古い楽器の再生102010/04/09

中古楽器の再生作業をご紹介する記事も最終回になりました。
狙った訳ではありませんが丁度10回ですね..
機能的な部分の修理、調整と調律は既に終了しましたので、
後は、見栄えを整えるだけです。


右手のグリルカバー上の「SP」という文字の一部が浮いています。
文字の浮きを修正し、カバー全体の変形を修正しました。
この楽器は、細かい穴の空いた金属蒸着フィルムがグリルに貼ってあります。
見た目も綺麗なのでこのままにしましたが、布系の材料の場合は、
変色している事が殆どなので、新品に張り替えます。


スイッチの清掃です。白い部品は綺麗にすると変化も大きいので、
磨き甲斐があります。スイッチの隙間部分も丁寧に清掃。
ちなみに、鍵盤は分解した時に既に磨いてあります。


スイッチの状態を示す表示は、窪んだ部分に塗料が入れてあります。
黒いスイッチには白い塗料が入れてありますが、
清掃しても真っ白にならなかったので、白い塗料を入れなおしました。
イタリアで自分の楽器を作った時、新品のスイッチを研磨して、
自分で窪みを付けて、塗料を入れ込んだのを思い出します..
http://accordion.asablo.jp/blog/2008/05/19/3573521


ボディーも磨きます。特に、文字が貼ってある部分は汚れが貯まっているので、
念入りに行います。ベーススイッチのクロームメッキパーツも磨くとピカピカです。
ベースボタン周りの白い板は、ベースを分解した時に外したので、その時に
綺麗に磨いておきました。


殆どのアコーディオンがそうであるように、この楽器は木のボディーにセルロイドが
貼ってあり、表面を形成しています。このセルロイドの色を変えれば、色々なカラー
のアコーディオンができる訳です。
セルロイドは強燃性がある為、近年は使用される場所が減り、製造会社も減って、
入手が難しくなっていると思いますが、アコーディオンでは依然として使われて
います。理由は、加工がしやすく、耐久性に優れ、綺麗な艶がありながら手触りは
しっとりと過剰にツルツル滑る感じが無く、傷に強く傷ついても補修が容易、
元は透明樹脂なので染料で色々な色を付けたり混ぜ物で独特な模様を
作る事ができる..などなど、多くの良い点を持っているからです。
同じ理由で、高級な万年筆の軸素材として今でも使われていますね。


この中古楽器も30年は経過していると思いますが、表面は磨けば綺麗な艶が
蘇ります。持ち出して演奏できるアコーディオンは、表面に傷を付けやすい楽器
ですが、そんな時にも塗装の様に薄い膜ではありませんので、傷が消えるまで
研磨してやれば傷を取る事ができます。セルロイド板厚より深い傷でも、溶けた
セルロイドを入れ込んで研磨すれば修復できます。
最近は塗装したタイプのアコーディオンもありますが、自動車の外装と同じで、
ちょっとした傷でも修復は大変です。コインで引っ掻き傷を付けられた車の板金は
その傷よりもかなりの広い面積を塗装し直します。車はボディーカラーと同じ
塗装色が分類されていますので、まだいいですが、様々な色のアコーディオンは
大変です。最近、流行?の、木目を活かしたクリア塗装の楽器は更に大変です。
という訳で、暫くはセルロイドのアコーディオンが主流を続けると思いますが、
強燃性と入手の問題から、いづれは代替材料になるのかも知れません。
アコーディオンを持ったまま、タバコに火をつけるような事は絶対止めましょう。
もとより、タバコの煙も楽器にはよくありませんが..


そんな訳で、中古楽器の再生は完了しました!
閉店少し前に、お客様が引き取りに来られ、無事に旅立って行きました。
消耗部品は新品に替えていますので、古い楽器ですが新品と同じ位、
長持ちしてくれると思います。


10回に渡り、中古楽器の再生をご紹介して来ましたが、当店でお売りする
中古楽器は、きちんと楽器として使用でき、その後の耐久性も考えた再生作業を
行った上で販売しています。もちろん、楽器の古さや程度により、その作業内容は
異なりますが、30年以上経過した楽器は大体、今回ご紹介した内容の修復を
行います。これだけの時間と手間をかけますので、他店での中古楽器より高いかも
知れません。しかし、例えば、半値だったとしても、空気漏れがあったり、鍵盤が
カタカタ鳴ったり、数年でどこかが悪くなる様な中古楽器であれば、失う物は
大きいと思います。大金だからこそ、価値のある物へ投資しなければ無駄になって
しまいます。オークションや委託販売の中古とは全く違う、きちんと再生された
楽器をお売りする事を今後もしていくつもりです。専門店で売られる整備済み
中古と言えども、その整備内容はよく確認する必要がありますし、売る側も
きちんと伝えるべきでしょう。

とても効率が悪い商売ですが、お金が欲しいなら前の職を続けていましたし、
この道で生きて行くと決めたからには中途半端にするつもりはありません。
きちんと再生された古き良き時代の楽器をお探しの方は是非ご相談ください。
現在、お持ちの古い楽器を再生するというご要望にもお応えできます。
但し、時間は沢山いただきます!

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