2台お預かり2015/01/09

古いアコーディオン2台の修理を承りました。



まずはこちら、日本ではあまり見ないブランドの楽器で、
40年程度以前の物でしょうか。
不具合はベースボタンが戻らず、という事でご覧の通りです。



ベースボタンの不具合は蓋を開けただけで分解せずに分かりました。
ボタンを押した時にバルブを持ち上げる為に動く金属部品ですが、
バルブの金属部品の下にある筈の物が上に出てしまっています。
メカニックの一番底なので難しいですが分解せずに直せました。
という訳で、指摘箇所はすぐに直りました。



折角なので全体の点検を行いました。
楽器の内部はこの通り..
蛇腹の内側にカビが出ていて、逆カルピス模様です。
1922年頃は青に白玉だったらしいですが..



もう少し寄るとこんな感じです。
ゴッホの「夜のカフェテラス」という絵を思い出しました。
見ようによっては綺麗ですが、この状態で演奏すると
楽器からカビの胞子が出てきて体に悪いので除去します。
古いアコーディオンをお使いの方や専門店以外で購入した
古い楽器は要注意です。
「全ての音が出ます」と書いてあっても、「中にカビがあります」、
とは書いていないと思いますので。



ベースボタンだけではなく、鍵盤にも問題がある事が分かりました。
黒鍵が戻りにくい箇所があります。
他の白鍵も摩擦が大きくて動きが悪い箇所が幾つかあります。
演奏上、問題があるレベルなので修理が必要です。



もう一台の方ですが、こちらはかなりのビンテージ。
やはり日本ではあまり見ないブランドです。
50年以上の物と思います。



鍵盤はガタガタです。



グリルカバーを外すと大きな埃玉が..
グリルに付いているアルミニウムの網が落ちてしまっています。



鍵盤の高さが大きく変化している一因はバルブでした。
このバルブには一般的によく使われている羊毛フェルトではなく、
合成スポンジが使われています。
当初は柔らかい物だったと思いますが、
今はスカスカの固くて脆い状態です。
これはバルブ材の交換と鍵盤の高さ調整が必要です。



内部は古い楽器定番のリードバルブの反りと硬化が見られます。
全て交換した後に調律が必要です。



蛇腹と本体の合わせ目の皮パッキンも交換時期です。



ベースリードの方には皮のリードバルブが剥がれて落ちています。
リードバルブの接着が弱くなっているのでしょう。
どのみち全て交換するので影響はありませんが..



リードバルブが短い?様な箇所がありました。



リードの木枠を外すとリードバルブが下敷きになっていました。
何かの時に木枠を外し、取り付ける際に対向しているリードの
リードバルブを引っ掛けて気付かずに取り付けてしまったのでしょう。
むやみにリードを外すのは避けるべきです。
修理のつもりが新しい不具合を作ってしまうかも知れません。
外す必要がありそうな時は専門店に持ち込みましょう。
簡単な修理であれば時間も費用も少なく済みます。



リードの下にある皮のパッキンが大きくズレていました。
理由は不明ですが、要修理です。



リードが大きくズレている箇所もありました。
自然にはならない範囲ですが、人為的にする筈もありませんので、
やはり木枠の取り外しなどの時に気付かずに曲げてしまったのでしょう。



ベースの蓋にある脚部分ですが、陥没しています。
恐らく強い衝撃を受けたのでしょう。



陥没箇所の内部です。
蓋を受け止める部分が壊れています。
一部べーすボタンと干渉しています。



ベースボタンのあまり使っていなさそうな箇所は埃と
クモの巣で酷い事になっています。
やはり年代物ですね..



これもよくありますが、ベースボタンが曲がっているところ多数です。
脚部の陥没などから見て、かなり手荒に扱われた楽器と思います。



ベースの手が通るバンド部分ですが、ヒビが入って硬化しているので
要交換です。
という訳で、この2台はお預かりの修理となりました。
黒い方はかなり時間が掛かりそうです。