TVドラマ撮影2015/05/04

AM5:38 地下鉄 金山駅です..
5月連休真っ只中ですが、何故、こんな早朝に地下鉄を待っているかというと、
今から栄(4駅目)にあるNHK名古屋放送局へ向かうためです。
NHKへ向かう理由は、名古屋放送局制作のドラマにエキストラとして
出演する事になったからです。
ドラマのタイトルは「鬼と呼ばれた男 松永安左ェ門」という名前で、
9月19日に放送予定です。
http://www.nhk.or.jp/dsp/keisei/yasuzaemon/



1週間程前に店に電話があり、軍隊の楽隊でアコーディオンを演奏する役の
エキストラに出演してくれる人はいませんか?という問合せでした。
出演の条件は、男性、20~50代、中肉中背、短髪、アコーディオンが弾ける、
撮影の日時に来られる、というものです。
この条件に合う人は少なく、あまり思い当たらなかったのですが、
イメージがピッタリの人が一人、すぐに思い浮かんだので、電話してみると
5月4日は仕事という事で、次に思い当たる人に連絡して
とりあえずの許可を頂きました。

NHKの担当の方が容姿を見たいとの事で、店まで来てくれることになりました。
そのやり取りの電話の暫く後にいきなり、担当者の方が来店してビックリ。
電話での約束は明日だったので。
偶々、住んでいる所が monte accordionのすぐ近くという事でした。

パソコンの中にあった候補者の写真を見せて担当者の方も良いと思って貰えましたが、
その人は今、広島にいて連休で地元(三重県)に帰っているという事を伝えると、
できれば近くの人が良いんですが..という事で、結局、私が出る事になりました。
偶然ですが昨日、床屋に行って少し短く切られ過ぎたので短髪でした。
男、20~50代、一応アコ弾ける..という事で。
ですが鍵盤式はあまり弾いていませんし、用意された曲を数日の後に
撮影で弾くのは厳しいかも?と思ったのですが他に該当者も無く..
ちなみに、私も名古屋に住んでいないので至近距離ではありませんし..
という訳で、昨晩は朝6時にNHKへ行く為、店に泊まりました。



AM9:00 金山のコメダでモーニング。
名古屋では昔から朝、コーヒーを頼むと色々付いてきます。
私は更にオプションで小倉を付けます。



こんな風にトーストにタップリ塗って食べるのが名古屋流。
それで、何で9時にモーニングかと言うと..
まさかの撮影中止!
雨の為、ロケ地での撮影を断念し、明日に延期になりました。
できれば近くの人が良い、というのはこの事か..と分かりました。

NHK到着の6時から9時までの3時間、濃厚でした。
到着して案内されたスタジオに入ると既に沢山の人(役者?エキストラ?)が居て、
黙々と着替え、メイクをしていました。
初めての空気感でかなり緊張。
子役の人も沢山いて、大きな声できちんと挨拶していてなんだか業界馴れしているし、
自分だけが素人みたいな感じで逃げたくなりました。
入り口で渡された役名の札を見せて衣装を受け取り、スタジオの中央で生着替え。
つい立ても壁もありません。(女性は専用部屋あり)

着替えが終わると今度は「汚し」というメイクを自分でやってくださいという、
また、全く未経験の状況でしたが、見よう見まねで茶色の液体を顔や手に
塗って薄く延ばしてそれらしく汚しました。
因みに、最初に聞いた役は軍隊の楽隊でしたが、その後、
話が変わって(というか、きちんと伝わってきて)、闇市で演奏する傷痍軍人でした。
傷痍という事で黒いサングラスをかけるらしく、顔も映らないという事ですね。
確かに最初からそこまで伝えたらやる人居ないかも..

そして、着替え、メイクが終わって小道具さんから手渡された楽器が大変な状態でした。
楽器は事前にメールで外観を確認していましたが、超空気漏れ状態で、
蛇腹を動かすと鍵盤を押していなくても簡単に音が出て、
蛇腹もスッカスカに楽々動く状態。
とっさに、ヤバイ! これで撮影(演奏)はムリと思いました。
撮影用の楽器ではベースの音が足りないので、音取り用に72ベースの楽器を
持参して行きましたが、時代的にそれを撮影には使えません。
結局、後で音を入れるので現場では格好だけで行きましょう、という事に。

そして、後はロケバスに乗って出発するのみ、というところで、
屋外での撮影は雨天中止で明日に延期となりました、という事に。
殆どのエキストラの方はスタジオでの撮影もあるらしく、
私は再び私服に着替え、メイクをふき取り、一人帰還となりました..
折角なので、持参した楽器は置いて代わりに小道具の方を借りて、
少し直して音が出るようにする事の許可を頂き、
持って帰る事にしました。(実機で練習できるし♪)
小道具アコを風呂敷に包んでもらってタクシーも呼んで貰えました。

店に戻るとまだ8時台なので慌てて金山のサウナへ行って
9時まで500円で入れる朝風呂コースに行って、
拭き残った汚しメイクをしっかり落とし、
9時にコメダで朝食..という3時間でした。
それでもまだ9時なので店の開店まで1時間あります。
起きたのが4時半なのと、開店までに色々あり過ぎて時間感覚が変です。

ここまで長文にお付き合いしてくださった方、誠にありがとうございます。
続きは次に分けます。



これが、お借りしてきた小道具のアコーディオンです。


小道具の修理2015/05/04

NHK名古屋放送局製作のドラマにエキストラ出演する事になり、
収録日に雨が降って中止となって、monte accordionに戻ってきてからの続きです。



空気漏れが非常に酷い状態で、勝手に音が出ていますので、
撮影で演奏するのは不可能な状態です。
雨天で撮影中止になり、一日猶予ができたのでお借りしてきました。

楽器はトンボ楽器の物で、25鍵盤、MM、14ベースの物です。
ドラマの場面は戦後の闇市という事なので、丁度70年前という事になります。
この楽器の年代は分かりませんが見た目から判断して、
時代としては適合している様に思います。



「BLUME」という名前でしょうか?
調べてみるとドイツ語で花という意味のようです。
14個あるベースボタンは上の7列がベース単音で、
下の7列は和音になっています。
音域はB♭、F、C、G、D、A、E となっていて、
面白いのは、AだけAmになっており、他はメジャーの和音になっています。
平行調で短調が弾けるようになっている訳です。
ですが、この音域では移調しても渡された曲は右手しか弾けない事が分かったので
音を後で取る為に別のアコーディオンをNHKに持参しました。
それでも撮影中に音がある方が雰囲気は出るので可能なら
現場で音が欲しいところです。
という訳で、何とか演奏ができる状態まで直す事にしました。



右手の鍵盤は高さがバラバラです。
全ての鍵盤は押しても元に戻りますが音が出たままの箇所があります。



真鍮にメッキを施された重いグリルカバーを開けると、
張ってある網は剥がれていてこの通りです。



金属製のバルブが並んでいました。
バルブ材はフェルトは無くて皮のみです。
皮は古くなってペッタンコですが取り敢えずの役目は果たしていそうです。
アームが華奢な為、バルブの位置がずれていて空気漏れしている事が分かりました。
本当は皮も交換時期ですが、応急処置なのでバルブの位置と、
鍵盤高さの修正を行いました。
これで問題なければ多少音が悪くても応急処置は完了し
このまま明日の撮影に使うところですが、
音が出せるようになると別の悪いところが見えてきます。



出ない音が幾つかある事、調律が激しくずれている箇所がある事、
雑音でまともな音が出ないところ多数、という症状があり、リードを点検しました。
古いので予想はしていましたが、リードバルブは激しく反っています。



リードは真鍮製で、リードプレートはアルミニウムではなくて
バンドネオンと同じ亜鉛です。
きちんと直したら良い音が出そうな仕様ですね。
リードバルブの反りは大体無視できますが、大変厄介なことに、
リードを固定しているロウがどうしようもなくダメになっていました。
釘があるのでかろうじて留まっていますが、
暫く鳴らしたらリードが落ちてしまいそうです。
まともな音が出ないのはリードの固定が甘く、プレート自身が振動しているからです。
ロウが全くダメなので空気も無駄に消耗します。



ベース側のケース内にリードを留めているロウが剥がれた物が集まって落ちています。
この状態で使用すればリードに剥がれたロウが挟まり音が出なくなるでしょうし、
バルブに詰まれば音が出たままになります。
やはり持ち帰ってきて正解でした。



ベース側のロウも同じ状態です。
よく見ると、元々あったロウの上に別のロウで補修してある感じです。
ですが、補修したロウは品質が悪く、剥がれて簡単に取れる状態です。
以前にロウの問題は認識されていたという事ですね。
さすがに半世紀以上経つ楽器なのでそれなりに傷んでいます。



劣化したロウと劣化した皮のリードバルブがケース内に落ちています。



手前は補修したロウが残っているリードで、
奥はオリジナルのロウ留めリードです。
このままでは調律以前に音自体が濁っていて使い物になりません。



蛇腹のパッキンの皮も交換時期ですが、これは現状維持ですね..



ベースの底板に型番がありました。



ベースメカニックの部屋は意外と綺麗です。
埃も大して入っていませんし、ボタンの動作も問題ありません。
四角いバルブがベース音で、三角のバルブは和音用です。



一見、問題無さそうなベース側ですが、よく見るとバルブが少し
開いていて、空気漏れが起きています。



ベースメカニックのケースに名前の印がありました。
「長南」とありますが、恐らく検査印でしょう。



リードの蝋はオリジナルのロウの上から新しい物で補修しました。
リードバルブは交換せずに形を整え、どうしようもない物は交換しました。
調律は激しいズレのみ調整し、多少のズレは修正しませんでした。
実際、その方がリアリティがあると思いますので。



鍵盤高さは調整して弾きやすくしました。



応急的とは言え、補修を行うと空気漏れは何とか演奏可能レベルまで戻りました。
ですが、悪いところが直ると別の悪いところが見えてきます。
蛇腹の数箇所から、激しく空気が漏れているのが気になります。
蛇腹の折り目の薄い部分ですが、5ミリ以上の穴があるので、さすがに無視できません。
空気漏れが本当に激しい箇所だけ補修しました。
これで、なんとか演奏できそうです。
頼まれた訳ではないので無償修理ですが、まあ、ちょっとギャラが出るらしいし、
貴重な体験もできるので、良しという事で..



最後にもうひとつ、
アコーディオンが入っていたオリジナルのハードケースの修理。
二つある蝶番の軸が片方無くなっていて危険な状態です。
不意にケースが開いて落としてダメになると悲しいので、これは修理しました。



交換の為、外したリードバルブです。
結局、ここまでの修理で夕方になってしまいました。
使えるようになった楽器で撮影で使用する曲の練習をしました。
馴れない古い小さな楽器なので。



21:27 金山駅の居酒屋にて食事。
明日も6時にNHKなので今日も店に泊まります。
今日は一日が長い....