クラシックカー集合2008/04/19

Vercelliへ来て一週間が過ぎ、最初の休日です。とても天気が良い日でした。特に用事も無いので市街地へ散歩に行きました。もう地図は無くてもある程度の範囲は動けます。市内中心で割りと大きい広場へ行くと、なにやら車が沢山駐車してあります。よく見ると、クラシックカーばかりです。セルモーターが無くて、フロントグリルの穴にクランクを付けて手動で始動するような古い物から、1970年代の物までありました。殆どがイタリア車で、アルファロメオ、フィアット、フェラーリ、ランチアなどがあり、中には知らないメーカーもありました。その他、ベンツ、BMW、ポルシェ、ジャガーがありましたが、不思議とフランス車はありませんでした。そういう集まりなのかも知れません。大体、50台くらいの車がありました。
こういう車の集まりがあると、一種独特のやや近寄りがたい雰囲気があったり、持ち主が妙な格好をしていたり、エンジンをかけて煩かったりする場合があるのですが、何故かここはゆったりとした空間になっていました。車自体は特殊なのですが、妙に生活感があったりします。車内に犬が寝ていたり、新聞が広げてあったり、散らかっていたり。訪れる人も車のマニアというより、偶々広場へ来た住民という感じの人が殆どで、大人も子供も普通に車を見たり、写真を撮ったりしていて、ほのぼのとした雰囲気があります。イタリア人は車好きが多いと聞きますが、小さな町の広場でこんな風に集まりがあるという事は、各地でこういうイベントはよくある事なのでしょう。普通、これだけの車が集まればもっと派手なイベントになりそうなのですが..

さて、今日は夜に小さな小さなアコーディオンのお祭りがあると、Cooperfisaの社長さんのエミリアーナが誘ってくれました。夕方に車で出かける事になっています。楽しみだなぁ..

Festa delle Fisarmoniche 12008/04/19

土曜の夕方になりました。今日は、(エミリアーナ曰く)小さな小さなアコーディオンのお祭りがあるとの事で、18時頃にロメオが自分のアウディで迎えに来てくれました。Cooperfisaまで行って、そこで車をフォードのミニバンに乗り換え、私とエミリアーナ、ロメオ、パオロの4人と、アコーディオンを積んで出発です。

行く場所は、スイス国境近くとの事で、車で1時間半くらいのところとか。折角、スイス方面へ向かうのに、昼間あれだけ晴れていたのに曇ってきました。これでは雪山が綺麗に見えそうにありません。ロメオの運転で、私は助手席、Vercelliから出て暫く走り高速道路に入りました。曇っていましたが白い山が段々と近づいて来るのがわかります。

途中のインターで降りて、そこで先日のTVショーで会ったアコ奏者のクリスティアーノを乗せて5人となりました。暫く行くと右手に綺麗な湖が見えてきました。マッジョーレ湖です。道路からかなり低い位置に時々見えますが、とても美しい光景です。どことなく、中央道を走っていて途中で諏訪湖が見える風景とダブりますが..でも、建物が古くから残っている物ばかりで統一感があるので本当に綺麗でした。これは、いつか行って見たいところです。

道路が段々と細くなり、山間を走るようになってから暫くいくと検問所のようなところがあり、更に進むとITALIAの文字に赤い斜線が引いてある標識が現れ、国境とわかりました。その標識の直前で車は止まり、路肩へ駐車。険しい山肌の谷間に水流の激しい川が流れていて、それと平行する道路の反対に山小屋の様なところがあります。どうやらここが会場らしいです。ちなみにここの地名は、Paglino。国境を越えるとSempioneという峠があります。写真は、車から降りてレストランへ入っていくクリスティアーノ、パオロ、エミリアーナ、ロメオの後姿。普段はまだ明るい時間(19時半頃)ですが、曇っているので暗くなりかけています。

店内に入ると、バーカウンターがあり、奥にテーブル席があります。既に中には人が沢山いて、カウンターで飲んでいる人、多数。年齢層はかなり高めです。恐らく50~70歳の人が殆ど。30歳前後の人も少しいます。男女比は、少し男が多い程度でしょうか。私達が入ると、知っている人が多いのか、多くの人が挨拶して行きます。私は言葉も通じないし、あまりの人の多さに呆然としていましたが、エミリアーナが何人かの人に、説明してくれた時は自己紹介しました。カウンターのところで待っていてと言われ、いきなり一人になりましたが、周りのおじさん達がワインを注文してくれて、いきなりアルコールの洗礼を受けました。出てきたワインは小さなグラスに注がれた綺麗な透明感のある深い赤色をしたバローロというワイン。1杯、1ユーロ、カウンターで立ち飲みです。後で分かったのですが、これはピエモンテ産の高級ワインだとか。量が少ないのでまだいいですが、空きっ腹に効きます.. 電子辞書片手に、単語レベルでの会話を楽しみました。

Festa delle Fisarmoniche 22008/04/19

下の続きです。
ワインをいただきながら、陽気なオジサン達と立ち話ししているとエミリアーナが戻ってきて、奥のテーブル席へ案内してくれて着席しました。カウンターの方にいた人達もテーブル席の方へ集まりだして、そろそろ会が始まるようです。人数は100人くらいでしょうか。

私達Cooperfisa一行は、部屋の一番端の席に陣取りました。私の隣にはこの会の主催者らしい人が来ました。年齢は70歳以上だと思いますが、黒いスーツに蝶ネクタイ、ツバ付きの黒い防止でバッチリきまっています。長いテーブルの残りには男女合わせて6人くらいのグループが来ました。それで、なにやらこちらを見て話しています。多分、この会に東洋人が来る事は滅多に無いと思うので、目だっているようです。でも何か様子が変で、どうやら私の事を中国人だと思っているようです。このところの中国チベット問題で、ヨーロッパでも中国人を悪く思う人がいるようです。エミリアーナが立ち上がって、私の事を説明してくれましたので日本人と分かってくれました。
Vercelliにいても、観光地では無いので日本人が来る事はないらしく、見た目で中国人と思われている印象があります。通り過ぎる車から、チネーゼ!(中国人!)と、大声で言われた事もありますから。今のところ、その程度しか影響はありませんが、常にそういう風に見られているという不安があります。これ以上、中国チベット問題が悪化しない事を祈るばかりです。

話がそれましたが..
各人が着席し、特に司会、進行も無く、始まりの合図も無く、なんとなく始まったのかなぁ..という感じで会がスタートしました。暫くすると、パンと水とワインが運ばれてきました。続いて、最初の料理が出てきました。生ハム、サラミの盛り合わせ。これが滅茶苦茶うまい!思わずパンと一緒に食べたくなりますが、パンは控えめにしておかないと、この後に沢山料理が出てくるのは目に見えていますので。写真は最初のハム盛り合わせです。これで1人分。

料理とワインが出てくると、どこからともなく演奏が始まりました。演奏している曲は、イタリアのフォークソングという事らしいです。大体が、3拍子で長調の曲です。アコの音色は強力なミュゼットチューンです。曲調はミュゼットの様にも聴こえますが、短調は無く、常に長調で基本的にダンスとセットになっている感じです。曲が変わっても似たような感じであまり区別がつきません。殆どがそういう感じの曲ですが、偶にクラシックとかも混ざります。

料理が、どんどん出てきて、ワイン(赤)も飲み放題です。
ちなみにイタリアの料理は、最初にアンティパストと呼ばれる前菜が出て、次にプリモピアットと呼ばれる最初の料理が出ます。これは大抵パスタ類です。更にセコンドピアットと呼ばれるメインディッシュが出て、最後はドルチェという事になります。この日は、前菜がハム盛り合わせの次に、牛タンに刻んだバジルとオリーブオイルがかかった物が出て、プリモはチーズのペンネ、セコンドは牛肉のソテーにフライドポテトの付け合せ、ドルチェは多種類のベリー類のケーキでした。どれも本当に美味しかった。満腹です。最後にコーヒーが出ましたが、更に食後酒のレモンチェッロやグラッパも希望者には配っていました。もちろん私はワインですっかり真っ赤になっているので飲みません。私は酔っていなくても酒類を少し飲んだら赤くなる性質なので、むやみに酒を勧められなくて重宝しています。イタリア人にはそういうタイプはあまり見ません。皆さん酒が強い。私は赤くなっているので、自分で顔を指差して、ロッソ?ロッソ?というと、結構ウケていました。普段、つまらないオヤジギャグとかやっていますがイタリアでは通用しないので、こういうウケ方しかできません。でも、やっぱり笑ってもらえるのは嬉しい。この技?は、先日Castelfidardoでビクトリアの社長とランチをした時にもやってウケていました。
私がかなり酔っていると思って、ロメオがグラッパを持ってやってきました。飲んでみて、と言うのでちょっと飲みましたがとても飲めた物ではありません。50度くらいのアルコール濃度ですから。

Festa delle Fisarmoniche 32008/04/19

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アルコールも入ってきて、お祭りも段々と盛り上がってきます。アコーディオンは最初、1、2人で弾いていましたが、段々と合奏になってきて最後には10人以上の人が常に演奏している状態です。そして、ヨーロッパでは音楽に付き物のダンスをする人がいたり、時には全員で大合唱したりと、そんな感じです。
どうやら、小さな小さなアコーディオンのお祭りというのは、日本で言うところのアコーディオンのパーティーという事みたいです。参加者を募って、場所を借りて、料理とお酒と演奏を楽しむ会という事なので。年齢層が高めで、演奏する人以外にも聴くのが好きな人も来るという点で、私が入会した10年以上前の中部アコーディオンクラブのパーティーに似ています。最近は、若い人も増え、どちらかと言うと奏者が多くなってきていますが。その他の共通点としては、圧倒的に鍵盤式が多いという事です。フランスのシャルトルのアコーディオンフェスティバルでは、9割以上がボタンでしたが、イタリアでは日本と変わらない位の比率です。ここは、すぐ先がスイスで、フランスやドイツも近い距離ですが、鍵盤式が多いです。私はヨーロッパはボタンが主流と思っていたので、この認識は改めなければなりません。
楽器の事を言うと、鍵盤式が多いという点で日本に近いですが、色は黒が少ないです。白や赤が多い気がします。音もミュゼットが多く、チャンバー付は少ないです。殆どの楽器が120ベースです。但し、これはこのパーティーの特色かも知れないので、なんとも言えないところです。Vercelliが近いからでしょうか、Cooperfisaが主催した会でもありませんが、8割のアコはCooperfisaでした。北イタリアではメジャーなブランドの様です。

この手のパーティーで日本と大きく違うと思ったのは、演奏曲や演奏方法です。日本では、ミュゼット、クラシック、ポピュラー、ジャズ、演歌..色々混ざるし、大抵1人づつ順番に弾いていくか、グループ単位で演奏します。しかし、少なくともこのパーティーでは、みんなで同じ曲を弾きます。最後までそういう風でした。途中、1人で弾く場合がありましたが、少数です。誰かが曲の最初を弾くと、みんなが混ざっていくといった感じです。譜面を見る人は1人もいませんでした。曲目も似た感じの物が多いです。私が知っている曲は非常に少なかったです。ダンスが混ざったり、大合唱するのも特色です。日本で生まれたカラオケが、日本では1人ずつ歌うのに対し、海外ではみんなで歌う事が多いというのに似ているのかも知れません。

Festa delle Fisarmoniche 42008/04/19

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会の途中で、隣に座った、この会の主催者と思われる人と少し話をしました。冒頭でも書きましたが、年齢は70歳以上と思いますが、服装も含め、シャンとしています。この方が、この会の案内のチラシをくれました。そこには、Raduno Fisarmonicisti(アコーディオン弾きの集い)とタイトルが書いてあり、括弧書きで、Festa delle Fisarmoniche(アコーディオンのお祭り)とサブタイトルが付けられていました。他には、日時、場所が書いてあり、参加費が書いてありました。

面白いのが、参加費のシステムです。参加費のところには二つの値段が書いてあります。片方は15ユーロで、もう片方が22ユーロ。安い方はアコーディオン弾き、高い方はその他一般です。驚いた事に楽器持参で演奏する人は優遇されているのです。それにしても、あの料理で22ユーロだとしてもかなりお得です。日本円にして3500円くらい。観光地でもないVercelliで普通にプリモ、セコンドだけ食べて、水と1/4リットルのワインとコーヒーで大体、18ユーロはしますから。更に、記念品も貰えます。この日は、アコのイラストと2008と書かれたバンダナでした。
日本でアコパーティーをやると、頑張っても4000円以上で、時間制限2時間で、料理も立食であまり美味しくありません。大抵、飲み放題をつけて5、6千円かかってしまいます。
ちなみに、私は支払いを申し出ましたが、エミリアーナにゲストだから必要ありませんと断られました。ロメオと行動していても、度々こういう場面になります。日本に来た時は恩返しせねばなりません。

この男性に、会の頻度を聞いてみました。すると、1年に一回との事でした。それは盛り上がる筈です。年に一回のイベントですから。この会では、特に曲のジャンルとか、限定した趣旨の会という募集はしていないので、やはり、こういうスタイルがアコパーティーの標準なのでしょうか。

この男性(名前を聞きそびれてしまいました)は、演奏はしませんでしたが、自慢の楽器を見せてくれました。しかも、構えて写真に撮れと勧めてくれました。その後、貰った会の募集のチラシの裏にペンで楽器の説明を書いてくれました。
メーカーは、Ditta Clemente Serra で、1900~1905年に存在したイタリアのメーカーだそうです。そして、この見せてくれたアコーディオンは、1906年に、この会場のスイス方面へ行ってすぐのSempioneトンネルの開通式で演奏された物との事です。100年前だから、この紳士が演奏した訳では無いと思いますが。

今夜は、アコーディオンのお祭りをたっぷりと堪能しました。そういえば、書き忘れましたが、日本のアコパーティーとの相違点でもう一つ。時間です。夜8時に始まり終わったのはなんと12時!私達は、ささっと帰りましたが、あれはダラダラともっと長くやっていたに違いありません。と言うわけで、Vercelliへ着いたのは1時半。また深夜の真っ暗なセミナリオへ戻る事になりました..