古いEXCELSIOR 2台目 ― 2022/03/18
先日、50年以上前のEXCELSIORを修理しましたが、同じような問題が出ている50年程度以前のEXCELSIORの修理が連続で来ました。依頼された方はそれぞで違う人です。
EXCELCIORのロゴが細い文字体の物なので50年程度は経過していると思います。
今回の物はMMLで37鍵盤です。
主な症状は、調律のずれ、鍵盤の戻り不良、鍵盤操作音の増大、空気漏れなどです。
鍵盤周りの症状が多い印象です。
黒鍵を押すと先端が白鍵盤より低くなる箇所が多くあります。また、鍵盤を押しきるとコツンという底付き音が大きく出ます。黒鍵下にあるフェルトのストッパーが取れているか虫食いで無くなっている可能性が高いです。
白鍵の先端の下にあるフェルトのストッパーは虫食いでボロボロになっています。
白鍵の一つはとても高くなっています。
恐らく、ベルトに引っ掛けたりして鍵盤に逆向きの力が掛かったのでしょう。
鍵盤は逆向きの力にはとても弱いので注意が必要です。
グリルカバーを外すとやはり埃が溜まっています。
鍵盤のバルブのフェルトは虫食いの跡があります。
幸い、虫食い箇所は少なく、バルブに問題が出るほどではありません。
バルブの間に白いフェルトの部品を発見しました。
これは恐らく黒鍵の下に付いているストッパーです。
これが無くなっていると黒鍵を押し切った時に大きな音が出ます。
鍵盤を離した時にバルブが閉じる音もかなり大きくなっています。これはバルブに貼ってある革とフェルトが経年劣化で固くなる為です。30年程度で目立つようになってきて40年以上ではかなり大きな音になります。
この楽器では数箇所、特に大きな音が出る白鍵盤があります。該当箇所のバルブを見るとバルブの下のフェルトがなく、革が2、3枚重ねて貼ってある部分でした。(赤矢印部分)
フェルトが無いのでクッションが弱く、閉じる音が他の箇所より大きくなっています。
フェルトが無いのは最初からで、これは黒鍵のバルブがある列に白鍵盤のバルブがある箇所だけそうなっています。鍵盤のバルブは2列になっていて手前側は白鍵盤、奥は黒鍵となっていますが、楽器を小さく作るために数箇所だけ黒鍵の列に白鍵盤のバルブが来ている所があります。この部分は軸の位置の関係でバルブ開度が狭くなるので、できるだけバルブ開度が広くなるようにフェルトを無くしています。
右手リードです。木枠に大きく1、2、3とペン書きしてありますので、プロではない方が触った可能性があります。プロの修理ではこのような事はしませんので。
リードに貼ってある革製のリードバルブは経年劣化で反りと硬化がありますので交換時期です。全数交換して調律をする必要があります。
反ったリードバルブですが一部に三角形の革が貼ってあります。これは素人修理です。やはり、木枠のペン書きで感じた事は事実でした。劣化した革に幾ら上から貼り足しても元のようにはなりません。仮に反りを修理できても開きが悪くなれば音は弱くなりますし、調律も変化します。
他にも素人修理の跡が見られます。
右手リードの高音部にリードのロウ留めを直した跡があります。プロの業には見えません。
別のリード列も高音部にロウ補修の跡があります。
リードの木枠を外すとバルブに異常がある箇所を発見しました。
バルブに貼ってある革が取れてなくなっています。(白いところ)
革が取れてなくなっているのでその下にある白いフェルトが見えています。空気漏れが多い原因はこれでしょうか。フェルトは空気を止められませんので。
その隣の木が見えているバルブは異常ではありません。先述の黒鍵側の列にある白鍵のバルブです。黒鍵側にある白鍵バルブは開度が小さいので貼ってある革の真ん中をくりぬいて少しでも空気が通りやすくしています。どちらにしてもこの部分は閉じる音が大きいので革を新しくする必要があります。革が無くなっている所も新しい革を貼る必要があります。
革が剥がれている部分のバルブを表から見るとリードのロウ留め補修がされている所と同じようなロウで補修されています。通常はこのような事をしませんので何か問題がありそうです。
ベース側のリードです。 ここにも素人修理の跡が見られます。
上段のリードの一つにリードバルブの上に金属バネが貼ってありますが、貼ってあるのはここだけです。貼ってあるバネも太くて短く、発音に支障が出そうです。下段の長いリードにはバネが貼ってありますがもっと細くて長いです。
ベースストラップは経年で硬化しています。恐らく、新品の時から一度も交換していないと思います。この部分は切れる事は滅多にありませんが硬くなって操作感が悪くなったり、手の甲が痛くなるので適当な時期に交換する部品です。
空気ボタンが傾いています。これ以上傾くと押したまま戻らなくなりそうですので修理が必要です。
古い楽器故の問題と、素人修理による問題の2つがある感じですがきちんと修理すれば本来の音が戻って来るでしょう。
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