空気漏れの修理2021/01/16

ボタン式アコーディオンの空気漏れがあるという事で修理をさせていただきました。
空気漏れは、何もボタンや鍵盤を押していない状態で空気が出入りしてしまい、
蛇腹が動かせるような状態を言います。
アコーディオン(蛇腹楽器)にとって、大きな問題となる不具合ですが、
新品の時からある場合もありますので、必ずチェックが必要な項目です。
コンサーティーナやバンドネオンの方が酷い場合がよくあります。


今回は空気ボタンに問題があるということで、ご依頼いただいた方が自身で
修理をしてみたが改善できなかったということです。
空気ボタンがボタンの穴に対して垂直ではない事が原因と思われたらしく、
ボタンを曲げて修正する事を行ったらしいですが直らず、こちらへ来ました。
実際にベースの蓋を開けてみるとそんなにボタンに問題は無さそうです。
修理は原因の特定がとても重要です。
原因を特定しなければ無駄な時間と労力を費やすことになります。


空気ボタンを押して開閉するバルブを点検してみました。
これが空気ボタンのバルブです。
これは閉じた状態。


これは空気ボタンを押してバルブが開いた状態ですが、気になる事を発見。
バルブの側面がベースボタンを支えている土台の脚の部品と接触気味です。
矢印の部分です。


この楽器はフレンチタイプのボタン式なので楽器の幅が狭いです。
ベースの空間も狭く、ベースメカニックで幅いっぱいです。
空気ボタンのある部分はボディのカーブの中でとても手が入らない状態です。
この修理の為にベースメカニックを全て取り出すのは時間もコストも掛かるので
できればやりたくありません。
仕方がないのでバンドの調整ダイヤルの部品を外して
なんとか隙間から修理しました。


修理後です。
少しだけバルブをずらしました。
もう少し大きくずらしたかったのですが、今度は反対側が接触しそうなので
最低限、必要な分だけにしました。
これで空気ボタンの不具合による空気漏れの心配はなくなりましたが、
それよりも別の空気漏れが気になりました。

空気漏れはどこかが改善すると次に弱い場所が目立ってきて
際限なく問題が続くことがあります。
特に古い楽器では完全にする為には費用が掛かり過ぎる事が殆どです。
この楽器は新しいので作成時の問題でしょう。


今回の空気漏れの症状は、蛇腹を開く時は問題なく、蛇腹を閉じる時に大きく漏れます。
この症状は2つの事で問題が大きい事を意味します。

一つは演奏上の問題です。
空気漏れがあると、アクセントが弱くなったり、空気を早く使い切ってしまったり、
演奏上、問題になってきます。
蛇腹の押し引きで漏れ方が違う場合、同じフレーズを同じ音量で弾いても
蛇腹の動く量が押し引きで変わるので困ることになります。

もう一つは修理する上での問題です。
蛇腹の押しで漏れる場合、原因はボタンの操作で開閉するバルブにあります。
これは右手のボタンや鍵盤の数だけあり、それぞれから少しずつ漏れて
合計すると多くの漏れになります。
上の画像は右手のボタンのバルブです。
フレンチボタンなのでバルブが3列になっています。
チャンバーのある楽器では鍵盤やボタンの数の倍のバルブがありますし、
ベース側にも24個のバルブがあります。
これらの全ての漏れの原因を特定して修理する事は大変な時間と労力が必要で、
修理費用も高額になります。
大抵の場合、バルブ1箇所の問題ではなく、右手側だけとか、ベース側だけとか、
或いは両方という事もあります。

今回の場合、調べてみると右手のボタンのバネ圧が全体に弱い事が分かりました。
また、漏れがあるのは右手側が殆どという事も分かりました。
なので取り敢えず、バネ圧の調整を行いました。
これはボタン式の場合、比較的簡単な修理で費用も小さいです。

修理を実施して多少の改善はしましたが、完璧ではありません。
やはり、完全に直すには右のボタンを全て外し、全てのバルブの調整を
して行くしかありません。
今回は取り敢えずこのままお返しする事になりました。