バンドネオンの修復 完了2021/05/18

バンドネオンの修復を行っています。
前回の記事では右手側の調律が完了したところまでです。

そしてやっと、左手側の調律も完了し、仕上げの作業も完了しました。
下記リンクは、この楽器をお預かりした時の記事です。


左手側の調律を完了しました。
右手側よりも幾分楽にできますが、蓋の開閉やネジ締めでピッチがずれるのは
右手側と同様です。


機能と発音に関する修復が完了したので仕上げの作業に入ります。
主に外観に関する作業です。
上の画像は左手側のカバー側面に空いた円弧状の穴ですが、
網がめくれていますので修理します。


カバー部分をはずしました。
バンドネオンの左手側には開口部の上に木製のカバーが付いており、
アコーディオンで言うところのチャンバーのような役目をしています。
殆ど覆われていますが一部、開口していてその部分にある網がめくれています。
黄色の矢印のところです。


網を張り直しカバーを元に戻しました。
新品の網に張り直すこともできますが、この楽器は楽器自体に意味があるので
機能上問題がない部分はオリジナルを残します。


空気バルブを操作するレバーが掛かる部分ですが、
革のパーツが劣化しているので交換する事にしました。


これは同じ部分の内側ですが、こちらには空気漏れを止める革のパーツが付いています。
こちらの革は綺麗ですが穴が広がって空気が漏れているので併せて交換します。


古い革の部品を外しました。


新しく革パーツを作りました。


作製した革パーツを元通りに取り付けました。(黄色矢印のところ)
画像は内側から見たところです。
空気レバーが繋がるワイヤーの先には紐が付けてあり、滑車で90度向きを変え、
大きな空気バルブの先に繋がっています。
空気バルブもメンテナンスのために外そうと思いましたが、ネジ留めだけではなく
接着してあるので分解するのは諦めました。(赤矢印部分)
機能的に問題があれば分解しますが、接着を取ればバルブ革も張替えになりますので。


バルブは外さずにバルブ面の清掃を行う事にしました。
これは清掃前の画像です。
バックスキンのバルブ材が貼ってありますが、中央のバルブとして
機能していない部分には飾りの赤い紙が貼ってあります。
埃とカビのようなものが付いているので清掃しました。


空気バルブを表から見たところです。
バルブの開口部からは内側に貼ってある飾り紙が見えるようになっています。
この部分を清掃したので外から見える部分が綺麗になりました。


本体表面は塗装仕上げですが、塗装にヒビが入っています。
研磨は止めて表面を拭き掃除する事にしました。
ちょっと拭いてみると茶色い汚れが多量に付きます。
これはタバコが原因でしょうか?
全面、水拭きする事にしました。
何度か拭くと艶がでてきました。
塗装剥がれてくる兆候はありませんし、ヒビも均一に細かく入っているので
これはこれで味わいのある模様に見えてきました。


手を通すストラップもそれなりに劣化していますが、使える範囲なので
今回は敢えて残すことにしました。


革ストラップも洗浄すると綺麗になります。


本体の角の部分には金属製のモールが付いています。
茶色に変色(赤矢印)しているので磨くことにしました。
磨くと綺麗な金属光沢が出ます。(黄色矢印)


ストラップの台座部分の金属カバーも艶がなくなっています。


磨けば鏡のようになります。
ネジの錆も落としました。


外観の整備も完了し、これで全ての修復が終わりました。
とても時間が掛かりましたが良い経験になりました。


取り外した革の部品です。
後は持ち主にお返しするのみです。
長い期間、使われる時を待っていた楽器と思います。
故人の遺志を継いで長く使われて行くことでしょう。