バンドネオンの修復12021/03/31

先輩の遺品として譲り受けたというバンドネオンの修理依頼を承りました。
楽器の現状は下記の記事にて確認いただけます。


修復を開始する前に改めて楽器の状態を見てみます。
外観としては塗装にヒビがある程度で、損傷などはありません。
修理のバンドネオンにありがちなとても古い物という感じもありません。


右側のボタンの下のスペースですが、ボタン下にあるクッション材が
ウレタンのスポンジの為、経年劣化でボロボロになっています。
一般的には革やフェルトが使われる場所です。


同じく右側のボタンの別の位置ですが、こちらのクッション材も同様です。
劣化した物を取り去った後に新しいクッションと入れ替えます。


蛇腹と操作部(発音部も含む)は分割できるようになっていて
空気が漏れないように革のパッキンが入っています。
革が経年で劣化して空気漏れの原因になっている可能性があるので交換します。


右手のリードです。
亜鉛の板の上に薄い鋼でできたリードが留めてあり、反対面に逆止弁として働く
薄い革製のリードバルブが貼ってあります。
リードバルブは経年劣化で硬化と反りがあるので全数交換します。
見えていないですが裏面にも同じようにリードとリードバルブが付いています。


リードに錆が出ています。
錆は調律を不安定にしたり、発音に問題が出るので全て除去し、
最終的には調律を行います。
今は右側も左側も殆ど音が出ない状況です。


ボタン操作部とリードは一枚の板で仕切られて表裏になっています。
この板は空気の遮断もしていますが亀裂が入っており、
ボタン操作で開閉するバルブの下にまで及んでいます。(矢印部分)
亀裂を埋める修理が必要です。

ざっと、これが楽器の現状です。
今日から少しずつ修復を開始いたします。


まずはボタン下の劣化したスポンジを除去。
ボタンは容易に分解できないので狭くて作業しにくいですが
取り残しがないように綺麗に除去します。


新しく作ったフェルトのクッションを貼り付けました。
これでボタンを押し切った時の当たりが柔らかくなり、雑音もなく、
ボタンの沈み量も適切になります。


右手側のボタン下のクッションの別の部位です。
ここは細い板にスポンジが貼ってあります。
板はネジ留めで外せるので作業がやり易いです。
ボタンのアームが当たっている所がスポンジが崩れ、
アームが当たらない所は表面が残って茶色になっています。


ウレタンのスポンジを剥がしました。
意外にもまだ柔軟性が残っている部分もあります。
板に残った部分も綺麗に除去します。


フェルトに貼り替え元の位置に戻しました。
ボタン下のクッションの交換はこれで終了。(右側は)


次は板にできた亀裂の修理です。
開閉するバルブの下にまで及んでいるのでバルブを外しました。


バルブの革はまだ問題なく使えそうです。


亀裂を埋めて平らに仕上げました。


他にも数箇所、亀裂があるので全て修理します。


右手側の操作部分の修理が完了しました。
今度は左側です。
やはりボタン下のクッションが劣化しています。


左側のリードも右と同様に革製のリードバルブがダメになっています。
これも全数交換です。


リードの錆もかなりあります。
左側は低音域になるのでリードのサイズも大きいです。
その分、除去する錆も多くなり作業が大変そう。


ボタン下のクッションを木の板ごと外しました。
ボタン直下に貼ってある箇所もあります。
右手側のように独立した円盤ではなくてリボン状のスポンジが貼ってあります。


ボタン直下のスポンジを除去しています。
こちらもボタンの分解は困難なのでこのまま作業します。


ボタン下と板の古いスポンジを除去しました。


新しいクッションを貼りつけて作業完了。
これで全てのクッションの交換は完了です。


取り外したスポンジです。
ボロボロでどうしようもないのでこれは捨てました。


蛇腹と発音操作部の間にある革のパッキンを剥がしました。


剥がした面は古い接着剤が残っているので綺麗にヤスリがけして面を整えます。


新しいパッキンに貼り替えました。
これは蛇腹の両面あるので2面行いました。

今日の作業はここまで。
操作部の修理と蛇腹パッキンの交換は今回の場合、一日もあれば終わります。
問題はこの後です。
発音に関わる修復はかなり時間のかかる困難な作業になりそうです。