新品コンサーティーナの整備2015/10/17

コンサーティーナを欲しいという方がいらっしゃいましたので、
新品を仕入れました。
当店ではコンサーティーナを直接メーカーから輸入していないので
代理店から新品を購入しました。



代理店経由でも直輸入でも同じですが、お客様へお渡しする前に
製品のチェックと修正、調律を行っています。
これはアコーディオンもコンサーティーナでも、
アコーディナでも同じようにしています。
という訳で、蓋を開けました。



新品にはよくありますが、製造時に出た加工屑が
内部に残っています。
蛇腹の角の革の所に木の削りカスがあります。
こういう小さなゴミは演奏中にリードに挟まって
発音しなくなる事があるので見つけ次第取り除きます。



他にも、蛇腹の角部分には物が挟まっていました。
こちらはリードに貼ってある薄いフィルム状の樹脂部品の先端を
切り落とした先の部分です。
楽器製造時に出るゴミです。
薄くて細いのでリードに挟まるトラブルが起きやすいです。



リードの横にも木屑があります。



先ほど蛇腹の角にあったのと同じ、フィルム部品の先端が
リード付近にも落ちていました。



リードにも異物がありました。
先ほどから先端部分が落ちてる薄い樹脂フィルムの部品である
リードバルブを持ち上げるとリードフレームに小さな黄色い
塊がありました。
恐らく、リードを留めているロウのカケラです。
これは既に発音に影響していると思います。



リードを留めているロウ接着が不十分な箇所があります。
ロウが不足していてリードフレームと木枠の境目が見えます。
ここから僅かに空気が漏れますし、リードの振動が
きちんと本体に伝わらなくなりますので補修します。



こちらもロウ留め不良で穴が空いています。



このリード(一番上)では4辺ある外周のうちの1辺で、
全くロウ留め施工がされていません。
驚く方もいるかも知れませんが、高級なアコーディオンでも
こういう事は時々あります。
部品数が多く、人が手作りしている物なので
少なからずエラーが存在します。



薄いフィルム状のリードバルブという部品を開いてみると、
先端部分しか開きません。
これでは音がきちんと出ません。



一つ手前の正常なリードで同じ事をするとこんな風に
自然なカーブでリードバルブが開きます。
手前の写真の不良箇所はロウなどの粘着物質による
リードフレームの汚染でバルブが貼り付いているものと思います。



こちらもリードバルブの開きが不良です。
中央部を持ち上げても先端部が開きません。
先ほどの例とは貼り付いている位置が違います。



リードは表裏逆向きに同じパーツが付いて一対になっています。
内側にもリードバルブがあります。
表側からリードを押し下げると、通常はリードバルブも
リードに押されて開きますが、この部分では
片側しか開かずに傾いています。



リードを外してみると木枠の内側が狭く、
リードバルブが壁に当たって開けない状態です。
現状で既に発音不良として症状が出ています。



同じく、内側のリードバルブの開きがうまく行っていない箇所です。
これはサイドではなくて先端が木枠に触れているようです。


リードを外してみるとリードバルブが開いています。
本来なら、外したリードにピッタリとくっついてくる筈ですが、
先端が木枠に当たっている為、リードから離れて開いています。



リードを完全に外して横向きにしたところです。
リードバルブが長過ぎて木枠に接触していたので
バルブに癖がついて曲がっています。



この楽器は音の数が多いのでリードも沢山入っています。
狭いコンサーティーナの内部に多数のリードを入れる為に
この楽器では2階建て構造になっています。
中央のロックを外すと跳ね橋のように開いて
下部のリードが出てきます。



リードの上段を開いて行くと、細長い木屑が出てきました。

このような細かい不具合を取り除いた後に、全体の調律を
行なって、ようやく楽器をお渡しする事ができます。
この楽器は高級な物ではありませんがイタリア製です。
代理店の検品をパスして保障が付いている物です。
通常の楽器店ではそのまま陳列されているでしょう。
この楽器に限らず、100万円以上するような有名ブランドでも
同じように不良箇所が点在するので、必ず点検、修正を行い、
調律を行って出荷しています。
この作業には時間と労力と経験が必要です。
手作りの楽器は家電と違い、どこで買っても同じではありません。


コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
迷惑書込み対策です。
下欄に楽器の名前をカタカナ(全角)で入力下さい。
当店は何の専門店でしょうか?

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://accordion.asablo.jp/blog/2015/10/17/8059762/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。