フランス製鍵盤アコーディオン2023/05/29

フランス Maugeinから発注していたアコーディオンが届きました。
フランス製では珍しい鍵盤式です。


オレンジ色がとても鮮やかな鍵盤式です。
この楽器は在庫ではなく、お客様からの注文で作成した物です。
色やデザインなど細部に渡り打合せを繰り返して作成した、こだわりの楽器です。
そして、Maugeinもこちらの要求通りにきちんと作成してくれました。
ヨーロッパのメーカーでは、注文通り、というのがとても難しい部分があります。
特に外観に関しては日本人が考えている程、厳密ではないので
発注する時はとても気を遣います。
ですが、今回は100点満点です!


41鍵盤、MMML、120ベースという仕様です。
Maugeinで生産されている楽器は殆どボタン式ですが、鍵盤式も作成可能です。
恐らく年間に数台あるかないか、という程度と思います。

ボディーカラーは鮮やかなオレンジ色です。
この色はフランスのルノーのCLIO(現行モデル)という車の
orange valenchiaという色で塗装してもらいました。
CLIOは日本ではルーテシアという名前で販売されている車です。
単に車の色で塗っただけではなく、お客様からのリクエストでラメも入っています。
Maugeinは全て塗装仕上げなので色を変えても価格は変わりません。
イタリア製などの楽器はセルロイド張りの物が多く、
塗装で仕上げた場合はオプション扱いになり価格が上がります。


メーカーロゴは濃紺のラメ色で塗装してあります。
これもお客様からのご依頼です。
このメーカーロゴは現行のMaugeinでは新しいデザインに変わっていますが
特別に旧字体で作成してもらいました。
同じく、グリルカバーも旧デザインのメッキ仕上げにしています。


右手のスイッチもメーカーロゴと同じ濃紺のラメ入り塗装。
鍵盤は特に指定しませんでしたがパール鍵盤が付いてきました。


ベースボタンはパールの白で、スイッチは2つから3つに変えています。
ボタンはフランスなのでキノコ型で、ベース3列、コード3列の仕様です。
これは2列ベース、4列コードも作成可能です。
細かい部分ですが、ベースストラップは紺色にしてあります。
そして、ボディーカラーだけではなく、注目は蛇腹内のデザインです。


沢山ある生地から柄を選んで発注しましたが、
カラフルな花柄で、文字通り華やかな外観になりました。
蛇腹の山折り部分は白に指定しました。
この部分も色を選択できます。
Maugeinは蛇腹を内製しているメーカーです。
殆どのアコーディオンメーカーは蛇腹は外注しています。
蛇腹を内製している為、色や柄を任意に選んでも価格は変わりません。


フランスのボタン式の楽器には胸当てがありません。
この楽器もそれにならっていますが、今回はお客様からのリクエストで
当店で胸当てを取り付けました。
上の画像は楽器が届いた時のものなので胸当ては付いていません。


41鍵盤、MMML、120ベースの楽器ですが、重さは実測で10.4kgと軽量です。
Maugeinは楽器の重さが軽い部分も特徴です。

これだけの外観の指定をしていますので、デザインを確定するまでの
お客様のやり取り、決まったデザインをメーカーに正確に伝える連絡など、
通常のオーダーより手間が掛かりますが、当店が受け取る、
外観のオーダーを行う事による割増し費用はありません。
これはMaugeinだけでなく、全てのメーカーでそうしています。
勿論、製造時にメーカーが必要とするオプション費用が出る事はあります。


フランスのボタン式がメインのメーカーですので、リードの取り付けは釘留めです。
これにより、フレンチボタンと同等のクリアな音が得られます。
フランスの鍵盤式と言えばCavagnoloが有名ですが、あの感じの音が出ます。
Cavagnoloはとても高価ですし、鍵盤式の場合、イタリアで作成された物も流通しています。
Maugeinは鍵盤式もボタン式も、フランス国内の本社だけで作成されています。


とても綺麗に作られた楽器ですが、内部を詳細に見ればエラーが存在します。
これは全てのメーカーで普通にある事ですので、当店ではお渡し前に
詳細な点検を行い、修正と調律を行っています。
この楽器も同様ですが、分かりやすいエラーとしてまずはコレ。

矢印部分に問題がありますが、何が問題か分かるでしょうか?
本体の外側にベルトを留める金具をネジ留めしていますが、
そのネジが本体内側に貫通しています。
ネジが貫通する事自体は問題ありませんが、その場所が悪いです。
ネジの先が見えている所は黒い部分ですが、この黒い部分は本体と蛇腹の
合わせ目になる部分で、黒い物は発泡ゴムでできたパッキンシールです。
パッキンは柔らかく伸縮性があるので合わせ目に沿って変形し、
空気漏れを防ぐ役割をしていますが、この部分に硬いネジの先が入っています。
この部分に硬い物が入ると合わせ目に物が入るので合わせ目に隙間ができます。
恐らく、楽器を完成させて本体と蛇腹が一体となっている状態で、
最後に金具をネジ留めしたので、メーカーはこの事態に気付いていません。
ネジの先端を切断し、パッキンシールの補修を行いました。
このような事例はイタリアの楽器でも時々見られます。
完成して最後に取り付ける、ベルト金具、蛇腹留め、胸当てなどのネジ留めが
問題の起きる箇所に入り込んでいる不具合が多いです。


これも分かりやすいエラーです。
リードが付いている木枠の一部に欠損があります。
リードとリードを分離している隔壁の位置が欠損しているので
空気が漏れて隣の音が鳴ったり、空気を余分に消費する不具合になります。
有名メーカーの新品でもこのようなエラーが幾つもあるので
販売前の点検、整備、調律は必須です。
このような分かりやすいものだけではなく、リードの発音の調整など
地味な作業ですが確実に音に影響する部分の修正を行っています。
最後に全体の調律を行いますが、この時にMMの波の速さを使う人の
好みに合わせるという大事な作業も行います。
実はこの楽器、調律後の最後の試奏で鍵盤の重さがどうしても気に入らなかったので、
鍵盤を全て外して調整する作業を行いました。(写真は撮り忘れました)

フランス製釘留めリードの華やかな外観と音色を持つ楽器ですが、
外観は世界に一つの物となりました。
フランスの楽器は少し高いですが、長く使って行く楽器ですので
お気に入りの1台を作ってみてはいかがでしょうか?
音や機能に関する不具合があっても全て修正し、
保証やその後の修理、調律割り引きもあるので安心して使って行けます。