リード落ち ― 2015/10/21
ベース側のリードが取れて落ちてしまった楽器の修理を承りました。
愛知県には少ないプロ奏者の方からのご依頼です。

楽器を開けました。
ベース側の一番大きなリードが6個、木枠から外れて無くなっています。
ベースの一番低音のリードは大きくて重いので、少しの衝撃でも
リードが落ちてしまう事があります。

外れたリードは既に回収されていました。
楽譜に包んであるところがプロ奏者っぽいですね..

よく調べてみると、他の小さなリードもロウにヒビが入っていて
取れそうになっている所がありました。
ロウそのものに劣化は無さそうなので、単純に強い衝撃によるものでしょう。

他にもリードがずれている箇所がありました。
これは外れたリードが悪さをしたのだと思います。
なぜか全てのダメージは左手側に限定されていました。

リードが取れたのは問題ですが、リードを留めている
ロウの破片が飛散している事も問題です。
蛇腹の間に破片が挟まっています。
きちんと除去しておかないと後で出てきてリードに挟まったり
するなどトラブルの元になります。

空気ボタンのバルブの所にもロウの破片が落ちています。
空気ボタンの操作でバルブに挟まれば空気漏れの原因になりますし、
通り抜ければベースメカニックやバルブに挟まって問題が出ます。
衝撃などでリードが外れた事が分かった場合、
できるだけ楽器の操作はしないようにした方が良いでしょう。
別のトラブルを作る原因になりますので。
鍵盤取り付け部破損 ― 2015/10/21
HOHNERブランドで売られている低価格なアコーディオンの修理を承りました。
中国生産品ですが調整は比較的きちんとされています。
軽量で低価格、どこの楽器店でも買えるので、
初心者を中心として人気がある物です。

今回の不具合は鍵盤が取れてしまうことです。
原因は鍵盤を留めている金具が折れてしまった事です。
上の写真の下部に3つ並んでいる金具がそれぞれ一つの鍵盤に対応しています。
これが鍵盤の数だけありますが、3つ写っている一番右の箇所は折れています。
右上に折れた金具が置いてあります。
穴の空いた幅5,6ミリ、厚さ1、2ミリ程度の細い物です。
材質はアルミニウムです。
一枚のアルミ板を切り抜いて一本の長い台座に
全ての鍵盤分の金具を作り込み、90度曲げて垂直に立てています。
ご依頼の方の話では、メーカーでは修理不能という事です。
関東で修理も試みたとの事。

折れた金具の拡大写真です。
左が正常な金具で右の黒くなっている所は折れた箇所です。
黒く焦げているのは恐らく、半田付けで接着しようとしたのでしょうか?
残念ながらアルミニウムは半田付けはできませんし、
溶接も難しい材料です。
部品が一つずつになっていないので新しい物と交換する事もできません。
これが修理不能の理由でしょう。
力の掛かる箇所ですので、アルミの細い部品という所に問題があります。
この楽器は軽いので人気があると思いますが、変に軽かったり、
小さくできている物は悪い影響が出る場合もあります。
アコーディオンが現在の重さ、大きさで落ち着いているのは
それなりに理由があっての事ですので。

色々と考えて修理できました。
元通り、鍵盤が並び、操作にも問題ありません。
諦めなければ修理は可能です。
真価は耐久性が確認できてからと思います。
どうやってやったのかは内緒です。
ネットに修理方法を載せたり、無料で教えたりという事をする方もいますが、
それは簡単に善い人になれますし、凄い人になれるからではないでしょうか?
情報提供で将来の人材を育成、と思うのかも知れませんが、
素人修理人を育てるだけで逆効果です。
本業で行い、きちんと対価を得る事で責任が生じ、良い仕事ができます。
それできちんと食べて行けることを証明できれば、本当の後継人が育つと
私は考えます。
聞きかじりの修理人で副業的に行なう人が増えれば、
本業とする人は価格で苦戦するでしょう。
それが競争社会と思いますが、本来は本業同士で勝負するところです。
考え方は人それぞれなので正解は誰にも分かりませんが、
先々の事まで本気できちんと考えることは必要と思います。
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