ビンテージの再生22012/02/17

70年以上前のアコーディオンのレストアを行っています。
以前の記事はこちらです。
http://accordion.asablo.jp/blog/2012/01/09/6374900

http://accordion.asablo.jp/blog/2012/01/17/6395506


以前の記事で頂いたコメントにより、1945年に修復を受けたという事が
分かった楽器ですが、製造は更に古く80~90歳くらいの楽器だと思います。
今日からは鍵盤の修復を行います。


鍵盤は高さがバラバラになっています。
汚れもありますね。

鍵盤の深さは9ミリ程度あり、明らかに深すぎます。
バルブのフェルトや皮の劣化、鍵盤下のフェルトの劣化など考えられますが、
この楽器の場合、以前の修復で意図的に深くした可能性もあります。

鍵盤を外さなくては状態も分かりませんし作業もできません。
という訳で、鍵盤の軸を抜きます。
が、
なんと真鍮製で細い。
近年の楽器は硬い鋼でできており、直径もこれより太いので安心ですが、
柔らかい真鍮製で細いというかなり恐ろしい作業です。
しかも最後に抜いたのは何十年も前という事で、固着している可能性もあります。
で、
抜いてみようとすると..やはり...
ビクとも動かず、しかも先端をねじると回らずに素材が変形してネジれます。
これは怖い!
切れたらおしまい、万事休す。

色々考え、色々試し、何とか引き抜く事に成功しました。
良かった..

黒鍵を外すと埃が沢山見えてきました。

鍵盤下の木には虫の抜け殻が..
これはフェルトの羊毛を食べるやつです。
衣類に穴を空けるあの虫です。

鍵盤を外すとバネ部分に人毛発見。
金髪です。(最近、あまりこう言わなくなったけど。)
やっぱりドイツ人の物でしょうか..

無事に全ての鍵盤を外しました。
凄い埃の堆積です。
さすが、70年分。
白鍵下に当たる緑色のフェルトも劣化しているので交換です。

黒鍵下のフェルトも無くなっています。
虫の仕業か、演奏のし過ぎか?

上の写真のフェルト部分が当たる楽器側の方ですが、応急的な処置がしてあります。
これは1945年の再生より後に行われた様な気がします。
再生というより素人の補修という感じですので。

バルブの方ですが、通常、ロウで固定してある部分は、
硬くて脆い樹脂の様な物で接着されています。
強く引っ張るとボロボロに割れて白くなります。
多分、膠(にかわ)でしょう。
バルブの木のボディーは再利用しますので、綺麗な状態にするのが大変です。
軸の方も綺麗にする必要がありますし、41個もあるので。

という訳で、地道な作業に入りました。

コメント

_ SilveerAge ― 2012/05/02 07:37

このタイプそっくりな木製キーバルブボディに関わったことありますが、白っぽいあれは膠なんですか。
それと、
>キーストローク9mmは明らかに深すぎ・・・この楽器の場合、以前の修復で意図的に深くした可能性・・・
とされていますが、逆に当時のものは、新造時からみなこれくらいだったということは考えられないでしょうか。深いストロークのものを幾つもみるものであくまでも自分の勝手な想像でしかありませんが。

_ Cookie(店主) ― 2012/05/02 23:24

SilveerAge様、こんにちは。
コメント、ありがとうございます。

この楽器の製造年代で、接着剤といえば膠だと思います。
ニカワは、ゼラチンのイメージがあるので弾力のある固形物と思う人もいるかも知れませんが、乾燥した膠は硬質で力をかけて破壊すると白い粉状に割れます。
その後のアコーディオンのバルブにはロウで固定する物とゴム状の樹脂で固定する方法が主流となりましたが、膠も高温で溶融し、冷却で固化するので当時としては使い易い物だったと思います。
溶融温度がロウより高いので面倒ですが。

鍵盤の深さですが、確かに昔は今ほど浅くなかったかも知れません。
当時の人間では無いので本当のところは分かりませんが。

今、製造されている楽器は概ね、高級品は浅く、普及期は深い傾向があります。
また、イタリア製よりもドイツ製の方が少し深い印象があります。
この楽器は古い上にHOHNERなので、鍵盤は元々深い物だった可能性は高いですね。
ですが9mmはさすがに深過ぎてこのストロークを再現して修理する訳には行きません。
演奏すると指が鍵盤の角に当たり弾き難いですし、グリッサンドなどとてもできない状態です。

深くなっている原因は、バルブのフェルトのヘタリもありますが、この楽器のフェルトは非常に薄いのでヘタリ量も僅かです。それより、鍵盤下のフェルトのヘタリの影響が大きいようです。
加えて、元々深い楽器だったのでしょう。

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