古い楽器の再生82010/04/05

中古楽器の再生作業も大部分が終了し、やっと調律に入る事ができました。


しかし、その調律も大変な作業です。
特にこの楽器は、HMMLのダブルチャンバーですので、
調律するリードが多い事に加え、難しい高音の小さなリードの調律や
出し入れが面倒で、出し入れで音程が大きく変化するチャンバーが
ありますので、より大変な作業になります。
この楽器のリードの数は、
右 41×2×4=328
左 12×2×5=120
という事で、合計、448枚のリードを調整して行く必要があります。
例えばの話ですが、1枚のリードの調律を1分で行っていったとしても、
休憩なしで7時間28分必要です。
ですが、実際には平均1分で仕上げる事など不可能です。


アコーディオンの調律はリードを削って行います。その為、
弦で鳴る楽器の様に音を鳴らしたままで音程を前後に調整する事が
できません。必ず音を一旦止めなければならない。
音を鳴らす→ズレを見る→削る→音を鳴らす..
これを何度も繰り返す必要があります。


チャンバーの付いた楽器が大変なのは、リードが2階立ての様に
なっていて、奥のリードを削るには手前のリードを取ってからしか
アクセスできないからです。また、手前のリードを外したままにすると、
実際に鳴る音と食い違うので、不要でも全てのリードを取り付けて
チェックする必要があります。ボタン式のチャンバだと、3段になっている
物もあるので大変さは更に増します。


調律を行うのはリードを削る..と言えば単純ですが、
その方法には決まりがあり、自己流で行えば、リードの寿命を縮めたり、
発音が悪くなったり、錆の原因を作ったり..色々な害が出ます。


この中古楽器ですが、全体に6セント程、低い状態で調律されて
いました。一般的には、その程度のズレであればズレに合わせて
全体を調律してしまいます。新品の楽器など、大抵、そんな風です。
この楽器は完全レストアを目指すので、もちろんきちんとした基準に
合わせますが、殆ど全てのリードを高くしなければならないので、
一番大変なタイプの調律です。ちなみに、A=442Hzで調整します。
日本に輸入されてくるアコーディオンは特にオーダーしなければ、
442Hzで調整されてきます。ヨーロッパで購入した楽器や、
個人輸入した中古などは、440Hzになっている場合がありますので、
ピアノや他のアコーディオンと合奏する方は調律し直す方が良いでしょう。


最終的な調律の確認は、楽器を使える状態に戻してみないと
正しい音程を示さないリードが幾つか出てきます。
なので、分解した楽器を元に戻し、蛇腹も取り付けて、
実際に弾く時の状態でチェックします。この時、ズレがあれば
また分解して..という途方も無い作業が続くのです。
アコーディオンの調律代金が高いのは作業時間が多くかかるからです。
別な言い方をすると、調律が妙に安かったり短い期間で終了するのは、
何かがおかしいと言えます。


アコーディオンはピアノの様に常に張力がかかっている訳ではないので
一定期間で全ての音に狂いが出る事はありません。
一般的な使用であれば3年に一回の調律でも十分だと言えます。
もちろん、プロの方や音に厳しい方は別です。
ピアノの調律は毎年1、2回行うので、年間当たりの調律代は
ピアノと大差ないと考えれば多少、気が楽でしょうか..

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