ダイアトニックの調律2015/11/10

ダイアトニックアコーディオンの調律を承りました。



ダイアトニックは偶にしか修理が来ません。
使い方が限られる楽器なので愛好者が少ないのでしょう。
一般的なアコーディオン(クロマチック)があれば代用できますので、
敢えてダイアトニックを使う人は少数派という事でしょうか。



調律が悪いという事で中を開けましたが、ご覧の通りです。
薄い皮製のリードバルブが大きく反っている箇所が幾つかあります。
一番外の列だけですので、蛇腹に干渉したのでしょう。
これは位置関係や寸法の設計ミスか、リードバルブの
選定が悪い事が原因と思います。

リードの木枠にはペンで書いた文字と鉛筆で書いた文字があります。
ペン書きの方は製造時の物でしょう。
筆跡がヨーロピアンです。
鉛筆の方は、直下のリードの音名が書いてあります。
これは日本で書かれた物と思います。
輸入された後に調律をした事があるという事でしょう。



リードの木枠の位置を固定させる為の小さな木製のストッパーが
ずれた位置で接着されています。
これは製造時からと思いますので、作りが荒いです。
フランス製ですが、単価が安い小型アコーディオンですので、
丁寧な仕上げは望めないというところでしょうか。



リードを留めているロウにヒビ割れがあります。
楽器は古くなく、ロウの劣化はありませんので、
強い衝撃によるものと思います。
楽器を落としたのかも知れません。



リードの木枠の下部にある空気が出入りする穴の部分ですが、
貼ってあるスウェードのパッキンの施工が雑です。
僅かですが空気漏れが起きると思います。



リードの木枠と楽器本体の空気穴にズレがあります。
開口が狭くなりますが音は出ます。
こういうアコーディオンは高級品でも常です。



ベース側のリードの木枠を取ると、下に紙片が..
何かと思いましたが、これは意図的に音を止めているようです。
この楽器はmaj の和音しか出ないので、
短調の曲を弾く事もできる様に3度の音を止めて、
2和音にしているものと思われます。



リードの木枠を固定する金具のベースになる部分ですが、
寸法が悪く、固定がきちんとできていませんでした。
仕方がないので削っています。



小さなダイアトニックアコーディオンですが、きちんと調律する為には
小さな不具合を全て取り除く必要があります。
調律と言っても、音程を合わせるだけでは意味がありません。
早くて安い調律はそれなりです。