Maugeinからの中古 ― 2023/06/26
フランスMaugeinから中古の楽器が届きました。
お役様のリクエストにより輸入する事になった楽器です。
届いた楽器ですが、Cavagnoloのボタン式です。
購入したのはMaugeinからですが、中古のCavagnoloです。
話しがちょっとややこしいです。
Maugeinでは自社のサイトで中古楽器の販売もしています。
中古なので、Maugein以外のメーカーの物も少しあります。
恐らく、Maugeinで楽器を購入する時に下取りした物と思います。
今回は、お客様自身がMaugeinのサイトで見つけた物を
当店経由で購入したいとの事で入れる事になりました。
中古楽器を海外から仕入れしたのは初めてですが、
Maugeinの場合、中古楽器はサイトに出ている金額と仕入れ金額は同じ、
という事で、当店経由で販売するとなれば、利益を載せる事になるので
個人輸入よりも高くなってしまいます。
それでも、整備、調律を行い、保証や後のアフターサービスを考えて
当店を選んでいただける事になりました。
信用を買っていただけるという事なので、責任重大です。
Cavagnoloの中型サイズ、MMLのLチャンバーという仕様です。
色は艶消しのブラックという渋い楽器です。
ベースは96ボタンで、フレンチなので3列ベース、3列和音のキノコ型です。
蛇腹は外も中も黒です。
広げてみると埃が付いています。
中古なのである程度は仕方ないですが、あまり清掃されていない感じです。
右手のボタン周りも埃が堆積しています。
ベースボタンも同じように経年の汚れが溜まっています。
Maugeinの中古楽器は整備済みという事ですが、
清掃はあまりされていないようです。
これらの汚れはお渡し前に綺麗にして行きます。
当店で販売する中古なら当たり前の事なのですが..
艶消しブラックのボディーは汚れがあまり分かりませんが、
試しに濡れたティッシュで拭いてみると、この通り。
塗装が劣化して落ちたのかと思いましたが、単に表面の汚れのようです。
グリルカバーを外しました。
埃が沢山堆積しています。
バルブの赤いフェルトからダストが多く出ているようです。
ボタンとバルブの機構には問題ありませんでした。
Cavagnoloのボタン式のバルブはアームとバルブの結合が
関節機構になっていて、常にバルブが平行に当たるようにできています。
一般的な楽器では、ロウで接着してあるか、ゴム系の部品で結合されています。
なので、何等かの原因でアームや本体に歪ができると、
バルブとの平行が崩れて空気漏れが出ます。
関節で自由に平面が出る機構は画期的ですが、
複雑な機構はトラブルの原因になる事もあるので注意が必要です。
右手ボタンの背面のパネルを外しました。
こちらも埃が大量です。
本当に整備済みなのか?と思ってしまいます。
こちらも赤い埃が沢山ありますが、埃が集まった玉ができています。
ボタン背面の下になる部分は凄い状態です。
埃の玉を取り出しました。
古い楽器を整備していると時々、このような物に遭遇します。
この時もCavagnoloのボタン式でした。偶然ですが..
ベルトの金具が当たる位置に金属のガードが付いていました。
本体から浮いていたので剥がしました。
後付けされた物かも知れません。
紙ベースの両面テープが貼ってあり、埃などが入って粘着が落ちたようです。
元々、紙ベースの普通の両面テープは常時固定する目的には向いていません。
古いテープを取り除き、長期間使える強力なテープで貼り直しました。
点検の為、ベース部分を開けました。
開口部に張ってある網に浮きがあるので補修します。
ベースの方も埃が沢山ありましたので清掃しました。
機構自体には何も問題はありませんでした。
ベースのバルブも関節機構で付いています。
ベースストラップは新品になっていました。
maugeinのプリントはご愛嬌。
内部の点検と整備です。
右側のリードを取り出しました。
フレンチタイプはボタンの列でリード列を分けているので
鍵盤式やインターナショナルより列が多くなります。
これが、本体が厚く、縦が短くなる理由です。
リードの隙間がバラついていますので、最適な状態に調整します。
リードは内側にも付いているので、小さいリードで精密な調整が必要な場合、
木枠から一旦取り外して行います。
とても手間が掛かりますが、発音を良くする為には必須の作業です。
調整するリードは2、3個という訳ではありません。
更にこちらも..
整備済み、と一言で書かれる事が多いですが、
こういった地道な作業が必要な作業です。
実際に行っていないと見る事ができないような画像は
ネットであまり見かけませんが..
僅かすがリードに錆がある所があります。
そのような所は調律前に錆を落とします。
ベースリードの方です。
木枠の裏に作成者か調律者のサイン?があります。
2016の文字があるので、2016年製造でしょうか?
ベースリードの木枠を外した本体側の方です。
木枠の穴の跡が残っていますが、本体側の穴とのズレがある列があります。
この感じだと有効面積が3割り程度減っていそうです。
木枠のズレを補正してから調律に入ります。
ベースリードの方も隙間にバラつきがあるので、最適な範囲に揃えます。
リードの調整が全て完了したら、全体の調律を行います。
この時、MMの波の速さをお客様のご希望に合わせて調整します。
調律が完了し、最後に外観の清掃を行います。
ベースの手が当たるところですが、ちょっと拭いただけで真っ黒です。
外観が綺麗になれば作業完了です。
ここまでやると、自分が買い取りした中古を販売する時と変わらない作業ですね..
ここまでの作業と、1年間の修理保証、その後の修理、調律割引きが付きますが、
個人でMaugeinから買うよりは当然、高くなります。
どちらを選ぶかは自由ですが、実際にサイトに出ている価格はフランスでの
税別価格なので、そのまま円に換算した金額で買える訳ではありません。
海外から買う場合、楽器の費用以外に、送料がユーロ建てで必要になります。
ユーロで支払うので、円から交換する際に手数料が入ったレートになります。
日本に着いて、空港では楽器の費用+送料の金額に消費税が加算されます。
業者とのやり取りは外国語で行う必要がありますし、
トラブルは自分で解消しなければなりません。
有名メーカーから購入する場合、大抵の場合保証はありますが
本国まで返送する送料と日本へ戻す送料は自分持ちです。
これは個人だけではなく、日本で輸入業をしている時も同じです。
楽器を輸入するというのは結構大変なのです。
Accordina マイナーチェンジ ― 2023/06/30
フランス Marcel Dreux からアコーディナが届きました。
在庫品として注文していた物です。
金属製の模様切り抜き外装、横向きのマウスピース、白黒ボタンという、
Marcel Dreuxの最も標準的なモデルです。
これは表面が艶消しの仕様ですが、ピカピカに磨いた物もできます。
その他、外側が木でできた物や、金属でも穴の空いていない物など
多数のモデルがあります。
今回届いた楽器は今までと少し違う部分があります。
まずは外観ですが、ボタンの下の部分の造形が以前と違います。
以前はボタン式アコーディオンのような階段状でしたが、
新しい物は高さの違う筒状になっています。
少し有機的なデザインになった感じがします。
私は以前の方が好みですが、実際に殆ど見えない部分なので
特に問題はないでしょう。
操作感などは何も変わりません。
一番変わった部分はこれです。
以前はリードの固定は溶けたロウで接着していました。
鍵盤式のアコーディオンと同じような方法です。
新しい物はネジで留めてあります。
紫色のアルマイト処理された軽量なネジでガッチリ留まっています。
リードの根本部分だけ隙間を埋める為でしょうか、
特殊な接着剤のような物でシールされています。
リードがネジ留めの構造は、一番最初に考案されたアコーディナ(Borel)と
同じ方法です。
フレンチタイプのボタン式アコーディオンもロウを使わずに
釘やネジでリードを固定してあり、独特の音を作っていますが、
今回の固定方法の変更で音質が少し変わったかも知れません。
私にはハッキリと感知できませんが、2種類を交互に比較したら
分かるかも知れません。
もう一つ、外観の変更があります。
楽器裏側の樹脂製パネルにMarcel Dreuxのm.dマークが付きました。
以上が変更点です。
ご来店いただければ実際の楽器を見たり、試す事ができます。
コンサーティーナの調律 ― 2023/06/30
コンサーティーナの調律を承りました。
30ボタンの一般的な仕様のコンサーティーナです。
見た目がかなり古そうですが、きちんとした物のようです。
右手側を開けましたが、内部はとても綺麗で外観とかなり違う印象です。
リードは、いわゆるアコーディオンリードです。
ダイアトニックアコーディオンに使われる物と思いますが、
古いコンサーティーナに付いている、対になっていなくて、
リードの金属片がネジで固定されているような専用品と区別して、
アコーディオンリードと呼んでいるようです。
(コンサーティーナ界の事は詳しくありませんので..)
きちんと調整した場合、リードの反応の良さは
アコーディオンリードの方が良いので、私はこちらの方が良いと思いますが、
やっぱりコンサーティーナの方は専用品が良い物という判断でしょうか?
リードバルブは多少の反りがありますが、大きな問題はありません。
リードの隙間は調整が不十分なので、発音が悪い箇所があります。
全て修正してから調律を行います。
内側のリードですが、リードバルブの端が本体の枠から出ていて
挟まっています。
リードを外すとリードバルブの端が潰れていました。
その事は問題ではありませんが、挟まっている部分があると
開く部分が減るので発音に影響します。
位置を調整してリードを固定し直します。
ボタンの操作で開閉するバルブに隙間があります。
空気漏れの原因になっていますので、バルブの位置を修正します。
左手側を開けました。
こちらもリードバルブの反りは少なく、良い状態です。
右手側と同様にリードの調整を行います。
リードの内側面になる方はリードバルブの反りが多いです。
恐らく、保管時の姿勢で下面になる為でしょう。
反りは全て修正します。
リードを外すと表裏でリードバルブの反り具合が違っている事が分かります。
こちら側も、本体に挟まっているリードバルブが幾つかあります。
斜めになってリードに接触している物もあります。
全て修正します。
コンサーティーナはダイアトニック方式なので、蛇腹の開閉の向きで音程が変わります。
なので、1対のリードの表裏では音程の違うリードが付いています。
音程が違うのでリードの長さが違ってきますが、一部のリードバルブは
表裏で同じ長さの物が付いていました。
リードの長さより極端に長い場合、発音に影響しますので適切な長さにカットします。
リード周辺の修理、調整を全て終えたら全体の調律を行います。
で、調律完了しました。
書いたら一瞬ですが..
革製のストラップが傷んでいるので新しい物を作成しました。
ストラップを交換して、全ての作業が完了しました。
後は楽器をお返しするだけです。
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