バンドネオンの空気漏れ2022/03/24

バンドネオンの修理を承りました。
今回の不具合は空気漏れです。
バンドネオンが修理に来る場合、古い物が多いので特に指摘がない場合でも
空気漏れが多い楽器のときが多いです。
同じ様にコンサーティーナでも空気漏れがよくありますが、これは古い楽器だから
という場合と、新品の時からダメな物の場合の両方があります。



楽器を点検してみるとボタン操作で開閉するバルブの位置ずれによる空気漏れが見つかりました。
矢印部分はバルブがずれていて端から下の穴が見えています。



分かりにくいですがボタンの下にあるバルブでもずれがあります。
ここはボタンが邪魔をするので修理が大変です。



過去の修理に問題がある箇所もあります。
バルブとボタンからのアームを繫ぐ箇所には革が入れてあり革が自由に変形する事で
バルブが楽器の面と並行を保つ調整をしていますが、この部分を接着して固めてしまっており、バルブが自由に動けなくなり並行が維持できずに空気漏れしています。
この楽器では一部のバルブに接着が見られます。



同じ楽器のバルブとアームが接続する正常部分です。
革とバルブ、革とアームは接着されていますがアームとバルブは直接繋がっていません。
本来はこのような状態ですが何か問題があって修理を行った時に接着剤を盛り付けたようです。



空気レバーから延びる針金ですが、これは本体を貫いています。
何度も空気レバーを操作する事で本体の穴が大きくなっており、
この部分からも空気漏れが起きています。
穴の修正が必要ですね。



蛇腹の角の部分に張ってある薄い革の部品に穴が空いています。
内側から見ると外からの光が通って見えています。
蛇腹の角部分の革は演奏による伸縮と経年により穴ができる事があります。
このような場合、1箇所でもあれば他の部分も同様に穴が空く時期に来ていると判断できるので問題箇所を修理しても他の部分に穴ができる可能性が大きくなっています。
この部分は蛇腹の1つの谷部分で4か所あるので総数が大きくなります。
経年が原因の場合、蛇腹自体の寿命と判断して新調する方が良いです。
費用は掛かりますがきちんとした物であればその後40年は使えます。



ボタンとバルブを元に戻すバネに問題がある箇所があります。
右のバネは恐らくオリジナルですが金属疲労でヒビが入っておりバネの戻り力が弱くなっていました。手で曲げてみると折れてしまいました。
バネが弱ければバルブを押さえつける力が弱くなるので空気漏れを起こします。
左のバネはバネの戻り力が弱い個所に付いていた物ですが、過去の修理で交換された手作りの物と思います。
作り方と材料選定が悪いので十分なバネ圧が出ていません。



真ん中のバネは新しく作成した物です。
幾つかのバネを新しく作成した物に交換します。

これらの原因を1つずつ潰して行けば空気漏れは改善しますが空気漏れは多くの原因が重なっている事が多く、1つを直すと次に問題が大きい場所が目立ってくるという事を繰り返し、なかなかスッキリと直すのが難しい修理です。
古い楽器を使い続けるバンドネオンでは仕方がない事ですがアコーディオンやコンサーティーナでは最初からそのような楽器を購入しない事が重要です。
その場合のテスト方法は何もボタン、鍵盤を押さない状態で蛇腹に空気を入れて蛇腹を閉じる事です。

これを楽器が壊れると言って実施させないようにする風潮がありますがそれはありません。楽器の問題が大きく修理が面倒なのでバレないようにする方法として販売店が考えた事なのか?と思う事もありますが、とにかくそれで壊れる事はありません。
壊れると主張する人や文章でその理由、原理が書かれていたり説明できている事は皆無です。もし、蛇腹に穴が空くなどと説明するのであればそれは演奏による圧でも壊れるのでそういう楽器を選ぶべきではありません。

では、なぜ壊れないと言えるのか?というのは簡単で、楽器に多数付いているバルブはバネで押さえられているだけなので楽器の内圧が限界を超えればバネ圧が負けてバルブが開いて空気を逃がすからです。これはボイラーや反応容器に使われる安全弁と同じしくみです。楽器にはそんな安全弁が何十個も付いている訳です。
どんなにパワーのある人が思い切り蛇腹を閉じてもある一定の圧を超えればバルブが開いて空気圧を逃がします。それより低圧で空気が漏れるのであれば演奏による圧力で空気漏れが出てしまうので問題多い楽器と言えます。

アコーディオンの空気漏れは蛇腹を開く方ではなく、閉じる方でテストする事が重要です。
これはバルブを吸い付ける方ではなくて押し開く方向に動くのでバルブのバネ圧、取り付け方、並行度、バルブ材の劣化などの問題を知る事ができるからです。
それらに問題がある場合、演奏に大きく影響しますし、修理費はとても大きくなりますので最初からわかれば選ばなくて済みます。