新素材の行方2012/06/18

20年以上は経過していると思われる、国産のアコーディオンの修理依頼が来ました。
そのブランドは、現在も極少数のアコーディオンを売っているようですが
恐らく中国生産でしょう。


鍵盤のストロークが非常に深くなっています。
鍵盤を離した際の音も大きいです。


鍵盤が深くなっている原因ですが、鍵盤の動きに伴って開閉する
バルブに使われているスポンジの経年劣化でした。
通常、ここには羊毛でできたフェルトと皮で出来ていますが、
この楽器はスポンジと皮です。
最初は5~8mm程度の厚さのスポンジだったと思いますが、
今は存在が分からない程、潰れてしまっています。
実は、一つ手前の鍵盤の写真の鍵盤下にも潰れたスポンジが写っています。
鍵盤のストッパーと緩衝材を兼ねていますが、潰れて役に立っていません。

上の写真にはもう一つ問題が出ています。
バルブと鍵盤を繋いでいる白いゴムの部品がありますが、これも劣化しています。
ゴムの穴が広がって通っているアルミニウム周囲に隙間ができています。


楽器の中にも同様の問題が出ています。
通常、天然皮や薄い樹脂フィルムで出来ているリードバルブが発泡ゴムで出来ています。
これも経年劣化で反りと硬化が出ています。

鍵盤部分は修理費が高額になるのでリードバルブの交換と調律を行う事になりました。
この楽器は今までも何回か修理していますが、大抵、スポンジ部分はフェルトで
リードバルブは天然皮でした。
当時の新素材を使ってみた、というところでしょうか。
合成した素材は製造時には、均一な部品が作成できて品質が安定しますが、
新しく登場した素材は経年のデータが無いので後で思わぬ事になる場合もあります。

天然の皮や羊毛のフェルトでも経年劣化がありますので、結局、
年月が経過した楽器は大掛かりなメンテナンスが必要になるという事です。
当店では古い中古楽器の劣化部品は交換して販売していますので、
状態は最良ですし、後で無用な出費が必要になる事はありません。