メロディカ2014/10/28

HOHNER の Melodica という、鍵盤ハーモニカの様な楽器の調律を承りました。
当店ではAccordina を取り扱っているので、それに類似した楽器の
修理や調律も行っています。



メロディカは既に新品で作っていませんので、
新しい物はありませんが、この楽器はかなり外観が良いです。
薬のカプセルの様な独特の形をした紙のケースもそのままです。



裏面です。
HOHNER のマークとMADE IN GERMANY の文字があります。



裏蓋は、ぐるりと一周、ネジ留めされています。
古い設計なのでネジはマイナスネジで、外す前は全て同じに見えますが
外すと形が違っています。
こういう設計は時々ありますが、ネジの位置を取り違えないようにする必要があります。



裏蓋はアルミニウム製で、合わせ目にパッキンが入っています。
パッキンは交換時期に来ています。



裏蓋はオリジナルのアコーディナと同じように、二重底になっていました。
吹き込んだ息を最初に裏蓋と二重底の隙間の狭い空間を通し、
冷えた壁面に接触させる事で、呼吸の中の水蒸気を凝縮させ、
リードやバルブの所で水蒸気の凝縮を減らす為の機構です。
低価格な教育楽器にしては凝った作りです。
吹き込んだ息を二重底の上の空間に行かない様にする為の
隔壁の役割をする黒いスポンジ(画像中の黒い物)は交換時期です。



外観は綺麗でしたが、やはり内部はそれなりに傷んでいました。
リードが一枚板に付いていて、板もリードも真鍮製です。
この楽器は独特の音が出ますが、リードの材質によるものと思います。



リードの拡大です。
錆の様な変色があり、表面もザラザラになっています。
この影響で調律に狂いが出ているものと思われます。



表の蓋を取ると鍵盤とバルブが出てきます。
樹脂の簡素な鍵盤ですが、軸が一本に白鍵と黒鍵が交差する向きに付いていますので、
鍵盤を押して傾く向きが白鍵と黒鍵で逆方向になります。
鍵盤が小さい事と、この傾きが逆になっている事で、操作は難しいです。
子供が使う事を想定しているものと思います。



バルブは繊維状の合成樹脂を固めた様な素材で出来ており、このまま使用できそうです。

取り敢えず、点検と見積りをさせていただきましたが、
調律の前に劣化部品の交換とリード周辺の研磨が必要です。


修理見積り2014/10/28

古いアコーディオンの修理をしたいとの事で楽器を送っていただきました。
実際の修理にかかる前に、点検と見積りをします。



楽器は50年程度経過したと思われるEXCELSIOR 911 です。
チャンバーの無いモデルでは最上級のモデルで、お使いの方も多いと思います。
この楽器は古いですが外観はそんなに悪くありません。



最も問題となっている不具合は、ベースの音が出たままという事で、
最初にベースの底板を開けました。
蓋の裏には赤い粉が落ちています。
これは嫌な予感がします..



ベースボタンの付け根のところですが、虫の抜け殻があります。
これは衣類などに穴を空ける虫のものです。
嫌な予感は更に増します。



ベースメカニックに何か挟まっているのを見つけました。



薄い紙みたいな物です。



取り出してみると、それはバルブに貼ってある皮でした。



これは裏面。
バルブ(木)に赤いフェルトが貼ってあり、その上に皮が貼ってある訳ですが、
害虫によりフェルト部分が食われて剥がれたものと思われます。
これは、ベースメカニックを全て取り出して、バルブのフェルトと皮を
全て交換するしかありません。
予感的中..
ベースの底板の裏にあった赤い粉は、食害によるフェルトの残骸や虫のフンです。
古いアコーディオンではよくある事ですが、オークションなどで購入した楽器や、
譲ってもらった古い楽器などは演奏すると蛇腹操作で
虫のフン等が飛散する事もあります。



その他の箇所の点検です。
ベースのベルトは切れていませんが硬くなっていて、手の甲が痛いです。
これは交換時期です。



右手の鍵盤のバルブもフェルトに虫食いの穴が空いています。



バルブの奥の方には幼虫の抜け殻と虫のフン、埃などが堆積しています。



本体と蛇腹の間にある皮製のパッキンも交換時期です。



リードに貼り付けてある薄い皮でできたリードバルブは反りが出ています。



リードバルブを良く見るとカビが付いています。
仮にカビが無くても経年による反りと硬化がありますので交換時期です。
蛇腹の内側や皮の部分にはカビが出ている場合がありますので、
放置してある古い楽器を安易に使うとカビの胞子が飛散します。



ベースのリードを外したところですが、音色切り替えに問題があり、
シャッターが半分開いたところで固着しています。
恐らく、アルミニウムの錆が原因と思います。



ベースリードも皮は反りと硬化とカビが出ています。
この楽器は最低限、ベースバルブの修理、リードバルブの交換、
ベースの音色切り替え機構の修理、調律が必要という事が分かりました。
それ以外にも、できれば修理、交換したい箇所は幾つもあります。

アコーディオンに限らずですが、50年近く経過した物は、
そのまま問題なく使える場合は少ないですし、修理に時間と費用が掛かります。
今回、見積りの段階で修理をしない事になりました。
EXCELSIOR911は現在でも作られている高級機ですので、修理費をかけて
再生する価値はある楽器と思いますが、それなりの金額になりますので、
修理しないという選択もあると思います。

当店では修理の為の点検と見積りは無償で行っております。
(送料はご負担となります)