製造時の問題2021/08/01

フランスのメーカーの木目仕上げの楽器の調律を承りました。
イタリアのCastagnariと良く似た製品を扱っていて、
大半はダイアトニック、一部クロマチック(鍵盤、ボタン)という
製品をリリースしています。
本体表面の仕上げも塗装やセルロイドではなく、
木目仕上げという点もCastagnariと似ています。


Castagnariよりも少し安い価格帯ですが価格の違いは
木材の違いにも現れています。
楽器を分割するとボディーの断面が見えますが、層状になっているので
合板である事が分かります。
同じ木目の楽器でも無垢材を用いた物は断面が層になっていません。
そういう楽器は価格も高くなります。
楽器としての音への影響などは検証していないので分かりません。

以前にCastagnariのボディー断面を紹介している記事です。


このメーカーの楽器は当店で取り扱いがあり以前に新品を販売しています。
また、今までに何件か修理、調律をしたことがあります。
その時の経験から元の状態があまり良くない楽器という認識があり、
覚悟していましたが、やはりという感じでした。

上の画像は右手のリードですがリードを木枠に固定するロウ留めが
きちんとできていない箇所があります。
何かの理由でリードを一旦外してその後、元の場所に戻し、
ロウを溶融して接着するのを忘れたという感じでしょうか?
リードに指紋跡があり、錆が出始めています。
これはハンドリングに問題があるということです。
リードは絶対に素手で触れてはいけません。


このリードもロウ留めに少し問題がありますが、一番の問題は
リードに貼ってある薄い革製の部品、リードバルブの厚さです。
中央の物は右側の物と比べて倍くらいの厚さがありますが
通常、こういう場合は使わずに捨てます。
ここまで厚いと発音に問題が出ますので交換します。


同じくリードバルブの問題ですが矢印の箇所は接着不十分で浮いています。
このような状態だと音に問題が出るので修正します。


こちらもリードバルブ異常。
小さいリードには革ではなく樹脂製のリードバルブが使われますが、
矢印部分が湾曲しています。
これも発音に問題が出ますので交換。


もう一つ、樹脂製リードバルブの問題。
矢印部分が凹んで全体に反りが出ています。
工具か何かで突いてしまったのでしょうか?
これも交換。


リードの木枠の空気が通る部分ですが、
接着剤がはみ出て開口部の面積が減っています。
接着剤を取り除いて開口面積を確保します。


これはベースリードの長いリードですが、リードバルブの上に貼ってある
金属製の細い部品がきつい角度で曲げてあります。
全てこうなっているのでこのように作製する方針かと思いますが、
ここまでやると発音に影響が出ます。
少なくとも私はイタリアでこのようには習っていません。
全て調整し直します。


木枠の内側、リードの裏面にも同じ様にリードバルブがあり、
金属部品が表側と同様に曲げてあります。
これも全て修正しますが内側は一旦外さないとできないので大変。


これも木枠の内側のリードですが、リードバルブが斜めに貼ってあり
先端が隣のリードに触れています。
これも外して直します。
元より金属部品の修正で一旦外すので手間は同じですが。

リードバルブ関係の不具合が多いですが、
これを見て自分で修正しようと思わないでください。
リードに関わる部分を変化させると調律が変わるので
後の調律が必須になります。
当店でもこのような修理は必ず、後の調律前提で行っています。


リードの錆を発見しました。
幸い、錆は殆どのリードには出ていません。
購入から10年、メンテナンスしていなかったという事ですので、
これは経年によるものでしょう。

リードの錆以外は全て製造時からある不具合と判断できます。
ここに全ては書いていないですが、
リードの調整など他にも沢山の修正、修理をしています。
中国製ほどではありませんがいい勝負?という感じです。
下記は以前に書いた中国製の整備の記事です。

このメーカーのように多数の細かい不具合がある場合もありますが
どんな楽器でも結構な数の製造時のエラーが必ずあります。
イタリアの有名メーカーでもフランスの楽器でもドイツの楽器でも
100万円以上の楽器でも必ず問題があります。
当店では全ての楽器を丹念に検査して必要な修理を行い、
全てのリードに対して調律を行ってからお渡ししています。
別な言い方をすると、どんなメーカーの物でも最良の状態にして
お渡しするという方針です。
勿論、多数の部品からできている複雑構造の楽器ですので
見落としや後に出てくる不具合もありますが、
都度、対応させていただいています。

新品で購入した楽器も一度、点検をしてみると良いです。
調律に出すと初期の不具合も見つかって
良い状態に持って行くことができますのでお勧めです。

日本製アコーディオンの修理42021/08/02

40年以上前に製造された日本製アコーディオンの修理を行っています。


右手側のリードです。
経年で反りと硬化が出た薄い革製の部品、リードバルブを全て交換しました。
リードバルブの交換以外にも、リードの錆除去やクリーニング、リードの調整も
併せて行っています。


こちらは楽器を受け取った時の状態です。
この状態だと音に雑音が混ざったり調律にズレが生じます。
40年経過した部品は修正しても問題が残るので交換するしかありません。


ベース側のリードです。
こちらもリードバルブを全て交換しました。
音の切り替えスイッチの機構が固着していましたが修理をしました。
これで本来の音を取り戻す事ができます。


ベースリードの修理前の状態です。
リードバルブも上に貼ってある細い樹脂部品も激しく反っています。
音の切り替えスイッチは固着して動かなくなっていました。


蛇腹と本体の合わせ目に入っているパッキンシールです。
交換したので厚さがあります。


元々付いていた革製のパッキンシールです。
経年で潰れていますので空気漏れの原因になります。

楽器の物としての修理は完了しましたので、後は調律を行えば完了です。

生きていた2021/08/04

2009年の開業当初から店先に2つの鉢植えがあります。
西日が当たる環境なので長持ちせず、何度も色々なものを植え替えてきました。


今年は何となく何もしないで放置していたら元々、脇役として植えていた
フィカス プミラが大増殖してモリモリになっています。
普段は何か花が付くものをメインに植えています。
2019年に植えたハイビスカスは大輪を咲かせていました。

2019年から2020年の冬は暖冬で何もしなくて越冬できました。
ですが、コナジラミが発生してあまり良い状態ではありませんでした。

2020年から今年の冬は厳しい寒さで枯れてしまいました。
枝だけになったのですが、もしかして生きているかも?と思い抜かずに
先の方を切り落として様子を見ていましたが、7月になっても枯れたまま変化なしで、
抜いて何かに植え替えなければと思っているうちに8月になってしまいました。


で、今日何となくプミラでモリモリの鉢植えに水をあげていたら
プミラの葉に混ざって違う葉がある事に気づきました。


なんと、枯れていたと思った枝に緑の葉が沢山付いています!
抜かないで良かったですが、さすがに今年は花までは無理そうです。
来年まで越冬できれば来年は花が見られるかもしれません。
植物の生命力に驚かされました。

接種完了2021/08/05

Covid-19のワクチン接種ですが、本日2回目が完了しました。
会場は昨年、クルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」の新型コロナ感染者を受け入れて
有名になった、あの藤田医科大学岡崎医療センターです。


接種後の待機中です。
会場は開業1年の眩しいほど白くてピカピカの広いところです。
1回目の副反応は接種部分の痛みが少しあっただけでした。
2回目はどうでしょうか..
これで感染リスクが大幅に減りますし、重症化もしにくくなります。
感染しにくいという事なので他人への感染リスクも減ります。
絶対の安全はありませんが、かなりの安心感があります。

できたばかりの未知のワクチンを体内に入れるのは怖いと言って
ワクチンを拒否する方もいると聞きます。
気持ちは理解できますが、発生したばかりの未知のウイルスに
感染する方がずっと恐怖に感じます。
日本での癌の原因の20%は感染症によるものという事です。
Covid-19の感染が後に肺がんに繋がるという事もあるかも知れません。
後の影響は未知と言っても人が作ったワクチンなのである意味既知の物質です。
自然発生(?)した未知ウイルスの感染リスクをワクチンで減らす方がいいと思います。

修理しない日本製2021/08/06

古い日本製アコーディオンが持ち込まれました。
現在、丁度、同じ年代、同じメーカーの物を修理しています。


右手側のリードです。
同じ年代の同じメーカーだけあって状態は同じです。
リードバルブとリードバルブの上にある樹脂部品に反りが出ています。
この状態ではきちんとした音は出ません。


ベースリードの方ですがこちらも同様です。


ベースリードの方に楽器の製造年月日がありました。
昭和45年7月11日なので51年前の楽器です。
今、お預かりしている楽器も同じ位の年代で修理を継続中です。
この楽器は見積りを行いましたが修理はしないことになりました。
その違いは何でしょう?
まず、この楽器はオークションで購入した物です。
修理中の楽器は身内の方が購入して持っていた物です。
楽器自体に何の思い入れもない場合、費用をかけて修理はしないでしょう。

もう一つ、決定的な違いがあります。
修理中の楽器は34鍵盤、MML、80ベースですが、
この楽器は30鍵盤、MM、18ベースです。
ベースが18ではできる事が少な過ぎて修理費用をかける意味がありません。

この楽器の音は全くダメな状態ですが全ての鍵盤で音が出ます。
なのでオークションでは動作確認済み、という事になります。
50年も前のアコーディオンは楽器として使うなら必ず整備が必要で、
その為の費用は新品の中国製が購入できる程です。
整備済みなど書いてある場合もありますが、オークションで売り払う楽器に
費用をかけて整備などする筈がありません。

たとえ安くても使えない物に費用をかけるのはお金を捨てるようなものです。
アコーディオンをやってみようと思う方は、中古、新品共にきちんと整備された
状態の楽器を購入するのはどうしても必要なことになります。