日本製ビンテージ22020/01/26

70年程度以前の日本製アコーディオンの修理を承りました。

修理は昨年の年末から開始しました。
最初にリード周りの修復から行いました。



これは元の状態の右手側のリードです。
皮製のリードバルブは古くなり硬化と反りが出ています。
リードには錆びが出ていて、リードを木枠に留めているロウも劣化して
ひび割れが起きています。
このままでは楽器として使えないので木枠からリードを取り外し、
古いロウと錆びを除去した後に新しいリードバルブを貼り付け
木枠に戻してロウで留める作業が必要です。



リードバルブを剥がしたところです。
錆びはそれなりに出ていますがこの程度であれば修復可能です。
この楽器はかなり古い物ですがリードはスチール製で
リードフレームはアルミニウムなので当時としては高級な楽器と思います。



リードを全て取り外し古いロウを取り去ったところです。
まだ錆びは残っています。
この楽器は34鍵盤、リードセットMM、ベースは5列リードです。
右手のリードは34×2×2=136 のリードがあります。
34鍵盤でMMの2セットリードですが更に2倍して136本となります。

リードは一方からの空気の流れでしか発音しないので同じ音程に
表裏で取り付け、1対として使います。
蛇腹の開閉で空気の流れが逆になるので表裏1対必要になります。
表裏で音程を変えるとハーモニカやダイアトニックアコーディオンのように
1つの穴(ボタン)で2音程出せる楽器になりますが調性に制限が出ます。

ベースは12×2×5=120 です。
1オクターブ、12音程で表裏で2倍、5列リードなので5倍で120本です。
この楽器には合計、256本のリードが入っている訳です。
その全ての錆びを落とし、リードバルブを張り替え、木枠に再接着します。
調律も256本のリード全てで行います。
リードだけでこのような状況ですので、
アコーディオンが何故高価なのかが理解できると思います。



リードのフレームには音程とTOMBOの刻印がありました。
当時はリードも内製していたのでしょう。
現在、日本ではリードを生産していませんしアコーディオン自体、生産していません。
このオリジナルリードは貴重品ですね。

ちなみに、ヨーロッパでもリードを内製しているメーカーはありません。
リードを専門に作っているメーカーから買って取り付けています。
なので、リードに関しては数社の物を各メーカーが選んで使っています。
現代においてアコーディオンメーカーのオリジナルリードは存在しません。
リードは生産工程が多く、調整も大変なので内製ではコストが見合わない為です。
イタリアに多くあったリードメーカーでさえ統合されて数社となっています。
楽器に内蔵されているリードの刻印を見ればリードメーカーが分かります。
そこに楽器メーカーの名前は無い筈です。
楽器を個人で開ける事は推奨しませんので、修理や調律の機会に
見せてもらうと良いでしょう。



木枠に残った古いロウも綺麗に取り去ります。



錆びを除去したリードです。



これは取り外した古い皮製のリードバルブ。
再利用はできません。



リードを木枠戻してロウ接着を行いリードバルブを貼り付け、
楽器の中に戻した状態です。
これは右側。



こちらはベース側です。
これだけ見たら現在の楽器と変わらないようになりました。
ここまで行うだけでもかなりの時間を要します。
音に関しては調律を除いてここまでで完了です。
後は操作系、バルブ関係の修理です。



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