紅白修理2014/04/08

鍵盤が紅白になっている古いアコーディオンの修理を承りました。
1ヶ月前にブログにアップした物です。
http://accordion.asablo.jp/blog/2014/03/03/7398983



小さなボディーにぎっしりと並んだ紅白の鍵盤はフルサイズと同じ41鍵盤です。
これはグリルカバーを外したところですが、
ちょっと詳しい人なら何か普通と違う事に気付く筈です。
さて何でしょう?

そう、バルブが3列になっているところです。
ボタン式では普通ですが鍵盤式は殆どの場合、バルブは2列です。
この楽器はコンパクトなボディに41鍵盤を入れる為に3列にしてスペースを縮小しています。
ちなみに、手前の左寄りにある細長い部品は鍵盤の根元にあるバネを
取り外したり、元に戻す為のスペシャルツールです。
これを使っても結構難しい作業ですが..


鍵盤の幅は14mm程度しかありません。
通常の鍵盤は19.5mm程度の幅があります。
細いタイプでも17.5mm程度ですので、この鍵盤は超細鍵盤という事になります。
最近はこのタイプは作られていないと思います。
何故か、このタイプの古い楽器は黒鍵が赤とか青で、リードセットが2列のMLが多いです。
鍵盤はできれば17.5mm以上の物が使い易いと思います。
目的にもよりますが、2列リードでもMLよりMMの方が使い道が多くて良いと思います。
敢えて選ぶのであれば良いですが、よく分からない初心者の方は
このような仕様は手を出さない方が良いでしょう。

ベースボタンに異常がありましたが修理して元に戻りました。
ちょっと不思議な配列ですが120ベースです。
両端のボタンはベース2列しか無かったり、7thとdimしかない列もありますので、
どうせダミーかと思いきや、きちんと鳴るので驚きです。


ボディーの幅は驚きの33.5cm!
通常の41鍵盤、120ベースは48cm程度です。
37鍵盤、96ベースの楽器でも44cm程度なので驚異的な小型サイズです。


ベースメカニックは隙間無く配置されています。
先ほども書きましたが、全てのボタンが機能していますので、
ギリギリまでスペースを使っています。
幸い、今回の不具合ではメカニックをバラバラに分解する必要はありませんでしたが、
この楽器のベースのオーバーホールは困難な作業になると思います。

この楽器は、コンパクトサイズにフルサイズの音域が欲しいという
要望に応えようとしたというより、メーカーが限界に挑戦する為に作ったのではないか?
と、そんな気さえしてきます。


修理は調律も終えて最終段階ですが、鍵盤に不具合が幾つかあります。
一番の問題は戻らずに音が出たままになる箇所です。
その他、白鍵を強く押すと黒鍵(赤鍵?)が下がって音が混ざる場所もあります。
この写真はその部分です。
白鍵盤を一つ外してあるので異常個所の側面が見えます。
これは鍵盤を押していない状態です。


こちらは同じ場所の写真ですが、異常個所の白鍵を深く押したところです。
白鍵の段になっているところの下部と赤鍵の先に出ている金属部分が接触しています。
その為、深く押すと和音になります。
通常使用で、この部分の部品の変形はしないと思います。
ですが、製造後に音が混ざる異常は出ていない筈です。
恐らく、鍵盤の先にあるバルブのフェルトと皮が経年劣化で縮み、
結果として鍵盤のストロークが長くなった事による干渉でしょう。
鍵盤の下にあるストッパーの役割をするフェルトが縮んでいるのも一因でしょう。


これが鍵盤のバルブです。
茶色のところが皮で、白いところがフェルトです。
本来ならこの部分も交換時期ですが、費用が掛かるので
今回は交換せずに対処しました。
ここが古くなると鍵盤が深くなる他、鍵盤を離した際の音が大きくなります。
鍵盤の高さにバラツキが出たり、空気漏れが起こる場合もあります。
流通している古い楽器では大抵交換されていませんので注意が必要です。
後に交換する場合はかなりの出費になります。
難しい作業なので下手にやると空気漏れが増えて余計に状態を悪くする事もあります。
古い楽器には色々なリスクがあります。


本体裏面ですが、蛇腹と結合している部分のピンが何か変です。


取り外すと、本来の部品でない物が付いていました。
左が正しい物で、右は直径の似たネジです。


細かい不具合を取り除き、調律を行い、後は出荷するだけです。
古い楽器ですので、完全な修復できていませんが
取り敢えず、使える状態にはなりました。