何となく、隙間がある感じがします。


剥がしてみると接着材がリードバルブには付いていますが
リードフレーム側には全く残っておらず、簡単に剥がれました。
接着がきちんとできていない状態です。
このような施工不良も全体の調律を行う事で見つける事ができます。
ただし、調律だけを行っていては発見できない事も多いです。
調律前のリードの調整作業はそういう意味でも重要な役割を持っています。


ベースリードの方も隙間がバラバラです。
ベース側も含め全てのリードを調整していきます。


ベース側のリードの木枠を外したところです。
これもよくある不良ですが、
リードの音を切り替える為のシャッタが全開になっていません。
スイッチ操作でシャッターが開閉して音が切り替わりますが
シャッターが全開になっていないと発音、調律の不良となります。
上の画像では4列ある全てのリード列でシャッターが僅かに残って
全開になっていません。
このような事は新品楽器では常ですが、当店では販売前に調整しています。
そのままでも音は出ますので、点検せずに販売しているところも多いでしょう。
何故なら、そういう楽器をよく見ますので。


点検の為にベースメカニックを見ています。
ベースに異常は見当たりませんでした。
が、クモの巣のようなものを見つけました。
やはり長期在庫品だったのでしょうか?
購入して1年でこうなるとは思えないのですが..
ベースメカニック周りの清掃を行いました。
全てのリードの点検、調整、錆取りを行い、最後に調律を行い
お客様の元へ送ります。
これで鍵盤の操作雑音もなく、発音も調律も良い状態で使う事ができます。
メーカーから仕入れたままでは楽器本来の性能は出ていない事は
もっと知られていて良いと思います。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
迷惑書込み対策です。
下欄に楽器の名前をカタカナ(全角)で入力下さい。
当店は何の専門店でしょうか?

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://accordion.asablo.jp/blog/2022/11/25/9567741/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。