ボディー割れの修理2022/07/06

2012年に当店で新品で購入していただいたアコーディオンの調律を承りました。
以前にも調律をしているので初回という訳ではありません。
10年経っているので一般的には2、3回の全体調律を実施している場合が多いです。



調律と併せて角部分の割れの修理のご依頼もありました。
これが該当部分ですが、ヒビ割れは表面のセルロイドのみで
内部の木は割れていませんし、空気漏れなどが起きる箇所ではないので
表面的な修理で見積りをしました。



ところが..
楽器の点検中に鍵盤の違和感を感じました。
鍵盤を上から見ると低音から高音にかけて鍵盤が高くなっています。
この症状は大きな問題がある事を示唆します。



懸念される問題箇所を見てみると..やっぱりという感じでした。
鍵盤の付け根付近と本体の合わさる部分に大きな亀裂があります。
ここが割れると鍵盤のバネに押されて周囲の部材が押されて変形し
鍵盤の高さが高くなります。
実際には鍵盤が高くなったのではなくて周囲が下がったという状態です。
大抵の場合、片側だけ割れるので鍵盤高さが音程に伴い傾斜します。
両方割れたら鍵盤が異様に高くなるのですぐに異常に気付きます。



グリルカバーの凹みもあります。
鍵盤の付け根のボディーが割れている事やグリルカバーの凹みからみて
扱いが少し乱暴なのではないかと想像できます。
アコーディオンは重いので楽器が移動している時は大きなエネルギーを持っています。
なのでゆっくり当てたとか、ちょっとぶつけただけという感じでも
大きなダメージを受ける事があります。



この楽器にはご購入いただいた時に内蔵マイクの取り付けを行いました。
マイクの基盤はグリルカバーの内側なのでグリルカバーが凹むと
下にある基盤にも問題が起きます。
グリルカバーを外したところですが、基盤が曲がっているのが分ります。
幸い、テストしてみると問題なく作動しました。
基盤や部品が付いているので変形修正作業が
何も付いていない時より大変になります。



鍵盤部のボディー割れを修理する場合、鍵盤を全て外す必要があります。
鍵盤の下には10年分の埃が堆積しているので外した時は清掃のチャンスです。
細い直線状の毛のようなものが多いので多分、猫か犬が同居しているのでしょう。
こうした動物の毛が楽器内に入ると問題が起きますので
可能であれば楽器と近づけないように配慮し、抜け毛などを吸い込まないように
気をつけている必要があります。
楽器に限らずですが精密機械を扱う店などに動物がいない事は必然です。
家庭では難しい場合もあると思いますが気にしている事は大事です。



鍵盤下の清掃してスッキリしました。



鍵盤を外して清掃を行うと損傷の程度が見えてきます。
楽器の外側に見えていたヒビは内側まで達していました。



グリルカバーを留める為の部品を外して別の角度から内側を見ると
割れがかなり大きいことが分ります。
この部分はアコーディオン本体で一番薄くて弱い部分です。
ただ接着するだけでは再発しますので確実な接着と補強が必要です。
補強はしっかりしたいのですがスペースが少ないので難しい作業になります。
接着と補強を行い完全に固定されるまで次の作業へ入れません。