リピート2010/07/07

以前に、43年前の楽器の修復の事を書きました。
http://accordion.asablo.jp/blog/2010/05/01/5092670


それは楽器店経由の修理でしたので、依頼主様は存じないのですが、
同じ方から別の楽器の修理の依頼を受ける事になりました。
取次ぎ店様からは、以前の修理に大変満足しているので、
もう一度、お願いしたいとの事でした。
これは修理業をしている者にとって、本当に嬉しい事です。


前回の楽器と同じ様に、側面に日付が貼ってあります。
S52.3 とありますので、前回の楽器より10年若いですが、
33年前の楽器という事になります。


ベースのスイッチの上に、赤い粉があります。
これは、嫌な予感..


カバーを開けると..
やはり、思ったとおり、バルブのフェルトが酷く虫に食われています。
フェルトが赤いので、粉状になって楽器のあらゆる部分に付着しています。


楽器の中を開けてみると..
蛇腹の内側に、虫の抜け殻が多数見られました。


という訳で、前回と同様、全てのバルブのフェルトと皮を交換する事になりました。
しかし、前回と違い今回はチャンバー付きですので、手間は3倍以上。
右側のバルブの数は2倍ですが、手間は3倍以上になります。
チャンバーの付いた楽器の値段が高いのは調整と調律が大変だからです。



外したバルブの側面です。
赤いフェルト部分が虫に食われて穴だらけです。


鍵盤を全て取り去った後のバルブが当たっている場所の写真ですが、
やはり、フェルトの粉や虫の抜け殻などが散乱しています。


外した白鍵です。

汚れているので、外しついでに綺麗に磨きました。
鍵盤が楽器に付いている状態では側面や奥の部分は綺麗にできませんので。

この後は、古いフェルトと皮をバルブから剥がし、新しい物を取り付け、
鍵盤にバルブを戻した後に、楽器へ取り付け、空気漏れが出ない様に
きちんと調整します。これで鍵盤の高さも揃います。
無論、右が終われば左もバルブ交換です。全部やらないと意味を成しません。

バルブのフェルトが虫に食われていなくても、30年経過した楽器はバルブの交換時期です。
古くなると鍵盤を離した際に、パチ、パチと、バルブが当たる音が大きくなってきますし、
空気漏れが出る様になってきます。20年以上経過したあたりから要注意です。
見た目の変化としては、鍵盤の高さが微妙に不揃いになってきます。
押した時の鍵盤のストロークも深くなります。バルブのフェルトが縮む事による影響です。
完全整備済みと、表示されている中古楽器でも、バルブ交換がしてある事は稀です。
「完全調整」の基準は規定も無く曖昧なのです。古い楽器を購入する場合は要注意。
後でバルブ交換を行うと出費が大きくなりますし、そのまま使うと色々な害があります。
本当の意味で完全調整された古い楽器は安くできません。
大変な時間と労力が必要ですので。ある意味、新品を組み立てるより手間ですから。
それでも、古い楽器には現代の楽器には無い魅力があります。

コメント

_ megudorian ― 2010/07/28 10:51

実は30数年前にアコーデオンの中古を買って少し練習していましたが、このブログを見て、私のアコーデオンどうなっているか心配でさっそく見てみようと思いました。古いものなのでたぶん使えなくなっているかもしれませんが・・・。確認し他後に

_ Cookie(店主) ― 2010/07/29 14:26

megudorian 様、こんにちは。コメントありがとうございます。
30数年前に買った中古という事ですので、大規模なメンテナンスが必要な時期に来ていると思います。
特に、使わないで放置されていた楽器は傷みが激しい場合があります。
リードに錆が出ている場合は、バルブ交換などの修理も含めると、余程、高価な楽器でない限り、金額的に再生するのは厳しいかと思います。
古い中古楽器を購入する際は、元が高価な楽器を選ぶ事が重要です。
安い楽器では、大規模なメンテナンスをするなら、買い替えた方が良いという事になってしまいますので。

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