バンドネオンの調律2 ― 2015/08/09
少し前にバンドネオンの調律を承り、このブログにも書きました。
あれから少しづつ作業を行っています。

右手のリードやボタンが載っている板です。
割れがあり、セロハンテープや接着剤で補修されています。
手前に見えるグレーのパテ状のところが補修されている所です。
その向こう側にあるネジですが、リードの木枠を固定する重要なネジです。
よく見ると、ネジが緩んでいて板とネジの頭に隙間があります。
勝手にこれほど緩むとは考えにくいので締め忘れでしょうか?

セロハンテープで補修されている割れの部分です。

テープを剥がしてみました。
案外綺麗に剥がれたので良かったです。
テープは古くなると始末が悪い時が多いので困ります。

もう一箇所、布ガムテープで補修されている所です。
バルブの真下を通っているのでバルブを取り外しました。
これで補修箇所がよく分かります。

テープを取り去ると大きなヒビ割れが出てきました。
これらのヒビ割れはきちんとした方法で修復します。

リードを取り外すと、また新たな発見がありました。
リード側から見たバルブの穴ですが、白く不透明で反射の無い所は
天然革の物です。(写真の一番左)
この写真の右4つは白いですが透明感があり少し反射があります。

よく見るとこんな感じです。
一番右の革の物と明らかに違います。

バルブを外してみました。
一番上の物が問題の箇所です。
ここに貼られていたのは発泡ポリエチレンの薄いシートでした。
茶碗とかコップを買うと巻かれてくる梱包材料ですね。
その下のバルブは元々の天然革ですがバルブの調整が悪く
空気漏れが起きているので黒く汚れています。
一番下の白い物が正常な状態です。
フロッピーディスクの磁気フィルムや発泡ポリエチレン、
セロハンテープや布ガムテープ..
色々な代替品で補修されています。

右手側のリードバルブを全て交換しました。
この後、左手側の整備を行います。
調律自体は一番最後の仕上げ作業になります。
前段階での調整で調律作業の効率が大きく変わるので手を抜けません。
咲いた! ― 2015/08/15
先日、頂いた観葉植物が4年経って新たな変化があった事を書きました。

蕾のようなものを発見してから1週間、花らしきものが咲きました。

正面から見るとこんな感じです。
やはり放射状に伸びた槍の様なものは蕾でした。
しかし..これ、未だに植物の名前が分かっていません。

8月に入りかなり暑いですがミニバラもまだ健闘中です。
一時はハダニにかなりやられましたが持ち直しました。

頂いたバジルも超元気です。

開業した年に購入した観葉植物もまだ元気です。
最初に比べるとだいぶ育ちました。
昨年、植え替えをしてからは更に育って横に広がって来たので
ちょっと困ってきました。
ロウ劣化 ― 2015/08/17
オークションで購入したという有名メーカーの
ボタン式アコーディオンの調律を承りました。
見た目は綺麗で凄く古い物でもないようです。

ご依頼は全体の調律です。
音が出ない箇所が1つあるとの事でしたが、簡単な修理で直ると思いました。
中を開けるとリードが一つ外れていました。
これだけであれば簡単に済みます。
リードバルブも反りが無くて良好ですし、リードの錆もありません。

リードをよくみると木枠にリードを接着しているロウの部分を
補修した箇所がありました。
過去にもリード外れがあったのか?
何かの修理で外したのか??

全体の何箇所かでリードを外して再接着した痕が見られます。

よく点検するとリードを留めているロウの劣化があり、
リードの取り付けが悪い箇所がある事が分かりました。
ロウ部分の見た目は悪くないのですが、実際にリードに圧力をかけると
僅かに動く箇所が多数あります。
これは全てのロウ接着をやり直す必要があります。
リードの固定が悪いと雑音と大幅な調律ズレが起こり、楽器として使えませんので。
アコーディオンの高額修理費としては、リード全体にある錆、バルブからの空気漏れ、
ロウ接着の劣化、蛇腹本体の劣化などがあります。
錆以外はいずれも古くなれば起きる症状です。
ロウ、フェルト、皮革でできている部分は永久に使える物ではありません。
これらは、中古で販売されている楽器でも交換されていないのが普通です。
両鍵盤2の修復 ― 2015/08/19
珍しい左手側も鍵盤になった古いアコーディオンの修理を承りました。
過去にも1台行い、同じ型の2台目です。

右手側のリードバルブを全て交換しました。
リードバルブは薄い皮(革)の短冊状の部品で、
古くなると反りや硬化により交換が必要となります。
同じく皮革でできた蛇腹と本体の合わせ目のパッキンも
交換するため、綺麗に剥がしました。

剥がした古い皮です。
この楽器は41鍵盤でMMMLと、4セットのリードがあるので数が多いです。
アコーディオンでは蛇腹の押し引きで空気の流れの方向が変わる為、
リードも表裏で1対になっています。
リードバルブも1対なので音域の数の倍あります。

右手側のリードの修復が終わったので、本体側の修復を行ないます。

リードを取り外した状態の右側本体です。
鍵盤を押すとバルブが開いて空気が通る場所に穴が空いています。
四角の穴はスイッチ操作で開閉する機構が付いていて、
この楽器の場合、MMMとMMMLの切り替えを交互に行ないます。

鍵盤裏側にある音色の切り替え機構です。
スイッチは右手の手の平で押すパームスイッチタイプです。
押す度に交互にMMMとMMMLが切り替わりますが、動作が不安定なため
近年のアコーディオンでは交互切り替えにはなっていません。

スイッチは手のひらで押しますが戻りが悪くなっています。
スイッチのメカニック部分が埃と油で汚れているのが一因です。
分解清掃が必要です。

スイッチ部分を分解しました。
裏返してみるとスイッチに貼られたセルロイドが剥がれて浮いている箇所があります。
この部分が本体と干渉して戻りが悪くなっている事が分かりました。

鍵盤下の清掃とフェルト貼り替えの為に軸を抜いて鍵盤を分解します。
分解中に軸の頭が抜けてしまいました。
軸の頭の部分には別のパーツで球体が付いていますが、ロウ付けが取れました。
これも修理が必要ですが、古い楽器は何が起きるか分からない怖さがあります。

鍵盤を取り去ると埃の塊が出てきます。

鍵盤を押した際のストッパーになるフェルト部分ですが、
劣化(虫食い?)により薄くなっています。

新しいフェルトに交換しました。
赤が鮮やかです。

鍵盤裏面のスイッチは分解清掃と、機構の不具合を直して元に戻しました。
見えない部分ですが綺麗になりました。

鍵盤の動きに伴い開閉するバルブです。
当たり面にスウェード皮が貼ってあります。
穴の痕が残っていますが今回は交換せずに戻します。

鍵盤の分解清掃、スイッチの分解清掃を終えて、部品も元に戻しました。
鍵盤下のフェルトが新しくなり、隙間から見える赤が鮮やかです。
鍵盤とスイッチの動作は軽くなり、鍵盤の高さのバラツキも直しました。
右手側の修復はこれで完了です。
ブログで書くだけだと簡単だな..

右手鍵盤側が終われば左手です。
この楽器は左手側も鍵盤ですね..
両鍵盤2の修復2 ― 2015/08/22
左手側も鍵盤になっているアコーディオンの修復を行なっています。
前回は右手側の修復を記事にしました。

さて、修復作業の続きですが..
これはアコーディオンですが、右手側ではありません。
通常、ベースボタンが並んでいる所が鍵盤になっています。
よく見ると右下には空気ボタンがあり、
その下には左手を通すストラップが見えます。

左手の鍵盤部分はキートップが剥がれかけています。
また、高さのバラツキや上下方向に無駄な遊びがありますので、
鍵盤を外して修理と調整を行なう必要があります。
鍵盤の手前にある部分のセルロイドが剥がれて浮いていて
一部が破損していますのでこれも修理します。

左手を通すバンドを外して裏をめくったところです。
内側に貼ってあるフェルトは少し虫食いになっています。
内側にも小さなストラップが付いている左手鍵盤用の特殊形状ですので
これはこのまま使います。
取り付けている金具の裏面は銅合金なので錆びて緑色になっています。

鍵盤手前の部品を外しました。
浮いたセルロイドを貼り付け、破損した箇所は範囲が狭いので、
今回は塗装で修復します。

ベースメカニックです。
通常のアコーディオンとは全然違います。
今回はバルブを交換しないので調整のみです。

鍵盤を全部外しました。
ひとつずつ組付けながら調整をしていきます。
剥がれたキートップも修理します。

という訳で、左手鍵盤部の修復完了です。
高さも揃って、深さや上方向の遊びも調整しました。
鍵盤手前の円弧状の部分も綺麗になりました。

左手の操作部が直ったので今度は中身です。
この楽器の左手側には本体直付けのリードがあります。
リードの裏側のリードバルブを交換するためには本体から剥がすしかありません。
手前の二つを剥がしてみましたが、やはり内側のリードバルブも反りがあり、
古くなり硬化しています。
粉状の埃も堆積しているのでリードは全て剥がして修復する必要があります。

直付けのリードを剥がしました。
接着の為のロウは古くなって脆くなっています。

古いロウを取り去って清掃しました。
リードの内側の木枠の所に、裏側から貫通しているネジの先が
出ている箇所があります。
内側の部品を留めている物と思います。
リードやリードバルブと干渉する可能性があるので取り去ります。
こうして修復しながら元々ある問題も取り除いて行きます。

左手のリードも全て修復しました。
今回はロウ接着の補強のみで交換はしませんでした。
ロウが弱ってきているのでいずれ全て剥がして交換する必要が出ると思います。
古い楽器は常にこの問題があります。
一旦リードを剥がしてロウ留めを新しく行なえば30年は問題なく使えるでしょう。

これで左手側も修復を完了しました。
あとは調律ですね。
今回は、右側、左側の修復を一つの記事にまとめていますが、
ここまでにかなりの時間を使っています。
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