ネジ式2023/01/18

販売する中古楽器を整備しています。
この楽器ですが、本体と蛇腹を留めているピンがネジになっています。
殆どのアコーディオンでは頭の丸い釘のようなピンが差し込んであり、
外す時は引き抜くだけで、ネジのように回す必要はありません。
この方法はとても早く分解、組み立てができるので、
音の調整の為に何度も分解、組み立てを繰り返す時には手間が省けて便利です。
ですが、たま~に、ネジで留めてある楽器があります。


近年の楽器では殆ど見られませんが、この楽器はネジ方式なので1本外すのに10秒以上は掛かります。
10秒なんて短いと思うかも知れませんが、ピンなら1本1秒です。
アコーディオンには大体、12~14本のピンがあるので、ピン方式なら早ければ30秒で分解が可能です。
ネジ式の場合、分解時間は早くても3分程度は掛かるでしょう。
実際には楽器を傷つけないように気を遣うのでもっと掛かります。
何度も分解と組み立てを繰り返す必要がある場合、これはとても面倒で時間が掛かる作業です。

何故今もこの方式を使っているのか?
何かメリットがあるはずです。
想像の範囲では、固定が確実で不意に外れないという事があると思います。
耐久性の事もあるかも知れません。
ピンの場合、何度も繰り返し抜き差しすると緩くなる事がありますが、ネジなら大丈夫そうです。
ピンは頭が大きく、楽器がから飛び出ているので服などに引っ掛ける問題もありますが
ネジなら平らなのでその心配はありません。
このくらいしか思いつきませんが、他にもあるかも知れません。
謎なのは、古い物は当たり前だったマイナスネジが今の楽器にも使われている事です。
何故かこの部分のネジは現在の物でもマイナスネジの事が多いです。
見た目の事も多少あると思いますが、何度も脱着するのであればプラスネジの方が便利です。
色々と謎の部分がありますが、真相は分かりません。
整備する方からすると、ネジはやめて..と思うだけです。

同じ事で一般的なアコーディオンと比較して苦労するのがコンサーティーナです。
片面、6~8本のマイナスネジで留められている事が多いですが、
アコーディオン以上に、蓋の開閉で調律が変化するので、
作業中の分解回数がとても多くなり、ネジ留めが煩わしく感じます。
まあ、これは仕方のない事ですが、見た目の事を除けば、
できればプラスネジか、六角穴や星形穴のネジにしてほしいところです。

以前、修理した楽器ではピン方式からネジに変えられていた事もありました。
しかも、雌ネジがダメになっていました。


意外な原因2023/01/25

先日、アコーディオンの蛇腹と本体を繋ぎ留めているピンの事を書きました。
今日もその、ピンのお話しです。


新品で販売する為の楽器を整備しています。
リードの修正や位置の調整、内部の清掃など、新品であっても必要な作業が沢山あります。
それらを完了し、最後に調律を行って全ての整備が終わりますが、
最後になって楽器を元通りに組み立て、試奏する時になって問題が出る事があります。
調律がずれる事もありますし、何か異常が出る事もあります。
なので、先日も書いた通り、ピンを抜いて何度も分解と組み立てを繰り返す事になります。

今回は最終確認で本体を蛇腹と合わせてピンで留めて、完成状態としたとき、
左手のスイッチの動きが悪くなっている事が分かりました。
最初は元々悪かったのか、組み立てた事で悪くなったのか分かりませんが、
分解して確認する事で原因が見えてきます。


楽器を分解した状態で機構を確認しましたが、何も問題は起きませんでした。
状況と経験から仮説をたてて検証すると原因が分かります。
このプロセスは自分がサラリーマン時代に研究職をしていた事がとても役にたっています。
今回は本体を組み立て、最後にピンを刺した事で問題が出ると予想しました。
本体を分解したままでピンを刺してみると、
ベースの音の切り替え機構とピンの先端が触れそうな位置に来る事が分かりました。
上の図ではギリギリ接触していません。


スイッチを押して音を切り替えると、組み立てた時と同じ、感触の悪い動作をしました。
そして、ピンの先端が機構に当たっている事が確認できました。
このままでも一応、切り替えはできている感じですが、スイッチの感触が悪いですし、
切り替えも不完全になる事がありそうなので修理します。
原因が分かれば修理は簡単です。
アコーディオンは新品でも色々な不具合を持っているのが普通です。
整備にかける手間と時間の違いにより、同じ楽器でも性能や使い心地に違いが出てきます。


コンサーティーナの調律2023/01/25

コンサーティーナの調律を承りました。


24ボタンの物で、リードはアコーディオンの物を使っています。
リードバルブに数字が記入してありますが、これはボタンとの位置対応でしょうか?
恐らく製造時には書いていなかったと思いますので
後の調律などの時に書かれたのかも知れません。


リードバルブの上に貼ってある細い金属バネの先が突き出ています。
この方法はアコーディオンでは一般的ではありませんが、
きちんと調整されていれば害は無いかも知れません。
これも元々付いていたものかは不明です。


リードの隙間の調整はあまりできていません。
コンサーティーナは大抵そんな感じですが、アコーディオンでもそんな感じです。
新品の時からあまりきちんとしていない部分です。
弱い音の発音が悪い場合、強い音で音が止まるような時は
新品でも全体の調律を行うと良いでしょう。
隙間の調整を行うと調律が変わるので調律とセットで行う事が必須です。
当店では調律費用にリードの調整も含まれています。


リードはネジで固定されています。
ネジの頭は六角穴ですが、インチサイズです。
英語圏で作成された楽器だからでしょうか?
イタリアの楽器ならミリサイズです。


リードの調整の為に取り外しました。
リードの隙間が大きく違います。
右の方はこれでよく発音してるな..というレベルです。


経年でリードバルブに反りが出ています。
これは使っていれば仕方がない事ですので、
定期的な調律を行う事で戻すようにするしかありません。
リードバルブも調整すると調律が変わるので調律とセットで行います。


リードバルブに貼ってある金属バネですが、内側に反っています。
これは経年や使う事でならないので、最初の調整に問題があったという事でしょう。
或いは、製造後にどこかで行った調整が悪かったのかも知れません。


リードに錆が出ています。
この楽器の場合、錆は殆どなく、ごく一部でしたので
調律の費用の中で錆除去も行いました。
錆が出ると調律が変わったり、不安定になります。
また、錆を除去すると大きく調律が変わります。


一か所のみ、錆が酷い部分がありました。
何故ここだけなのかは分かりません。


錆が酷いリードの対になっている方の裏面も錆が大きく出ています。


リード、リードバルブの調整、錆の除去などを行った後に全体の調律を行いました。
下にあるのは交換を行って取り外した部品です。

コンサーティーナはアコーディオンより調律が大変な部分があります。
バンドネオンはもっと大変です。
なので、音域に対する調律費用がアコーディオンより高くなっています。

小型バンドネオンの修理2023/01/28

ボタンの数が少ない小型バンドネオンの修理、調律を承りました。


一般的なバンドネオンよりボタンの数が少ないです。
外装も緑っぽいグレーのセルロイド張りで、珍しい物と思います。


点検を行うと、調律や雑音などの音の部分以外の不具合も幾つかありました。
ボタンが一つ飛び出ている所があり、押した感触もおかしいです。
原因は不明ですが修理が必要です。


空気レバーの動きが悪く、それにより空気漏れを起こしています。


リードバルブが経年劣化で反りと硬化があります。
雑音と調律ズレの原因になっているので、全て交換が必要です。


リード周りは案外きれいな状態です。
リードバルブを交換して、リードの調整と調律を行えば本来の音が出て来ると思います。


楽器を分解するとボタンやバルブ、リードが載っている土台の板が割れていました。
これは修理が必要です。


ボタンが高くなっている所です。
横から観察しても原因がはっきりしませんが、
ボタンやボタンの下の部分ではなく、アーム自体が高くなっている事が分かりました。


違う角度から見ると、アームが高くなっている事が分かります。
ですが、この角度から覗いても原因が分かりません。


仕方がないので軸を抜いて分解してみました。
すると、ボタンのアームが折れている事が分かりました。
このボタンの位置は上に別のボタンが載っているので
本格的に分解していかないと直せない事が分かりました。
今日はここまで..

小型バンドネオンの修理22023/01/29

小型サイズのバンドネオンの修理を行っています。


1つのボタンが高くなっており、原因がアームの折損という事が分かりましたので
部品を外すために分解しています。
該当ボタンは一番後ろの列で、その上にかぶさるように1,2列目のボタンが付いています。
なので3列目のボタンを外すには上の部分の部品も外して行く必要があります。
修理ボタンは1つですが沢山の部品を外す事になりました。


該当のボタンの部品を外しました。
軸が通る穴のところから折れています。


よく見ると以前にも折れて修理した跡があります。


接着修理を行いました。
以前の接着修理は元の位置になっていません。
アームの位置にズレがあります。


ボタンを戻しました。
左から3番目が修理したところですが、
高さ、位置に問題はありませんでした。


ボタンの修理は完了しましたが、更にボタンの取り外しを進めました。
1,2列のボタンは全て取り外す事に..


ボタンを外した理由は基盤になっている板に割れが見つかったからです。
反対面にはリードが付いているのでボタン側から修理するしかありません。


割れた所を埋めました。
あとは元通りにボタンを戻せば完了です。


空気レバーの動きが悪く、空気バルブからの空気漏れがあります。
レバーの動きが悪い原因は、レバーに繋がっていて
本体を貫通する針金状の部品が曲がっている事でした。


レバーに繋がる部品を外しました。
まっすぐに修正して本体に戻します。


楽器の外装に剥がれなどの問題が多数出ています。


角部分に貼ってある部品にも剥がれがあります。
外観の修理も必要な状態です。