ベースボタン戻し2014/09/13

ベースボタンがバラバラになってしまった楽器の修理を承りました。
楽器は120ベースの中国製の古い物です。



ご覧の通り、ベースボタンが引っ込んでしまっています。
引っ込んでいるのはベースの2列で、その下の maj、minボタンは
見た感じ問題なく、7thとdimのボタンは引っ込んでいるのではなく、
付いていません。



一見、大丈夫そうに見えた maj、minボタンも突き出している
長さがバラバラです。



無くなっている 7thとdimのボタンですが..
ご覧の通り、外れて纏められています。
つまり、元の位置が分からなくなっています!

ベースボタンに何か異常があったらしく、それを自分で直そうとして
分解して戻せなくなったとのことです。
正確には、持ち主でない方がやってしまったとの事です。



ガムテープで補修してある箇所もあります。
直せなかったので、仮止めしたのでしょうか。



ボタンのエンド部分にあるクッションが無い箇所もあります。
これは元からかも知れません。



取り敢えず、和音のボタンは全て外しました。
ベースボタンは入っていますが、凸凹があります。
付いているボタンも位置が信用できないので一旦外して、
調整と動作確認が必要です。
全部修理した後に位置が違う事に気づくと最悪ですので。



ベースボタンは抜き取りが難しい楽器があります。
この楽器も容易に取れないタイプで、それを無理に取り外した為、
細いアルミニウムでできたボタンは曲がってしまっています。
こうなると、単純に戻すだけでは済みません。



更に恐ろしい事に、ボタンと直行するベースメカニックの
金属部品に曲がりが大発生しています。
本来は垂直に伸びて、各列ごとに直線状に並んでいる物です。
この画像、同業者が見たら(あまりいませんが..)かなりショックと思います。
私も一瞬、ダメかも..と思いました。



分解する際に戻す時の事を考えて書いたと見られるマーキングがあります。
細かい部品にはマークできませんし、精度が必要なので
マーキングでの戻しは有効ではありません。



古い楽器ですので、バルブの皮とフェルトは交換時期に来ています。
ですが、今は後回しというところです。
ここまで分解しますし、調整も行うので本当は同時に
交換作業する方がトータルの費用としては安く済みます。



ベースボタンを戻しました。
高さも揃っています。



majとminのボタンも戻しました。
書いたら簡単ですが、大変苦労しました。



本来、一直線に並んでいる筈のベースメカニックのピンですが、
前後(左右)に大きく振れています。
ピンセットで左側に寄せている所だけ見ても手前の4本以降の
ピンは位置がバラバラです。
実際は、手前の4本もこれ以上の精度で並んでいる必要があります。



これは別の楽器のベースメカニックです。
これが正常な状態です。
手前の画像と比べると全然違います。
黄色い部分は高級機に付いている消音と滑らかさを出す為の物です。



ボタン側の歪もかなりあります。
ボタン側とベースメカニック側の歪を取り、正しい位置に調整しながら
ボタンを組み付ける必要があります。
今回はボタンの元に位置が分からなくなっている為、
ボタンの位置の検証も必要です。



という事で、3日間かけてようやく作業が完了しました。
ベースメカニックは絶対に自分で分解しないようにしましょう。
仮に元に戻せたとしても、微妙な調整がずれて空気漏れを起こしたり、
ボタンの遊びが増えてしまうことがあります。

アコーディオンは複雑な作りであるだけではなく、
精密に調整されている楽器ですので、ベースメカニックに限らず、
自分で分解するのは止めておいたほうが良いです。
どうしてもという方は不要な楽器で試しましょう。

自分で修理してうまく行ったように見えても、細かい部分で以前と違う
セッティングになっている場合があります。
その影響は小さい場合もあるので気づかないかも知れませんが、
分かる人が使えば気になります。
小さな影響も知らずに使えば、ずっと「分かる」人にはなれないかも知れません。



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