Maugeinの整備 ― 2022/01/31
新品で入荷したフランスMaugeinの販売前整備をしています。
右手側のリードを取り出しました。
この楽器は右49音、MMという仕様なのでリードは
49×2×2 で、196 あります。
別途ベース側には72のリードがあるので合計で268になります。
フレンチタイプのボタン式なのでリードは木枠に釘で留められています。
この事によりフレンチタイプ特有の音色が得られています。
リードがロウ留めされていて外観だけフレンチタイプという楽器もあるので
フレンチタイプをお求めの場合、仕様の確認は必須となります。
中を見れば確実に判断できますので不安な場合は販売店で
見せてもらうと良いでしょう。
リードはイタリア製のハンドメイドが使われています。
矢印の所にあるリベットの頭に不規則な打痕があるリードは
ハンドメイドかハンドメイドタイプのどちらかで、平らなものや綺麗なドーム状、
網目のような痕が付いているのは量産品になります。
この楽器は右手49音、MMの小型軽量な楽器ですが
音の妥協はしていないので、ハンドメイドリードの釘留めです。
Maugeinは比較的丁寧な作りで大きな問題はまずありませんが
細かい問題は幾つも内在しています。
これは全てのメーカーにある事です。
有名ブランドでも、プロが使っているブランドでも必ずあります。
当店で扱っている物は問題ナシなどと言うつもりは全くなく、
全ての楽器は新品でも修正、調律作業を必ず行っています。
上の画像はリードを木枠の内側から見たところです。
内側に付いているリードの隙間にバラつきがあるので
漏れている光の幅が違っているのが分ると思います。
一番左のリードは隙間が大きくて光が多く漏れています。
このリードは弱い音の反応が遅いので修正します。
この作業は行わなくても全ての音が鳴りますが均一な発音は望めません。
全ての音が出るというだけで合格にはなりません。(少なくともウチでは)
リードの調整に関しては、実施していないメーカーもあるという事を
イタリアで修理を教わっている時に聞きました。
Maugeinはそういう感じはありませんが修理などで来る楽器で
調整されていない物を見るといつもこの言葉を思い出します。
新品楽器でも大胆な修正を行う時はあります。
これはベースリードですが、派手に削っています。
ベースリードの穴の位置が楽器と僅かにずれていて有効面積が減るので
木枠の修正をしているところです。
僅か数ミリのことなので修正しなくても、普通に音は出て、普通に演奏もできます。
ですが、当店を選んでいただき、高価な楽器を購入される訳ですので
完全な状態の物をお渡ししたいという思いで実施しています。
この作業ですが2020年にも行っています。
この時はイタリアの高級機でした。
高価な高級機でも安価な楽器でも妥協はしたくありません。
楽器に限らずですが、工業製品、特に手作業の部分がある物は
昔から「アタリ」、「ハズレ」があるという事はよく言われています。
当店で販売する楽器は可能な限りの修正と全体の調律を行っています。
これは楽器が持つ性能を100%得られるように、不具合が出ないように、
という目的で行っています。
なので、当店の楽器は全てアタリです..と言いたいところですが、
何となく胡散臭いので、ハズレなしです、と言っておきます。
こちらはベースの左手の手のひらが当たる部分のカバーの内側です。
穴が空いている所に張ってある網ですが、接着してあるものの
何となく心もとないので補強接着します。
何故、ベースの網をわざわざ補強接着するのかというと、
その直下に複雑構造のベースメカニックがあり、
網の一部が剥がれて接触すれば演奏に支障が出るからです。
上の画像はその直下にあるベースメカニックです。
ベースボタンからの動きを直交する金属棒に伝えて
所望の音が出るようにする複雑機構です。
ボタン1つで和音が出るのはこのような機構があるからです。
和音のボタンを押した時に3箇所の突起が直交する金属棒に接触して
3つのバルブが開いて3音鳴るしくみです。
矢印部分は直交する接触点ですが、微妙な調整を手作業で1つずつ行います。
この数はこの楽器の場合、176箇所あります。
176箇所ある交点の僅かな隙間を手作業で調整して組み上げて行きます。
80ベースの楽器で176なので120ベースではもっと大変になります。
網の接着補強を完了しました。
ベース部分の点検なども行い問題がなかったのでこのまま閉じます。
新品の楽器でベースの音や動作に問題がなくても
必ずこのように一度分解して点検を行い、必要があれば修正など行います。
今回のように不具合はなくても予防的な処置を行い、
楽器が安定して長く使って行けるような処置を行う事もあります。
先日、ブログ記事にしましたがこの楽器は中国製ではないので
ベースボタンの部品を受けているのは木です。
楽器の内外の点検、修正を完了した後は全てのリードに対して調律を行います。
これでお渡しできる状態になりますが、
この楽器のように比較的元の状態が良くて、リードの数が少ない物でも
最低3日は掛かる作業になります。
なので休みなく作業を行ったとしても、ひと月に整備できるのは10台までです。
実際には5~10日は掛かる楽器が殆どですし、休みも頂きますので
ひと月にお渡しできる楽器は4、5台が限界です。
もっとも、そんなに楽器が売れる事はないので何も問題ありませんが..
剪定 ― 2022/01/31
1月も終わりで寒い日が続きます。
店先で何年も放置しているミニバラの剪定をしました。
鉢の土を入れ替えていないので剪定しても良い状態にはならないでしょう。
9月はこんな感じでした。
昨年の冬に越冬できずに枯れたと思ったハイビスカスは奇跡の復活で
葉を付けましたが、今年は試しに袋を被せてみました。
春までに枯れずに残るでしょうか..
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